芥川賞を読む#1「コンビニ人間」村田沙耶香
序盤から吸引力がすごく、途中でやめることができず、
約二百枚を一気読みしてしまったのは久々。
芥川賞受賞作を読みながら声を出して何度も笑ってしまったのはおそらく初めて。
読み終えた瞬間「これ、すげぇ!」と心の中で叫んでいた。
幼い頃から周囲とうまくかみ合わず生きづらさを感じていた主人公の女性が、「コンビニ」で働き始めることによって初めて世界に溶け込んだ実感を覚える。
女性がどんどん「コンビニ」という箱に心酔していく描写のあたりまでは、
やがて、女性が「コンビ二」という閉じた世界から脱却して、真に世界に羽ばたいていく再生物語なのだろうと思っていたが、物語はあたくしの浅はかな予想を裏切って大きく湾曲してあさっての方にいってしまう。
中盤から、「え、まじ、まじ?」と息を飲む展開となり、
怒涛のクライマックスまで本を置くことができなかった。
純文学がこんなに面白くていいのか?
と思いながら気づけば最終ページだった。
「コンビニ」という道具を使って「普通」になじめない人の苦悩とあがきを描き切った力量に、滾ってしまいました。
会話部分があたくしの感覚では少しぎこちないかなと思う箇所もありましたが(意図的かもしれないが)
そんなものは吹き飛ばすくらいのテンションが横溢している。
飾り気のない平易な文体も好感が持てました。
純文学が苦手な人にもおすすめです。
映画化してくれないものか。(大九明子監督あたりで)
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