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ytv未成年感想⑥ 7話考察・感想

※注意
ytv未成年1話〜10話&アフターストーリー時点までのネタバレと、勝手な個人解釈を含みます。(原作未読)

前回↓


<7話あらすじ>

蛭川(上村謙信)は真島(堀家一希)が引き起こした万引き事件の罪をかぶり、停学処分となってしまう。水無瀬(本島純政)は蛭川の潔白を教師に訴えるが、全く取り合ってもらえず、蛭川からの連絡も途絶えてしまう。

一方、蛭川は停学処分を聞きつけた父・正彦(オクイシュージ)からの罵詈雑言と暴力に耐えながらも、初めて反抗する姿勢を見せ、タイミングを見計らって家を抜け出していた。

その日の夜、塾から帰る途中で、いつもの公園に入っていく蛭川の姿を見つけた水無瀬は、ようやく会えた蛭川から「また学校に戻るつもり」だと聞いてほっと胸を撫でおろし、再び自分の家で映画を観る約束を交わす。

しかし夜中にかかってきた蛭川からの電話で水無瀬は衝撃の事実を聞き―――。

出典:ytv未成年公式HP


〜7話感想〜

 幸せだった6話前半から一転。不穏が立ち込める7話へ。もうこれ以上不幸になりようないやろ、って話だがまだまだ彼らには試練が待ち構えている。主演2人の演技がかな〜り光った7話。


・冤罪により音信不通になる蛭川

蛭川(上村謙信)は真島(堀家一希)が引き起こした万引き事件の罪をかぶり、停学処分となってしまう。水無瀬(本島純政)は蛭川の潔白を教師に訴えるが、全く取り合ってもらえず、蛭川からの連絡も途絶えてしまう。

※あらすじより引用

 進学校の中で起こった停学処分に生徒達はウキウキワクワク。非日常感を味わいながら、「親の顔が見てみたいってやつw」と絶妙に嫌なラインを突いてくる笑い声。

 意を決して教師に冤罪を証明しようとするものの、もみ消しされてしまう。せめて柴や根本に弁明しようとしても、理由を言えるわけもない。蛭川はDVを受けているだなんて口にしたら、母親の家庭を守ろうとしている蛭川を裏切ってしまう。(6話が蛭川母家への家庭訪問だったことにより、蛭川母親の解像度が上がっている事が、より水無瀬を苦しめる)
結局、水無瀬は口を閉ざしてしまう。

「俺らがどうこうできることじゃないよ、大人が決めたことなんだから」
 ytv未成年における大人が、抗えるものではないことを明言される。柴と根本の発言って、本当重要なことばっかりだ。そのうち焼きそばパンにも何か意味がつけられてくるんでは……(※あれはアドリブらしいので、おそらく意味はない)

 蛭川の影を求めて"出会い"の場である水道へ。「水無瀬には理解できない蛭川の行動を理解したい」→「蛭川の心と同化したい」という欲望により、2人をつなぐための水を浴びる。
 これは知っているぞ……CMBYNのラストシーンで、エリオが電話口でオリヴァーのことを「エリオ」と呼ぶのと同じ行動だ……。失った片割れと無理やりに同化しようとしているやつ
(すぐCMBYNで例えたくなる人)

↑これはオリヴァーでありエリオ

 蛭川との同化に加えて、無意識的に
「傍観者」状態になってしまっている自分の不甲斐なさを洗い流す水無瀬。
※蛭川が水をかぶるのは親父に似ている自分を洗い流しているというのは、モノローグでしか語られておらず、水無瀬は理由を知らない。皮肉にも、こんなところで行動が同化している。

 放心状態で自宅に帰る水無瀬。インターフォンに駆け寄る。けれども、現れたのは会いたくない母親。ド田舎住みなので都会のセキュリティマンションの解像度が低いんだけど、もしかして母親鍵は持ってない感じですか……? そんなの家じゃなくて、檻じゃん……。子供のことペットだと思ってる?

 そんな母親がお土産に渡してくるのはハーブティー。これは多分母の好みなんだろうな。案の定、食に対してあまり関心のない水無瀬は、パッケージを訝しげに見つめて、興味なさげにテーブルに置く。お土産っていうのは、相手のことを思って買うものだと、4話で水無瀬自身が表している。

 留学話の打診。面倒になった水無瀬は「そうかもね」と明るい声色で返す。(これが"適当に合わせて"に対する"慣れてる"なんだな……)

・大人への反抗

一方、蛭川は停学処分を聞きつけた父・正彦(オクイシュージ)からの罵詈雑言と暴力に耐えながらも、初めて反抗する姿勢を見せ、タイミングを見計らって家を抜け出していた。

※あらすじより引用

 病的なまでに生活感のない水無瀬家から一転、ごちゃごちゃした蛭川家にシーン移動。ダイソーで売ってる、マグネットの小物ケースがある家は大体ものが多くて生活感がある家だよね。(偏見)
年季の入った冷蔵庫は淡いグリーン色をしており、粗暴な父親や蛭川は選びそうにない。こんなところに見え隠れする母親の影。

 元は母親が与えてくれて、つい最近水無瀬と分け与えたという幸せが上乗せされたアイスバーを食べる蛭川。倒れた家族写真を直し、水無瀬からのメッセージを何度も見返す。でも返信はできない。蛭川なりに、「まとも」になろうとしている最中だから。過去の幸せを引き延ばし、引き延ばし、薄めながら味わっているようで辛い。

 そんな中、父親が帰宅。手に入れた幸せ(アイス)は、大人の手により一瞬にして取り上げられてしまう。

 父が帰宅時にお酒を飲んでないってことは、多分この人最初は蛭川と対話する気があったんだろうな、と思う。自分の感情優先して、腹立たしさを蛭川にぶつけたかっただけなら(対話する気無かったら)家に入る前に酒を口にしてるはずだから。
 大人として叱って諌めたかったけれど、蛭川に「なに」と反論され、本当は気が弱くて臆病な故に、酒で気を大きくして怒鳴り暴れる。
「教師はクソだよな。わかんなかったら、殴ってわからせれば良いんだよな(俺はそうした)」
って。
 ケンカしかしてこなかったから、子どもを導いてやる方法がわからない。対話はおそらく蛭川母に任せきりだったからこそ、手段がわからず、
「お前の居場所なんてどこにもねえんだからな」
「母親にも捨てられたくせに(これは4話)」
とか言ってしまう。(お父さんそれ全部自分に返ってるんだよ)

・反抗への代償

その日の夜、塾から帰る途中で、いつもの公園に入っていく蛭川の姿を見つけた水無瀬は、ようやく会えた蛭川から「また学校に戻るつもり」だと聞いてほっと胸を撫でおろし、再び自分の家で映画を観る約束を交わす。

※あらすじより引用

「俺はあんたと同じ生き方はしない」
俺が俺じゃなかったらこんな事にならずに済んだのか……? と、また自分のことを自分で殺す蛭川。
 そして家を抜け出し、街を放浪する蛭川。大人に逆らった代償なのか、父親の言う「お前の居場所なんかどこにもないんだからな」を表すように、粗末なサンダルで街を歩いても、ふらりと映画館に寄っても、誰も気づいてはくれない。「居場所を求めている」のに、「どこにも居場所がない」ような蛭川。不安そうに、いつもの公園にフラフラと向かう。

 
 ……そんな蛭川の後ろ姿を見ただけで、蛭川に気がつく水無瀬。(嘘でしょ!キセキは待ってたんだ……)



……ではなく、まさしくSAVIOR。

まさしく、君が僕の救いだよ。である。
(感想書き始めてからずっとこれが貼りたかった)

 どこにも居場所がないと、街の亡霊のように居場所を求めて彷徨っていた蛭川にとって、
「人違いだったらどうするの」
「間違えないよ」
と言って、掴んでくれる水無瀬の存在はどれほど嬉しかっただろう。

「俺はお前と一緒に卒業したい。お前とまた映画が見たい」
「いいよ」
噛み締める蛭川。また学校で、と別れる際にも、本当は離れがたいことが、手の接触からよくわかる。このシーンにおける、本島純政のちょっとぎこちない演技も、水無瀬の心情の揺れとマッチしていて良い。

・蛭川父の訃報

しかし夜中にかかってきた蛭川からの電話で水無瀬は衝撃の事実を聞き―――。

※あらすじより引用

 蛭川からの連絡を受け、走る水無瀬。ここは3話の構図とのセルフオマージュ。水無瀬宅へ向かう暖色のライトに照らされた、幸せ溢れる3話の蛭川のシーンと対比するように、最低限の光に囲まれて、陰鬱とした未来へと進んでゆく水無瀬。(余談だが9話でもまた、この走る人と光の構図で撮られている)

 消防署(救急車)に電話するのではなく、水無瀬に電話をするというのが高校生らしい。救急車の連絡するのって怖いよな、気が動転してたらなおさらだ。頼れる相手に頼ってしまうのは自然。

 上村謙信と本島純政による熱演。本島純政演じる水無瀬は、常に大人びた表情をしているものの、シーンにより本当に年相応の高校生に見えることがある。蛭川を抱きしめながら「お前のせいじゃない」と訴えかけるシーンはまさにそうだった。どうすれば良いかわからない、でも悪いのは絶対にお前じゃない。本気でそう思っていることが伝わる。

 一方、上村謙信。
「俺はどうせ父親の子だからさ」
という蛭川の声が、父親役のオクイシュージの声に聞こえてくるのが不思議だ。似たくないと思えば思うほど意識する。演技の共鳴ってこういうことなんだろうか。

 それにしても、BGMも合間って、ミケランジェロのピエタのように見えてくるから不思議だ。死したキリスト(蛭川)を抱く、聖母マリア(水無瀬)。


 自分の存在が水無瀬の人生に影を落としていると思っている蛭川は、初めてデートをした橋の上で水無瀬のことを突き放すことを決める。目がバキバキだあ……本気だよ……。俺がまともになるまでは、そばにいられないと本気で思っている人の目。

 玄関で眠ってるDV父親を部屋まで引き上げた上、布団までかけてやれる心の優しい子が「まともじゃない」なら、なにが「まとも」なのか教えて欲しい。そう思ってならない7話だった。

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