蛇を踏む聖母マリア
カトリック教会にはマリア像がたっているところも多い。カトリックでは聖母マリアを「崇敬」している。見出し写真は私の通っている教会のマリア像だ。足元に注目すると、白い像なのでわかりづらいが、素足で蛇を踏んでいる。
あまり気づかないかもしれないが、多くのマリア像は足元がこんなふうになっている。旧約聖書「創世記」3章にこんな記述がある。蛇にそそのかされたエバが木の実を食べ、ともにいたアダムにも与えた。すると「2人の目が開かれ」自分たちが裸であることを知り、いちじくの葉をつづり合わせて腰に巻いた。そして木の実を食べたことは神にすぐばれてしまい、神は蛇、エバ、アダムに罰を下す。
この後、エバには「産みの苦しみを大きなものにする」ことと「夫を慕うが、夫に抑えつけられる」ことが、アダムには「一生労苦して土から糧を得る」ことが申し渡される。なんともひどい話だが、古代、人間の罪の起こりとその結果は、このように説明されていた。
蛇の頭を踏みつけるのは「彼」と書かれているが、この「彼」を中世の権威ある聖書の翻訳であるヴルガタ訳は誤って「彼女」と記している。ここから「女の子孫」である「彼女」は聖母マリアとされ、今日もマリア像は蛇を踏みつけている。
誤訳されたが「彼」=女の子孫はキリストを、蛇の子孫はサタンを指し、サタンからの救済を伝える本節は「原福音」などとも呼ばれる。
清楚な佇まいをみせるマリア像が、足元で蛇を踏んでいるのは、像の構図としては、たいへんおもしろいと思う。今日もカトリック教会では聖母マリアの取次ぎを求めて祈りを捧げる。
50年以上前の古いカトリックに伝わる祈祷書に以下の祈り文がある。