消滅世界 村田紗耶香 読書感想
ヒトの妊娠・出産は性行や恋愛から切り離された世界となっている
母は愛する人と結ばれてあんたを生んだと雨音にずっと言い聞かせていた
成長期に入り雨音は他の皆と同じようにキャラクターにも恋をしていたが、ヒトも恋の対象となっていた
性行もほぼする人がいない中、雨音は恋人が出来てはそれを続けていた
これまでの作品は主人公が恋愛欠如、それがおかしいと言われる構図が多かったけど、今作は価値観が逆転している
恋愛して好きな人との子を産んだ雨音の母親こそが変と騒がれる時代となっている
ずっと時代というのは変化していて、雨音たちが指示している価値観もいずれ変わっていくというのが印象に残った
家族という形も変化している
家族っているの?というように聞かれる
ただ経済的には楽になれるかどうか
その点以外ではメリットがないように書かれている
なにしろ家族の間では性欲を持ったら通報という世界である
恋愛は他でという価値観
キャラクターに恋するのが当たり前
更に物語が進むと実験都市として千葉が選ばれて、子供達は全ての子供ちゃん、大人は男も女もおかあさんという存在となる
男性も妊娠出来るようにまでなり、老若男女というカテゴリーさえ取っ払われる
母に男女は性行するものとして呪いをかけられ続けていた雨音
解放されて新しいステージに移ったように見えたラスト
今ある価値観も変わっていくんだろうな
本作のようになるまでには時間がかかるけれど、千年後はこうなっているかもしれない
そしてアップデート出来ない人はおかしいおかしいと騒ぐのだろう