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悪い夏 染井為人 読書感想
生活福祉課で慣れないながらも仕事をこなす守
勤務中にパチンコへ行く先輩の高野
仕事をきっちりこなすエースと呼ばれる有子
生活保護を受けながら怪しい薬をさばく仕事をこなしている山田
山田に仕事を依頼しているヤクザの金本
シングルマザーの愛美
高野が愛美を脅迫したところから物語が悪い方向へと動き出す群像劇
本筋とは違う場所にいる古川佳澄と息子の勇太のみが善人であり、救われるべき二人
その他の登場人物はどうしようもない ここまでそろえた悪のバラエティパック
主人公っぽい佐々木守はそんなに悪人でもないか、と思わせて結局流されているし。さっさと警察に駆けこめば最悪な状況からは抜け出せたし、守があの時まともな状態だったら、もしくは休職してたら古川親子が救われたかもしれない。 やっぱり悪側なんだという意図を感じる。
最後の全員集合は一触即発の緊張感ある場面なはずなのに何故か笑ってしまう。ドリフのコントか何かかと思うくらい喜劇っぽい。
全員必死なのが余計に。
こんな田舎から抜け出して新宿に戻ると意気込む金本の言葉が一番本作でそうなんだよねと納得出来るのがまた笑う。
「つまり世間は『生活保護を貰っている奴らは、楽して金を得てずるい』ではなく『一生懸命働いているのに生活保護世帯よりも安い賃金しか貰えない社会はおかしい』と考えるべきなんだ。どうだ、批判の矛先は国に向かなきゃ嘘だろう」
「おれはな、今の社会状況なら底辺は皆こぞって生活保護を申請するべきだと思っている。それが国民としての当然の権利だろう。そしてそれがこの矛盾したシステムを作った国に対する一番の圧力になるんだ」
散々悪いことしている金本(人も殺している)だけどここの台詞だけはなるほどと思ってしまった。
生活保護としてもらえる金額よりも最低賃金がその倍なら、働かなくて貰ってずるいなんて誰も言わないでしょうね。
ラストの解釈は人によって違いそう。
今はまだ、でもいつか立ち直れるかもしれない。
追い詰めたらどうなるかわからないし、放置していてもそのままかも。
いずれにしろ他の人もろくな結末は迎えていなさそう。