教室ギア56(1)まづ「もの」より始めよ 20240306-073
鈴木優太著『教室ギア56』(個人通称:青本)は、意図的に本の前半から「もの」で始めている。つまり、「もの」の紹介から「もの」の背後にある哲学をちらっと語る。このあたりが、優太くんの本の特徴でもある。
やり方の紹介は実際のところ、その先生の技量もあいまって失敗してしまう可能性を含んでいる。しかし、「もの」はうそをつかない。だから、だれがやっても成功率も高い。こういう点が小学校の先生に、特に受け入れられている気がする。
例えば、IDEA31の「W杯の笛」は試してみれば、紹介されているいい笛の良さに驚くだろう。笛は馬鹿にはできない。安物の笛とご立派な笛とでは、天と地ほどの差がある。私は審判をやっているので、いろいろな笛を試したことがある。100円の笛は100円以上の仕事はできない。
実は、「もの」から試してみる読み方は、初任者から数年目までの本の読み方である。もちろん、初期は「もの」に救われる経験も必要だ。
しかし、5年経験や10年経験Levelになると、「もの」だけで終わってはもったいない。では、どうすれば良いかというと、鈴木優太実践の「つづき」を自分で考えるのだ。きっちり真似をして追試して、そのあとに「ちなみにぼくならば……」実践を実験してみる。
例えば、今回の笛の紹介はサッカー(屋外)・バスケットボール(屋内)・バレーボール(屋内)・ハンドボール(屋内)という陣容だ。屋内が多く、屋外の方が押され気味だ。
そこで、サッカー以外で屋外らしい競技はなんだろうか? と考えてみる。さらに、サッカーよりもたくさんの人数がいる競技なんだろうと考えると、「ラグビー」などが思いつくかもしれない。あれだけの広いエリアにいる選手を裁くのだから、学校(含:運動会)で使ってみるとどうだろうか? と仮説を立てる。批判的に読まなくても仮説は立てられる。立ててみること自体が、読者の楽しみの一つでもあるのだ。
例えば、ラグビーの笛もいくつ種類があり、扱いやすいものもあればかなりのくせものもある。私もいくつも買って試した結果、自分にぴったりの笛がやっと見つかった。本物を手に入れるには、少々お金も必要となる。だからこそ、少々のお金を使うことをおそれてはいけない。
そして、最後に筆者へフィードバックを送る。意外と読んだ感想等は、筆者には届かない。しかも実践の「つづき」が届くことは皆無だ。だからこそ、筆者にフィードバック等を送る価値がある。そのくり返しが、あなたバージョンの「教室ギア」となるのだ。
最初は「もの」の実践をして、そのあとに「ちなみに」を考えてやってみる。力を高めるには、「知る→わかる→できる」という過程がどうしても必要だ。
青本は「ちなみに」というあなたのフィードバックを、いまかいまかと待っている。
※青い顔と本のお写真はご本人(鈴木優太)に許可をいただき使わせてもらいました。