【短歌】リラの花|文語の定型短歌を詠む 2
*子どもの頃に住んでいた欧州の街の初夏の思い出を詠む
リラの花ほころび初めて暖かき光を充たす風の都に
母の縫ひし碧き木綿のワンピース胸高鳴りて初めてを着る
黒髪を伸ばしし我を追ひ越して少年ちらりと振り返りたり
「外つ国の君へ」と記せし文受くもこの街にては吾ぞ異邦人
飛び来たる燕の跡を目で追へば大聖堂の塔のそびゆる
登下校の途中にいつも見ていた Votivkirche (Votive Church)
初出:「橄欖」2011年6月号 一部を加筆修正しています。