別れ際には、すんなりと受け入れていた。
「もう終わりにしよう」って。そうして別れ話をされたら、自分は引き留めるような言葉もかけず、すんなりと承諾してしまう。
そこに心残りがないのではなく。そんな気持ちがあるから余計に、終わらせる時なら早々と終わらす準備をして、忘れてしまった方がいいと思うから。
関係を終わらせてしまえば、あとは何処かに残っている、この気持ちを嫌でも消し去っていく作業をするだけで。「時間が解決してくれる」と、そう考えながら傷心には一杯に浸ってしまえば、気がつく頃には忘れている。
別れ話の時「一度くらい引き止めて欲しい」なんて考える人もいるかもしれないけど。逆の立場からするなら「まずは言わないで欲しかった」と考えている。それが、その程度の気持ちか、と受け取られても、その程度の結末にしたのは振った側だと感じるし。
「別れたい」と思っていることを口に出されたのだから、単純に別れてしまうのが正解なのだと思っている。
そうして自分の嫌な部分を見つけられてから、離れたいと考えてしまう分には仕方のないことだと思うけど。その気持ちを口に出して行動にしてしまった時点で、どんな結末にあろうと、自分が作ったキッカケなのだから。責任くらいは、言った側にもあるはずだと感じてる。
結局忘れてはいけないのは、そこで別れるか、別れないのかさえも、人間関係としての相性の問題なんだろうと思えていて。引き止めもしない自分にも非があって、そうして別れてしまったというのなら。もう答えとしては、それが相手との相性が悪かったんだという結論に至るから。
もしも、別れ話がただの冗談で言われていただけなのだとしても、その言葉は人を傷付けていたのだから平気で許せるものでもないし。もっとも心の奥底に、他人の心を操ろうとする姿勢があったのなら、ますます腹立たしい事には違いがないだろう。
何かしら、言わなくてよかった言葉は、簡単に言っては欲しくはない。そうして簡単に言われたのだから、こちらも簡単に引き受けて当然だと。
こうやって、サッサと終わらせてしまったことによって、自分自身もここから先に後悔を永遠と背負うこともないのだと思うし。気持ちなんて、いつかは忘れていってしまうものだから。
だってこうして別れ話が始まった時点で、まずは向こうから此方に対する気持ちなんて既に忘れられていたのが事実で。確かに失ってから何かに気づくこともあるかも知れないが、失う前に自分に何も思っていなかった事実があるなら、失ってから気づくものは、嫌な部分に隠されていた僅かな良い部分についてのことなだけ。
恋愛の過程の中で、別れたいと思ってしまうくらい、相手の良さを見失っていたくらい嫌な要素が目立っていたわけで。失った後から傷つくのは、離れていく良かった部分、良かった相手の気持ちに気がついてしまうからであって。
そういうのが離れることに怯えて、別れることに躊躇するのは。単純に依存してしまっている関係になっている気がして、たぶんそういうのが苦手だから。
別れ話をされたのなら、素直に承諾するのは。簡単にそれを口に出す人は、そういう人であって。それを「相性の合わなかった相手」と納得する材料にするからで。別に全てを終わらせたかったのではなく、終わらせなければならないと思うから。
どうせ忘れてしまうのなら、要らないと思ってしまった感情なんて、すぐに洗い流してしまいたい。