白尾悠『隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい』2024年11月発売です!
白尾悠さんの新刊ですって?それは読むしかない!お先に双葉社さんに頂いたプルーフを拝読しました。
白尾悠さんの過去の作品『サード・キッチン』(河出文庫)ではアメリカの大学に入学した日本人の女子学生が、人種差別や女性差別、過去の日本の過ちなどさまざまな問題に直面します。どうやって解決していくかというと、大きなキッチンとカフェテリアでみんなの料理を作ったり一緒に食事をしたり、時には派手に口論をしながら前に進んでいきます。奥深い対話は私が避けまくってきたこと。大切さを教えてくれる物語でした。
私は『サード・キッチン』の世界観がとても好きです。さまざまな国の学生のクセがつよい!日本ではとても優秀な主人公も冒頭は友人関係も食も学業も、ずたぼろでした。読んでいる私がアメリカなんかいくもんか!みたいに憤慨していました。徐々にとっても不器用に友人が増えていき、ちゃんと食べられるようになって安心します。これは主人公がしっかり行動した結果なんですけれど。
今作『隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい』でもキッチンが重要な役割を果たします。厨房当番が作った料理をみんなで食べるシーンがあるんです。白尾さんの根幹にあるものが見えますね。
舞台は東京にある「ココ・アパートメント」という賃貸マンションです。通常の賃貸と違うのは、オープンキッチンがあること、そのキッチンで料理をしてアパートメントの住人たちに振る舞う当番が巡ってきます。料理をしたことがない高校生だろうがおじさんだろうが容赦ありません。それを住人たちと食べながら交流するのです。
小さい子どもがいる家庭なら、いろんな住人たちに目を向けてもらえます。
家事はおかあさんがするものと刷り込まれている高校生、父と子ども、母と子ども、わけありなカップル、東北のなまりのあるおばあさん、無口なココ・アパートメントの大家さん。
いろんな状況の人たちが暮らしています。
このマンションの人たち、めっちゃいろいろ悩んでるやん?と他人ごとのように思ったのですが、いや待てよ?わたしらもいろいろあるやん?誰にも打ち明けてない悩みやつらさ、抱えてない?どこかで無理して心や身体が病気になったりするよね。
ココ・アパートメントは題名にある通りちょっとおせっかい。扉が少しだけ開いている場所です。実はそんなに特別なわけではないのかもしれません。アパートメント内の自治会や当番を通じてみんな顔見知り。いわば令和の長屋なんですね。
扉を開ける勇気をもつだけです。隣人がそっとこちらに眼差しを向けてくれる。一緒にご飯を食べる。それだけで心が少し軽くなる。内に秘めた思いは打ち明けてもいいんだよ、と教えてくれる物語です。
ああ、ココ・アパートメントにわたしが住んだら、料理めんどくさいなあ、子どもたちとうまくやれるかなぁ、とできないことばかり考えてしまいます。そんなわたしこそココに放り込まれるべきかもしれません。
2024年11月20日ごろ、双葉社さんより発売予定です。
楽しみに待ちたい本です。
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