#150地図から石碑を探す
二〇二三年一二月に高知県に出張に行き、早朝の時間を使って近隣の墓を探すしたということを「#142高知の墓巡り-身近な身近な史跡、文化財の楽しみ方(20)」で記しました。その際には、ご子孫からの聞き取りだけを頼りに墓を探し回ったわけですが、結局、目的の墓が発見出来ませんでした。後日、地元の郷土史の本に掲載されていることを友人から知らされてその場所は判りました。その際に情報提供してくれた友人から、書籍にもきちんと住所が書かれていないのに、どうやって墓や石碑を探し出すのか、と訊ねられました。著者は、友人に「ニオイ」だと答えました。しかし、さすがに本当に鼻で嗅ぎ分けるわけではないので、今回は著者が普段どのようにして墓や石碑を探しているかについて記したいと思います。
まず真っ先に確認するのは住宅地図です。昔であれば、各地区に住宅地図の立て看板などがあったりしたのですが、さすがに現在では個人情報保護の観点からそのような地域は減っていると思います。そのため、目的の場所の住宅地図を入手して、隈無くページをめくってみます。その際、地図記号の「墓地」および「記念碑」を気にしながら住宅地図全てに目を通します。「墓地」は墓地は概ね集落の周縁部や河川の側にあることが多く、町村の境目などを注意してみていると見つけやすいかと思います。これは農耕に適さない土地を活用していることが多いためといえるでしょう。「記念碑」は集落の中にあることもありますが、学校などの公共施設の敷地にあることや、墓地の中などにもあることが傾向として高いです。個人の記念碑を個人の土地に建てることもありますが、寄付金を基に公共の土地に設置する傾向が高いので、公共施設のある場所なども注意深く探すのが良いでしょう。もし
探している墓地や石碑が古くから伝わっているものであれば、参考までに陸軍陸地測量部の仮製地形図を事前に確認し、住宅地図と照らし合わせてみるのも良いでしょう。
次に実際にGoogleMapで現地を航空写真で見てみます。GoogleMapの地図上に墓地であるという記載がない場合でも、村の共同墓地などは区画整理をされていたりするので、判り易いです。「#116活用される古墳(1)」で紹介した恵解山古墳(京都府長岡京市)のGoogleMapの航空写真を見てみましょう。
恵解山古墳の墳頂部には近世以来の村の墓地があります。そのため、航空写真で見ると、不自然に整然と整備された区画に分かれていることが見て取れます。航空写真を見るとこのような整然と整備された区画がはっきりと表れることがあるため、地図上に表記がなかったとしても、意外と墓地を見つけ出すことが可能となります。先に挙げましたが、村の周縁部や河川の側などでも、このようにはっきり纏まっていないにしても、不自然に区画された場所を見出すことが可能です。
上記のように、住宅地図や仮製地形図、航空写真など、複数の材料を用いて場所を推定していきます。そして最終的には現地に赴いて目視により確認するに至る、となる訳ですが、現在ではGoogleMapのストリートビューを用いればさらに事前に確認が取れます。
下の写真は、著者が自治体史執筆にあたって、忠魂碑を一つづつ探していた際のストリートビューのスナップショットです。村の墓地の外周部分から忠魂碑が設置されている様子が確認出来ます。これは明確に探し出せた例ですが、村墓に遠目に大きな石碑があることなどもストリートビューから確認出来ることもあります。
また、昔は所在していたけれども今はない、という墓地や石碑を探す場合は、こと近代のものであれば、法務局に確認することも可能です。法務局では、その地番の土地の所有者や地目などについて、土地台帳を基にした情報を有料で提供してくれます。これを活用すると、過去にあったがいつ無くなった、あるいは移転したということなどの確認も可能となります。
このように、現在では、かなり様々な手法を用いて事前調査をして、石碑の所在をかなり確定的に所在を確認することが可能となってきています。何か墓地や石碑をお探しの際には、このような方法も参考にして探してみてはいかがでしょうか。