【好き】人と、人(だった者)(PC向けノベルゲーム「ヒラヒラヒヒル」)
「ヒラヒラヒヒル」は
「死んだ人間が蘇る病気」についてのノベルゲームだ。
「レビュー」と考えた際に3つ程真っ先に上がった。
「考え方を変えた作品」だ。
人の考え方なんてそうそうすぐ変わるものではない。
最近の記憶で一番新しいものがこの「ヒラヒラヒヒル」だ。
特筆しておかなければならないことがある。
私は今、介護事務をしている。福祉用具と住宅改修の介護保険請求周りをメインに日々奮闘している。
「家族」という言葉が苦手で、先日祖母を亡くした私がこの仕事に就き、話をすることが、ちゃんちゃらおかしい話である。
「ヒラヒラヒヒル」をプレイ済みの方は既にこの時点でピンときたと思う。
そう、本来私は同著者の「BLACK SHEEP TOWN」をオススメする方の人間だ。自他ともに認めるそっちの人だと思う。
(※ちなみにこちらは「違う意味」で本当に、本当におもしろい。本当に!
おすすめです!!!)
ただ、現在の職場環境や自分の状況があまりにもマッチしすぎて、
刺さりに刺さり、刺さりまくってしまった。
人の生死、褥瘡、欠損、手術、認知症、家族との関係、入院入所。
日常だ。
同僚があまりに人生をかけすぎていて、正気を疑ったことがある。
彼は作品内の「先生側の人」なのだ。
話を戻して、「ヒラヒラヒヒル」の説明をしていきたい。
蘇った人は認知機能、身体機能が衰えて、腐っていく。
治療薬はなく、進行を遅らせる薬はある。
舞台は大正初期がモチーフ。
(実際に日本で「養老院」ができはじめたのは「明治時代から大正時代にかけて」らしい)
登場人物の医学博士、先生である「加鳥周平」は、「風爛症(死んだ人間が蘇る病気)」をとりまく環境、制度を問題視し、変えていこうとする。
主人公は2人(もっというと、全員が主人公だ)
「風爛症(死んだ人間が蘇る病気)」に対する調査に参加することとなった医師である「千種正光」と、
風爛症と関わりがなかった学生の「天間武雄」だ。
加鳥周平の指示のもと、千種正光は「風爛症患者」の家を訪問し、様々な生活環境のレポートをとり、時にはアドバイスをする。
天間武雄は、通学のために父の友人の家に下宿をしており、
その父の友人の娘「常見明子」に密かに甘く艶やかな想いを寄せながら日常を送っている。
物語は突然大きく動き出すわけではなく、
少しずつ日常に変化が表れはじめる。
じわじわと、どこか他人事のように思っていることが、
目に入っているけれど、見えないものが、
浮き彫りになってくる。
ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、
この作品の最後に、「千種正光」の長台詞がある。
本当にすごいセリフだ。
私は3回読み直した。
愛は消耗する。環境を整えるのだ。
そういった内容のことを、言ってくれる。
人は悪くない。誰も悪くない。何も悪くない。
誰も責められるべきではない。
誰も赦されるべきではない。
愛するため。
精神論だけで叶えられる「夢物語」ではなく。
「現実」の、あなたの「本当の現状」の、状況に根差して。
愛を継続するには。
精神論で叶わないことを、現実でサポートするものに頼ることで
愛が継続する。そう言うのだ。
愛の力は偉大だ。
偉大だけれども、それは悲しいことに、消耗し、疲弊していく。
カラカラに乾いて、遂には憎しみ始める。
このレビューを書いている時、
伯母(私はこの日本語も興味深い。叔母ではない。悪習であり、文化として遺したいと思ってしまう、こんな時に、私の文字への興味が五月蠅い)から、メッセージがあった。
心から本当に罪深いとは思うけれど、もう運命的なものを感じられずにいられない。
現実は残酷で、「愛」は消耗する。
本当に、悲しい。悲しい事だ。
このレビューをかかねばならぬ。
そう、思ってしまった。
出会ったばかりのあなたに話すべきことではないと思う。
そう、心から思う。
それでも、伝えずにはいられない。
現実は残酷だ。
その、残酷な現実に立ち向かうには、
愛を継続するには、何かの補助する力が必要だ。
それは、「現実逃避」と言われるものかもしれない。
「あなたの力」だけで、正気で、「誰かを救える」と、とてもいい。
けれど、そこで「そんなあなたを救う人は?」浮かぶだろうか。
あなたは救われていい。
誰も強くない。
「あなたの愛したい人の環境」を整えることは、「あなたの環境」を整えることになる。
どうか、自分を責めてやまない人、
「愛」を気に病む人、
環境に、頼って欲しい。
救いたいと思っている人が、この世の中にいる。
ちなみに9月21日は世界アルツハイマーデーだ。
その日が近い今、ご紹介できたのも少し運命を感じたりする。
https://www.alzheimer.or.jp/?p=58389
今気づいたけれど、私は同僚と仕事が結構好きだ。
どうして長い顧客の死を受け入れられるのだろうと不思議に思っていたけれど、
「愛を保つ」ための仕事だからだ。
「ヒラヒラヒヒル」
「人とは何なのか」、「愛の過信」、「自分と自分以外の満たし方」
それを、赦す作品だった。
「愛」は「呪い」だ。とても身近にある。
どうか、
人を、
自分を、
赦して欲しい。
愛は支えられる。
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