「推し」で心は満たれる? 21世紀の心理的充足のトレンド/熊代亨
推しについて語る人が好きだ。
生き生きと推しのいいところ、自分にどういう影響を与えたかを語ってくれる。何が好きかで自分を語れよ。推し話を通して、表面では見えなかったその人との共通点が見つかったりする。
この本では推しで心が満たれるか=ナルシズムの充足や成長について書かれている。
ナルシズムってナルシストみたいになれってこと?と思うかもしれないが、健全なナルシズムは己の心を充足させるために切り離せない。
そして、ナルシズムの成長には“適度な幻滅”が必要なのだ。
“適度な幻滅”という言葉で私の記憶からひっぱられてきたものがある。
『とらドラ!』というアニメを大学生の時にレンタルショップで借りて見ていた。ラノベ原作のラブコメアニメだ。何故見始めたのか分からなかったけど、最後まで追いかけた。オレンジは名曲だ。
クライマックスでヒロインの大河が教室に逃げ場がなく閉じ込められたシーンがあったと思う。その時ヒロイン大河の泣き顔が結構ぐちゃぐちゃに描かれていて、「アニメでこういう表現していいんだ」と少し引きながらも驚いた。その分、迫真にせまったシーンだと理解できた。
(とらドラ!ファンの方、私の記憶の捏造があったら許して…)
ヒロインの顔ってこんなに歪んでいいんだと。
いつもかわいい美しいヒロインじゃなくてもいいんだ、そっか、それが自然だよな、とふと理解した。ぐちゃぐちゃした顔もその子の一部なんだよな。
多分、適度な幻滅を経験することで、自分の欠点を受けれることができるようになるのではないか、と思う。
世界を超人と凡人に2分別して、超人になれない他者や自分を貶めなくていいい。世界はそんなに単純じゃないし。
4月から始まる新生活、私は推しのバッグチャームを開封して使ってみようと思う。心が疲れた時に彼の勇敢さ優しさを思い出せるように。
お守りのようにそっと大事に使いたい。