(9)5分間隔の『出雲1号』と『あさかぜ1号』
(今はなくなってしまった東京駅12・13番線ホームの、夕方から深夜にかけての風景を綴った連載)
『富士』のあとは、再びブルートレインラッシュとなる。
18時20分発の『出雲1号』、そしてそのたった5分後、18時25分発の『あさかぜ1号』。
先に出た『富士』とも、それほど時間が空いていないので、この18時台前半はとても慌ただしい。
品川車両基地から東京駅に入った『出雲1号』は、すぐにEF65を切り離し、うしろから前に付け替えなければならない。そしてほとんど同時進行で、『あさかぜ1号』もそれを行う。職員たちの感覚では秒単位の作業だろう。
また、この時間は通勤電車も多い。11番線の向こうのホームは、絶えず電車が入っている状態だ。そっち側にも気を使って作業をしなければならない。
『出雲』は、ブルートレインのなかで唯一、終点の地の名が付いている列車じゃないだろうか。寝台急行を含めて、他に思い当たらない。当時はそれほど寝台車に「特別感」があって人気もそなえていたので、ネーミングに凝っていたのだ。『博多』とか『かごしま』などと、安直には付けられていない。
関西発九州方面行の寝台列車など、『明星』、『彗星』、『金星』、『あかつき』など、東京発以上にロマンチックな列車名を付けていた。
もっとも『出雲』だって、目的地として付けたのではなく、山陰の有名な観光地からの意味合いだろう。目的地として付けるのなら、『出雲市』となってしまう。
並んで発車する『あさかぜ』は、関西発列車に並ぶ、さわやかなネーミングだ。この『あさかぜ』は1号が博多行き、3号が下関行きで、他の多くのブルートレインの通過地点を終点としている。子どもの頃、なんとも中途半端で必要性の薄い列車に感じた。
(10)へつづく
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