2022ファジアーノ岡山にフォーカス35-金沢戦- 『始まりのとき』
始まるときは2パターンある。目標を達成して次のステージが始まるとき。2つ目は、現在の目標が、失敗に終わり、次の挑戦が始まったとき。
厳密に言えば、自動昇格の可能性は残されているが、追走することでプレッシャーをかけて勝ち続けるという目標は、極めて困難になった。ただ、次の試合を一つ落とすだけでも、乱れれば可能性は残っている。
よって、奇跡の自動昇格の挑戦と同時に、プレーオフを勝ち抜けるチームへの挑戦が、始まるかもしれない。その前に、3位以上を確定させる戦いやチームのオプションや完成度を高める戦いが残っている。
一つのステージが終わっても既に次のステージが始まっている。そこに気付いて挑戦できるかどうか。そう考えると、下を向いている時間は、岡山にはない。
常に上を前を向いている選手や監督のためにもしっかり後押しできるかどうか。そこが問われていくととなる。
さて、前置きが長くなってしまったが、いつも違うゴール裏から見た金沢戦を振り返っていきたい。
1、サイドのスペース
この金沢戦を語る上で、ここは避けては通れない。3バックのサイドのスペースは、弱点とよく言われるが、問題ない試合もあれば、この試合のように、終始そこから崩される試合もある。
その理由として考えられるのが、中央を経由した攻撃が、金沢に少なかったことである。中央に26本山 遥と34輪笠 祐士という守備力のある選手を揃えてもそこから金沢が攻めてこなければ、違うタスクを担うことになる。
仙台戦でもそうであったが、ドリブルで持ち上がって、スペースやパス交換で崩していくというタスクの比重が多くなる。
仙台戦では、サイドは、基本1人であり、4-4-2のように、サイド攻撃が失敗してももう一人いるという保険がなくて、サイドで奪ってしまえば、前にスペースが、仙台戦ではあった。
対して金沢戦では、サイドでフリーになるどころか、一人対応する選手がいるだけでなく、SHとSBに囲まれるシーンすらあった。決定機を作るためには、“崩すためのアクション”が、どうしても必要となってくる。
岡山のボランチの両名と強力CB陣で対応していたが、金沢にスピード勝負とスペースを突く攻撃を徹底されたことで、CBが外に釣り出されてそこのスペースを突かれるシーンやCBが置き去りにされるシーンが繰り返し生じた。
1失点目も5柳 育崇が置き去りにされて、2失点目も戻りながらの守備となりボールホルダーがフリーとなっていた。3失点目も同じように、サイドから破られて、フリーで押し込まれた。
リードする展開となっていれば、5バックのようにして、カウンターを狙うこともできたかもしれないが、この試合では、岡山がリードすることはなかった。
よく考えてみれば、勝ち点3が必要な岡山が一歩前に出てしまう(前がかりになってしまう)ことは、心理的には、極めて自然である。
ただ、金沢としては一巡目の対戦で、5-1の大敗を喫しており、“失点しないこと”を最重視すると共に、引き分けでも大丈夫という意識。
木山 隆之監督は、このスタート時点の心理的な部分を読み誤ったと言わざる得ない内容と結果になってしまった。
思い起こせば、有馬ファジの最終戦も前への意識や勝利への意識から、オーバーワークと攻守のバランスを崩して、無敗対決で千葉に破れたことが記憶に新しい。
内容は全く違っても同じスコアである3-1で破れたことは、偶然でもないかもしれない。
ただ、これは結果論に過ぎない。もっと言えば、3-4-2-1の実戦での回数も少なく、こういった脆さをカバーする戦い方や違う戦い方を採用するという結論に至れなかったのもまた敗因となった。
金沢は、90分間通して、4-4-2のブロックを構築して、SBの選手がサイドのスペースへのロングパスやミドルパスを入れていくという戦い方を徹底し、その形だけで3得点奪い、岡山対策というよりは、3バック対策と守備への執念で、ゴールに蓋をして守りきったという試合であった。
この部分は試合後の柳下 正明監督のコメントからも感じる。
岡山が、残り3試合で、3-4-2-1の形にトライするのか、3-1-4-2や4-4-2(4-2-3-1)を仕上げていくのか。
スポーツナビのスタッツでは、
金沢:支配率(43%)、シュート(11本)
岡山:支配率(57%)、シュート(22本)
この数字を見ても主体的に繋いで戦う唯一のオプションだけに粗探しをして、完成させたい部分もあり、木山 隆之監督の決断一つで、チームの方向性が決まるということを強く感じているシーズンでもある。
また、岡山の決定機の一つでも決めていれば、違った結果になったかもしれない。しかし、金沢の見せた失点しないという気持ちは、勝者に値するものであり、岡山の勝利を目指して、リスクを負ってでもせめて行く姿勢も本物であった。決して下を向く必要はない。
2、木山マジック(金沢戦)
2失点目を喫した段階で、すぐに木山 隆之監督は動いた。8ステファン・ムークに代えて38永井 龍、26本山 遥に代えて27河井 陽介。
先ほど、中央での攻撃のタスクが必要という話をしたと思うが、26本山 遥を諦めて、27河井 陽介に変更したことで“間”で受けるシーンを作ることができるようになった。
38永井 龍と15ミッチェル・デュークの2トップにしたことで、金沢のラインを押し込むことができるようになった。
38永井 龍が、前線で体を張り、中央のエリアで待つことで、バイタルエリアでのパス交換は劇的に増加して、27河井 陽介の中央でのチャンスメークの難度が上がったことで、金沢が奪って、カウンターというシーンは、サイドの逆襲に限られてくるようになった。
中盤の守備力でなく、中盤や前線の攻めの力で、守備を安定させることが出来ていた。今季の岡山は、受ける組織的な守備ではなく、積極的な姿勢で、攻撃機会を増やして、守備を安定させてきた。まさに、これはそういった戦い方の1つであった。
22佐野 航大のゴール前でプレーや16河野 諒祐のクロスが増えていたのもこの交代の効果であった。しかし、同点に追いつけないので、次の一手を打つ木山 隆之監督。
34輪笠 祐士に代えて44仙波 大志、14田中 雄大に代えて、9ハン・イグォン。中央に守備的MFは不在となったが、攻撃的なボランチの選手だある22佐野 航大や27河井 陽介を投入することで、中央にパワーを生む。
9ハン・イグォンと19河野 諒祐のサイドからのドリブルの仕掛けや推進力、ラストパス(クロスやパス)でのチャンスは、より増えた。しかし、どうしてもゴールを割れない。
そこで、最後の手を打つ木山 隆之監督。チームトップのアシストを誇る16河野 諒祐をすっぱり諦めて、24成瀬 竣平を投入する。
この交代の背景として、金沢のSBが、あまり上がらずスペースを消しつつ、SHやCFの左右の選手へのパスの配給することを徹底したことで、23ヨルディ・バイスのロングフィードを封じられていることにあった。
そのため、なかなかフリーでクロスに上げる状況や金沢のゴール前の守備密度が低い状態で、クロスを上げることはできなかった。
思い起こせば、サイドからの岡山の決定機のほとんどは、マッチアップする選手が、常に岡山の選手の前に立ちふさがった。そして、密度が高いことで、22佐野 航大や9ハン・イグォンの決定機は、金沢の鬼気迫る守備の寄せや粘りによって、シュートコースが狭くなり、あと少しというシーンで決める切ることができなかったのである。
24成瀬 竣平を投入して、打てる手を打った岡山であったが、無常にも次の一点は、金沢の方に生まれた。この失点により、勝ち点3は、絶望的となったが、最後までゴールに迫り、この試合で、前半途中から流れを変えるために投げまくった41徳元 悠平のロングスローやセットプレーで、最後まで攻め続けたが、1点が遠く、プレーオフがかなり絶望的となる敗戦となってしまった。
多くのシュートシーンがあった38永井 龍やドリブル迫った22佐野 航大の仕掛け、9ハン・イグォンの強さやスピードからの仕掛け、ゴール前で再三あった岡山の決定機は、金沢の壁の前に流れからはシャットアウトされてしまった。
PKの流れから1点を返して、一度は追いついたが、PKも一度は止められて、押し込んでの得点であったように、岡山の“決定力不足”で負けたという結論にいたりたくなるところではあるが、金沢の徹底したサイド攻撃と、ゴール前の鬼気迫るブロックもSBがあまり上がらないことで守備密度を作るという戦術的な判断と準備によって、そういった内容や結果になったという評価を出すことで、今度は岡山もそういった戦術的な勝利に繋げることができると信じたい。
金沢の選手の気持ち、魂を燃やして戦ったことが分かる試合後のコメント。
木山マジックの多くは、こうした敗戦から試合の主導権を握る為のトライ・アンド・エラーを繰り返することで、前進するというマリオネットストラテジーによって、今の岡山があるといっても過言ではない。
この敗戦という結果によって失ったものは、正直かなり大きいが、この敗戦を消化して、糧にするとこができれば、気持ちや3-4-2-1を含めた総合力をより高めることができると信じたい。
自動昇格への挑戦は、まだ完結していないが、選手や監督のコメントにある通り、プレーオフを意識した戦い方や準備、立ち振る舞いを行っていくとこで、様々なダメージを力に変えることができるのが、ファジアーノ岡山であると思っている。
繰り返しになるが、これは絶望でなく、始まりに出来るかどうかは、残り3試合の先のステージにある。
3、ファジアーノ岡山スピリッツ
この項では、選手や監督のコメントから岡山を語る。
感情を表に出したくなる結果と内容であったが、しっかり受け入れて前を向く。それが、今季の岡山の強さである。特別な言葉ではないが、そこには、岡山らしさを感じられた。
サッカーにも「たられば」は、付き物であるが、選手だから感じる悔しさは、サポーターの想像する以上である。ただ、14田中 雄大が語っている通り、ここで落ちていってしまったら、意味がないですし、積み上げてきたものは、本物であることを証明できるチャンスは、幸いにも残っている。
今回のレビューで、繰り返しになるがというワードを何度も使っている気がするが、ファジアーノ岡山もJ1昇格を、今季の目標にした場合に、早々に敗者になる可能性もあったが、その度に立ち上がって、蘇ってきた。23ヨルディ・バイスの過去のコメントのように、最終的に勝者になる可能性はあるので、岡山サポーターとして、最後まで応援して、気持ちだけにはなるが、一緒に戦い抜きたい。
23ヨルディ・バイスは、熱い選手でもあるが、考えが深い。そして、その先を見据えている。だからこそ、自分達(ファジアーノ岡山)のことをよく理解している。一流の選手は、こういった自己分析が的確で、自分の武器を全面に出せて、弱点を目立たないようにできる。
例年と比べて、敗戦は少なく、引き分けになっていた内容でも勝てるチームになっている。その中で、敗戦は毎回つらい。しかし、その度に、23ヨルディ・バイスの言葉に、何度も救われてきた。サポーターでもこれだけ心強いので、ピッチの選手は、心強いことは間違いない。
ファジアーノ岡山は、23ヨルディ・バイスの言葉を一冊の本にして、バイス語録として、次の世代に残すべきだ。
バイスに限らず、心を動かす言葉や熱くする言葉、強くする言葉、そういったものをサポーターや子供たちに伝えていくことで、“ファジアーノ岡山”が“ファジアーノ岡山”であり続けることができるはずだ。
また、金沢戦では久々にゴール裏で観戦することとなった。色々と視野が広がった中で、ゴール裏の武器は、熱量だと思っていた。改めて感じたことは、熱さの中に冷静さもあることを感じた。
試合の流れをよんで、声のトーンやボリュームの調整、一体感を作る。色々と考えて行くと、選手や監督に力を届けるために、時には、自分達の感情を抑えたり、時には熱い気持ちを前面に出していたりなど、私にはとても語る事ができない魅力や奥深さが、ゴール裏にもあった。
また、こうした気持ちは、選手に確実に届いていて、この試合の23ヨルディ・バイスのコメントのように言葉として、残してくれている。一万人の集客が、難しい試合が続いていたが、プレーオフに回る事となっても、選手に声を届ける事で、プレーオフへの勇気に繋がるかもしれない。
私が言うまでもなく、多くのサポーターは、そうだと思うが、今は自動昇格の可能性がある限り、そこに向けて応援し、プレーオフに向けて選手を後押しするために、スタジアムに足を運ぶことは、チームの歴史の塗り替える力になるかもしれない。
そして、この試合の金沢の選手のような粘りのある守備や徹底して戦うという力の原動力になるかもしれない。
最後まで、戦い抜こう!
4、写真コーナー
まるで海だ。湖とは思えない圧倒的な景観である。
公園の作りが非常に整備されていて好き。
迷わなくて、本当に美しい。遊園地や○○村のようなところに来たような感覚。
私が食べてきた中で、歴代ナンバー1のフーズ。売店としては、異次元の巧さ。観ての通り、担々飯なので、辛いのだが、辛いのが駄目な私でも食べきれる。そして、飯には、紫蘇の風味が、辛さの中で独立していて、辛いだけではないことをより際立て、味と辛さの両立した上に、第三の刺激を生み出している。そして、なんと言ってもパイカ。謳い文句通りとろけます。また、塩がしっかり自己主張。コーンも柔らかい。
この美味さを表現するなら今季の木山ファジ。強烈な個性を絶妙なバランスで、各自が光っている。ファジフーズを含めて、個人的には、歴代ナンバー1の美味さでした。
こちらは、柔らかくマヨネーズが存在感、具材もそれなりに入っている。
こちらは、売店の定番だ!
私の画像は違いはほぼ分からない赤。どこか親近感がある金沢のゴール裏。
岡山と同じで屋根はない。
こちらも屋根はない。津山に近い感じ。角度によっては、見えない席もあるかも?
手を離した隙にガッツポーズ。決定的なシーンをしっかり撮れる方は、本当に凄い。
そして、ゴール裏から見える景色みたいな感じのタイトルに本当は、したかった。
ピンとこそずれているが、ゴール裏だと両円陣を同じ画角に入れることもできるし易い。
多いことにこしたことはない。Jリーグクラブが増えてきて、代表人気が落ちる中で、Jリーグをどうやって盛り上げて行くのか。コロナの中で、直面する現実は、大変だが、向き合っていかなければならない問題。
前を向くしかない。悔しい敗戦。
シャトルバスの便数に限りがあった。色々としてバタバタしたが、良いスタジアム、良いグルメ、良いサッカーであった。勢いのようなものを感じた。負けてしまったことで、可能性が低くなったではなく、負けたことで、強くなれた試合にできるどうかは、今後のファジアーノ岡山次第。
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・Photo=Masaaki Sugino
試合後コメント引用元紹介
アディショナルタイム(おまけ)
ファジ造語
参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777
代表作
2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」
は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907
筆者紹介
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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。