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杏里/シルエット オブ ロマンス~隠れ名曲、名演コレクション。
松尾清憲さんについて続けて書きましたし、今回は記念すべき45回目ということで、松尾さんの「愛しのロージー」にするか、「ムーンライトランデブー」にするか悩みに悩みましたよ。
こんな時ちょっとひねった選択をしてしまうのは私の悪い癖です。
で、松尾さんが書いた曲2曲が頭に浮かんで、どちらにするかまたまた悩んでしまいましたが、シングルになっている方(なんたって45回目ですから)にしたというわけです。
結局、取り上げるのは杏里の傑作アルバム『哀しみの孔雀』からシングル・カットされた「エスプレッソで眠れない」(こちらも名曲!)のカップリング、「シルエットオブロマンス」です。
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・杏里『哀しみの孔雀』(FLCF-5035/フォーライフ)
鈴木慶一プロデュースの1981年作品の紙ジャケ盤。「シルエット オブ ロマンス」収録。
画像をタップすると、「シルエット オブ ロマンス」を聴くことができます。
プロデューサーとしての鈴木慶一さんはあがた森魚さん『日本少年』の一部や、PANTA&HAL『マラッカ』、『1980X』などで注目され始めた時期の作品です。
1981年はムーンライダーズが新しいオリジナル・アルバムを発表していない年だったこともあり、シネマ『MOTION PICTURE』、ハルメンズ『ハルメンズの近代体操』、野宮真貴さん『ピンクの心』などをプロデュースしています。
『哀しみの孔雀』は「オリビアを聴きながら」でデビューした杏里さんの新しい方向性を打ち出したアルバムです。
これまでが「海と夏に西海岸が好き」というイメージだったとしたら、「山と冬に東海岸が好き」なイメージでアルバム制作をするという作品にする目論見が慶一さんにはあったんですね。
楽曲を提供したのは慶一さん、佐藤奈々子さん、PANTAさん、ハルメンズの比賀江隆男さんにシネマの松尾清憲さん、ムーンライダーズの岡田徹さんという慶一さんがプロデュースしたアーティスト中心の顔ぶれでした。
演奏は基本的にはムーンライダーズの白井良明さんがギター、鈴木博文さんがベース、キーボードが岡田徹さん、かしぶち哲郎さんがドラムスで、曲によってはドラムスに鈴木さえ子さん、ベースに奈良俊博さん、キーボードに小滝満さんがシネマ(但し、奈良さんはサポート・メンバー)から参加しています。
ちなみにこの「シルエットオブロマンス」には白井良明さん、鈴木さえ子さん、小滝満さんに、シンセベースで岡田徹さんとバイオリンで武川雅寛さんが参加して、コーラスには鈴木慶一さん、武川雅寛さんに松尾清憲さんという顔ぶれでした。コーラスの混じり具合がとにかく素晴らしいですね。
あと、この曲はエンディング近くの武川さんのバイオリンが印象的な仕上がりです。
ムーンライダーズは色々な歌手(岡林信康さん、堀内孝雄さんや古谷一行さんなど)のツアーに帯同していた時期だったり、レコーディングにも参加していて演奏面で充実した時期だったのと、シネマはアルバム『MOTION PICTURE』の録音やライヴを経験した時期だったので、アルバムを通して充実した演奏です。
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・「REMEMBER VOL.8」(SFC音楽出版)
松尾清憲インタビュー(インタビュアーは瀬竹誠・高護)&提供曲、参加曲リストを掲載。
この時期、慶一さんがプロデュースしたこの『哀しみの孔雀』と野宮真貴さん『ピンクの心』の仕上がりは、後々まで自信作といわせた会心の出来になりました。
そして、松尾さんは『ピンクの心』に「美少年」を提供しています(作詞は伊藤アキラさん)。
ちなみに「美少年」のドラムスは間違いなくさえ子さんで、ギターは良明さんのように思います。
この時期、松尾さんが書いた「シルエットオブロマンス」、に「美少年」、そして『哀しみの孔雀』収録の杏里さん「ヘッドライト」と名曲目白押しで、1982年には声優の潘恵子さんや倉橋ルイ子さん、新井薫子さんに曲を書く下地を作ったということなのでしょう。
1984年以降はその実績から提供曲数が増えていきましたね。
1993年に発売された鈴木雅之さん「恋人」が作家としての松尾さん最大のヒット曲となりました。
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・「ミュージック・ステディ 1984年7月号」(ステディ出版)
「今、ヒットチャートを考える」掲載。
杏里さん『哀しみの孔雀』については「ミュージック・ステディ」も触れていますね。
当時、『哀しみの孔雀』を評価していた人は少なかったことは強調しておかないと。
それにしても、この座談会で色々あったんだろうなと思ったのでした。
内容については探して読んでみてください、としか言えません。。
松尾清憲さんやその周辺について4日連続で書いたんですね。この勢いならまだまだ続けられそうですが、敢えてちょっと違ったことを取り上げてみたいかな、と。すみません。
なので、隠れ名曲、名演コレクションは間を挟んでまたやります。明日は全くの未定です。
ではまたー。