団子食べないと死ぬ妄想じじい
通常、統合失調症の人には病識(病気だと言う認識)がないから、現実と非現実の区別がつかなくなって社会生活に支障をきたす。
私も統合失調症だが、自分の症状が現実にはありえないと認識している。それでも症状が治らないという不思議な状態だ。
最近は、自分の右サイド、20センチくらいの位置におじさんがぴたっと張り付いている。いつも同じおじさんだ。
おじさんはいつも私に向かって「死ね」とか「お前には生きる価値がない」とか、いろんな罵詈雑言を浴びせてくる。以前は、耳を貸してしまって、怖かったりパニックを起こしたりしていたが、病気に慣れてくると、おじさんの罵声をスルーするスキルがついた。
今も何かワーワーわめいているのだが、はいはい、うるさいじじいだな。と耳を貸さずに放っておいている。ハエが近くを飛んでいて、うっとおしいなという気持ちに似ている。
精神科でじじいのことを話したら、その声は、自分自身に思っていることが幻聴として感じられているのだと言われた。自分では「死ね」なんてひどいことを自分に言っているつもりはないのだけど。
確かにジジイの声がはっきり聞こえるし、妄想ジジイともし街ですれちがったら、「こいつ!」って指し示せるくらい、はっきりと特徴を持った声だ。でも、姿のないジジイが罵詈雑言を吐き続けるなんて実際にはありえないことだと分かっているし、本当は、心の奥底で自分に向けて思っていることなんだろうと頭では理解している。
でも不服だし、不快だ。
私はそんなこと自分に対して思っていないぞ、と思う。自分の考えが分裂していて収まりが悪い。
今朝もジジイは元気よく(?)、「死ね」などと罵詈雑言を吐いているが、うるさいので無視している。無視していたら、ぼそっと「だんごを食べないと死ぬ」と言った。
なにそれ。
耳を傾けたら
重ねて
「みたらしだんごを食べないと死ぬ」と言う。
ジジイよ。
それはあんた(もしくは私)がだんごを食べたいだけだろ。
道中にコンビニでみたらしだんごを買った。
だんごを食べて満足したのか、声が聞こえなくなった。
ほんのちょっとだけジジイが可愛く思えた。