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韓国の味噌は納豆の匂い?

 前回は中国の醤油について紹介したが、お隣の韓国にも醤油や味噌はあって、様々な種類があるようだ。
 以前、浜松市内にある「韓ビニ」という韓国食材などを取り扱うお店に行った時に見たのだが、日本でも有名な唐辛子の入ったコチュジャン以外にもテンジャン(된장 味噌)、サムジャン(쌈장 テンジャンとコチュジャンを混ぜたもの)、カンジャン(간장 醤油)、エビエキスやイワシエキスなど魚醤もあった。
 訂正:カンジャンのハングル表記が間違っていました。正しくは「간장

サムジャン(쌈장)

 サムジャンというのは初耳だったので、何に使うのか気になって韓国人の友達に聞いてみると、キュウリなど野菜につけて食べるそうだ。彼はカンデンジャン(강된장)という豆腐やねぎ、ニンニク、玉ねぎ、しいたけをコチュジャンで煮た料理をご飯と一緒に食べるのが好きらしい。
 さて、韓国の味噌「テンジャン」についてYoutubeで調べてみたが、一見すると見た目も味も日本のものと大差ないようで、実は作り方において日本のものと異なる点が一つあることに気づいた。
 日本の味噌や醤油の発酵に使われるのはコウジカビだが、これはニホンコウジカビ(アスペルギルス・オリゼー)とショウユコウジカビ(アスペルギルス・ソーエ Aspergillus sojae)というどちらもアスペルギルス属という真菌の一種、要するにカビである。
 しかし、テンジャンはこれに加えて枯草菌も使う。そう、あの納豆菌も枯草菌の一種である。
 コチュジャンやテンジャン・カンジャンの原料となる「メジュ(메주)」は茹でて潰した大豆を四角く成形し、藁で作った紐で結んで軒先にぶら下げることで発酵を進ませるのだが、皆さんもよくご存知の納豆も伝統的には稲わらを使って作られていた。
 韓国の味噌は納豆のような匂いがする場合があるらしいのだが、作り方を見てみるとこのように確かに納豆との共通点があった。
 この点、納豆菌を嫌う日本の味噌屋・醤油屋とは対極的で面白い。

★家畜化されたカビ? アスペルギルス・オリゼー

 以前も紹介したが、東アジアでは古くから「麹」ことコウジカビは伝統的な発酵食品に多用されてきたが、アスペルギルス属の中でもアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)なんかはアフラトキシンという猛毒を作り出すことで知られている(アフラトキシンB1は自然界でもっとも強力な発がん物質の一つらしい)。
 しかし、あるとき何らかの原因でアスペルギルス・フラバスに変異が生じてアフラトキシンを出さなくなり、我々はそれを発酵食品作りに利用し始めた。
 今日、日本人が毎日おいしい味噌汁を飲めているのもアスペルギルス属を「家畜化」できたおかげであって、もし何か少しでも歴史が違っていれば全く違うものが調味料として用いられていたかもしれない。
 実際、中国の臭豆腐や紹興酒、インドネシアのテンペを作るのにはケカビ、沖縄の豆腐ようを作るのにはベニコウジカビ(Monascus purpureusといって、アスペルギルス属とはまた違う)などの真菌が使われている。

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