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Eテレの番組『朝までラーニング!時間の正体』が最高だった件
Eテレで再放送されていた番組、
「朝までラーニング!10000分後、“時間の正体”を発表するエントロピー池崎」
を視聴した。
きっかけは、大橋 悦夫さんのツイート。
もう一回見よう、いやすでに脳内で「見つつ」あるw https://t.co/9Wng20zntO
— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) December 23, 2024
大橋さんはタスクシュート(タスク管理メソッド)を開発されただけあって、「時間」について深く思考されている方。
そして番組が思った以上に素晴らしい内容だったので、備忘録的にメモしておく。
番組の概要
メインで出てくるのは、芸人のサンシャイン池崎さん。
なぜかこの番組では「サンシャイン池崎」ではなく「エントロピー池崎」という名前になっていて、「時間の正体」を急に発表させられることになった……というストーリーで進む。
10,000分後に発表するため、時間に詳しい3人の先生に話を聞いて自分でまとめるという流れになった。
急に押しつけられた無理難題に、視聴者側も
「そんなん無理じゃん?」
とハラハラドキドキしながら深く学べる、という仕組み。
発表には3人の先生や研究室に所属する学生たちも出席し、内容を評価判定する。
さて、「エントロピー池崎」は一体どうなってしまうのか?
心理学(千葉大学・一川 誠先生)
まずは心理学的な話を、千葉大学の一川 誠(いちかわ まこと)先生に教えてもらう。
内容を大まかにまとめると、こんな感じ。
・時間には「物理的な時間」と「心の時間」がある
・時間は光や音と違い、知覚できる感覚器官がない(ほぼ「推測」!)
・心拍数などによって時間感覚が変わる
(代謝が激しいほど時間が長く感じる)
・時間感覚のズレの例
充実時程錯覚(イベントの数)
フットステップ錯視(色の濃淡)
線運動錯視(タイミングの違い)
上記の中には、割と有名な話もあると思う。
例えば「充実時程錯視」。
名前は難しいけれど、つまりこういうことだ。
人間は認識できる出来事の数が多いと時間を長く感じる
この文章は、友人のタナシンさんのnote記事からの引用だ。
彼は以前からこの話を知っていたようだ。
*
心拍数などによって時間感覚が変わる
(代謝が激しいほど時間が長く感じる)
というのも、なるほど納得。
例えば朝は代謝が低い(体温でわかるらしい)。
だから、時間が早く流れる感じがする。
特に私は朝に弱くて
「えっ! もう8時過ぎてる?!」
みたいなことが、残念ながら割とよくある。
その理由はこれかー!と分かり、すごく勉強になった。
あとは熱が高かったりサウナに入っている時に
「なかなか時間が過ぎないなぁ」
と思うのも、同じ理由だ。(朝のケースとは逆の考え方)
物理学(慶応義塾大学・松浦 壮先生)
次に向かったのは物理学の専門家のところ。
解説してくれるのは、慶応義塾大学の松浦 壮(まつうら そう)先生だ。
ざっくりすぎるけど、大体こんな話をされていた。
・時間とは現実を説明する「仮説」である
(物理は現実を説明する学問)
・時間は「物」の動きによってのみ見える
(時間そのものは見えないから)
・エントロピー増大の法則
エントロピーとは「散らばり具合」のこと(測れる)
・仮説の紹介
説1 ニュートンの「絶対時間」
説2 特殊相対論「時間と空間」はセット
説3 一般相対論「時間と空間と物」はセット(難しく、番組では省略)
・物理学は「これが時間です」と提示できるまでに至っていない
いやー、めちゃくちゃ論理的な話。
数字や物理が本当に苦手なので「全部理解した」とまでは行かなかったが、それでも噛み砕いて説明してくれているのがわかった。
*
私は宇宙について学んだりイメージしたりするのが好きで、相対性理論についてはここ数年で何冊か本を読んでいた。
といっても、専門書ではなく
『世界一やさしい~』
『誰でもわかる~』
『1番簡単な~』
みたいな本。
それらを読みながら、相対性理論を学ぼうと頑張っていた。
結果的に、特殊相対性理論のほうはなんとなーく
「説明されたその瞬間はわかる気がする」
レベルまで辿りついた。(それでいいんか?とも思うけど)
だが、一般相対性理論は難しすぎてお手上げ。
もはや「まぁいっか!」と思っている。
番組内でも「ここは難しいので省略」とされていた……
*
「エントロピー」の部分も面白い。
わかっているようで全然わかっていない単語だったから、扱ってくれてありがたかった。
死は「エントロピーが増大して無秩序になること」とも言えるそうで、私たちは必死にエントロピーを減少させようとしているらしい。
(低いエントロピーの食料を摂取することでエントロピーが低い状態を作り、生命活動を維持している)
こう聞くと、抽象的すぎる死が少しずつ具体性を増してきて、興味深い。
哲学(慶応義塾大学・平井 靖史先生)
最後に教えてくれるのは、哲学の専門家。
慶応義塾大学の平井 靖史(ひらい やすし)先生である。
簡単にまとめると、こういう話をされていたと思う。
・心の時間は「推測」、物理的な時間は「仮説」
……その両方を丸ごと考える
・心と物の二元論を「時間で」乗り越える
・MTS(マルチ時間スケール)
物だけでなく、生物(心)も時計である(心拍数、腹時計、寿命)
・持続=「時間クオリア(質)」
クオリア
……人間が内面で感じる、外から計測できないもの(思い・苦しみなど)
時間の内側に時間クオリアがある
・時間の見方
アスペクト: 未完了相(~ing)・完了相・完結相
時制(テンス): 過去・現在・未来
(未完了相の「時間の窓」から見ると、その時のことがありありと思い出せる。そうでなければ、点のように小さく見える)
・探求(答えが出ない問いを問い続けること)
未完了であることは喜ばしいこと
探求に答えがないということは、時間の本質を表している
人間はわからないことを祝福し続けている
答えが出ないのは楽しいこと
かなり抽象的なのだが、私にはめちゃくちゃ響いた。
特に、アスペクトと時制(テンス)についてはびっくり!
確かに英語文法で「現在完了」「過去完了」などを習った時に
「これって日本にはない表現だよね。ってことは、日本語を漫然としゃべっているだけではよく分からない "時間の捉え方"があるってことなのか?」
と考えたこともあったけど、すっかり忘れてた。
アスペクトという考え方、めちゃくちゃ面白いな。
調べたら色々なページが出てきて参考になるのだが、いかんせん私が正確かどうかを判別できないので紹介できず。
興味があったらご自身で調べてみてほしい!
*
もう1つ。
過去番組『Q~わたしの思考探究~』のVTRから切り取ってきた部分でも、哲学について話されていた。
植村 恒一郎先生(群馬県立女子大学教授・哲学者)の話をまとめた。
150年くらい前まで、人は街ごとに違う時間を生きていた。
そのうち鉄道ができ、時計を合わせるようになった。
でも、それはほんの最近の話。
客観的時間を信じすぎてもいけない。
時間には
「客観的時間」「主観的時間」「他者との時間」
がある。
自分の時間と他者の時間とが出会うと、濃密な時間になる。
「二人称の時間」であり、自分と他者との間に流れる時間。
相手と向かい合い、相手のリズムを合わせることが大切になる。
この話には聞き覚えがあった。
「あれ? もしかして、このnoteの内容に近いんじゃないか?」
と思ったのだ。
またしても、この方(タナシンさん)である。
「時間の豊かさについて、私より1歩も2歩も先に考えられているなぁ……」
と、いつも舌を巻いてしまう。
確かに人との時間はたいてい豊かだ。
仲間や好ましい人となら、なおさら。
私も誰かと対話するのがめっちゃ好きなので、心底同意する。
植村先生の話で言えば、
「相手のリズムを合わせることが大切」
という部分に目からウロコだった。
話を聞く時って、どうしても相手のリズムに合わせる必要がある。
「早く早く」と急かしていたら、ロクな会話にならないだろう。
うーん、深いし面白い!
自分の感想
もともと昔から、時間に興味はあった。
ただずっと苦手意識もあり、2年前に「タスクシュート」というメソッドに出会って色々学んでいるところ。
だからこそ
「時間を学術的に考えると、こういう切り口になるのか……!」
という感動があった。
いやー、ホントめっちゃ面白いな。
「時間の正体を説明するなんて到底無理でしょ?」
と正直思ったけれど、番組から多くのヒントが得られた。
皆に共通する見解はまだ無いことは分かったが、「時間」については人生をかけて追求したいものだと実感できた。
*
また、哲学の平井先生の
未完了であることは喜ばしいこと
人間はわからないことを祝福し続けている
答えが出ないのは楽しいこと
という言葉にも超感動した。
つい生きる意味についてゴチャゴチャ考えてがちだが、
「今ここに完了していない何かがあって、答えが出ない問いに向き合い続けられていること」
こそが素晴らしいこと……なのかもしれない。
*
ちなみに「時間の正体」についての発表は、池崎さんが頑張って上手くまとめていた。
さらに時間の長さについての渾身のギャグを披露していて、
「芸人さんってすご……」
とも思った。
めちゃオススメできる内容なので、もし今後また番組の再放送などがあれば視聴がオススメ!
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