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sudumeonly1
2023年11月29日 18:49
太陽が山の奥へ沈み始めると、急に風が強まって、幾分暑さが和らぐ。風の吹き荒ぶバックガーデンで、懸命に足を踏みしめて、荒れ放題のスイカ畑とサツマイモ畑を手入れする。ここ数日の降雨で草勢凄まじく、鎌を振る僕の右腕を砕いた。しかし、スイカ畑に時折顔を覗かせる小さなスイカの実が、僕の心を勇気づけた。風はいよいよ強く丘を吹き下ろすが、しかし、涼しいのは何よりである。平生
2023年11月26日 12:12
良い仕事は幾らでもある、重要なのは誰と働くかだ。働きやすい環境は良好な人間関係の上に成り立つ。良い人々に囲まれると、仕事の負担も幾らか軽減される。仕事と言うものは何時でも厄介なものだ。余り暑いので、時間を区切って小出しに外仕事をする事にした。僕の畑は少しずつ秋めいている。夏野菜の勢いは衰え始め、そろそろ、秋以降に採れる野菜苗の植え付け時期に差し掛かっている。ブロッコ
2023年9月14日 10:54
巨大な入道雲が透明なカンバスの大半を占有する。木枠に縁どられた我が家のリビングの一角は、天へ昇る黒々とした影の為にやや暗転した。遠景の山々に、夕立が来たのだ。それが緩やかにこちらへ向かってやって来る。山の天気は変わりやすい。そろそろだぞ、と思う間に、雲はやがて流れて行った。目の錯覚だった。余り巨大に発達し過ぎて、僕の視覚に錯誤を起こしたのだ。大して涼しくもない夕方、久方
2023年9月12日 11:44
木目の美しいテーブルに、一冊の本が置いてある。鮮やかな虹色の鳥の描かれた表紙。空色の背景。厚みは、そう、ほんの数センチ。よくよく見れば、それは本では無かったのかも知れない。何れにせよ、穏やかな午後の町に降り注ぐ豊かな陽光が、その表面を隈なく照らし、僕には特別の一冊に思えた。軽く息を吐くと、表紙をめくろうとして手を止める。色彩は違えど、小さな鳥の想起させる記憶の切なさが、僕の胸を激
2023年9月7日 10:11
森を下り、街路灯に沿って凡そ東の方角へ二十分ほど進んだ先に、そのカフェは佇んで居る。埃っぽく煤けた雰囲気の外観とは異なり、内装はカントリー調のウッディな造りで清潔に保たれている。店内は広々とし、その空間は良い木の香りのする数本の木柱によって仕切られていた。温かみのあるほの赤い電灯。至るところに青い黒板が貼り付けられ、店長お薦めの料理やアルコールがチョークでずらりと書き並ぶ。そのコン
2023年9月5日 12:08
朝、薄明るい光がカーテンの隙間より漏れ出でて、部屋の中がぼんやりと明るさを帯びて来る。徐にその光芒を見つめ、数秒の後えいやと威勢良く起き上がる。その勢いのまま窓辺へ擦り寄り、バサッと言う大きな音を立ててカーテンを開く。ガラス窓越しでも聞こえて来るのはひぐらしと小鳥の大合唱。それに微かな一番鶏の雄叫びも混じっている。絵付けの叔父さんところの雄鶏だ。闘鶏のように勇敢で、赤い鶏冠の立派
2023年9月4日 10:59
ある日の午後、心地良い微睡みから不図目を覚ました僕は、突然自らを失した。と言うのは、自分が一体誰であるのか、自分の居場所、周囲の環境と言った一切を失念してしまったのである。そんな馬鹿な、と言う批判は勿論であるが、しかし、実際に起こったのだから仕様が無い。僕も余り混乱しベッドで二回、三回と転がってみたものの、ぼんやりとした脳内に有益な情報は何一つ見つからない。それで落胆した挙句、唐突
2023年9月1日 10:39
美しい朝を迎えるはずが、目を覚ました先にあったのは雷雨だった。平生より幾分暗い寝室。木製のベッドを軋ませて起き上がると、夜の明けきらない窓辺へ擦り寄った。白いカーテンの隙間から、ぽつぽつと雨粒の当たるウッドデッキがぼんやりと見える。耳を澄ませば、ゴロゴロと遠く雷の轟く音が伝導してやって来る。窓を開ける自信無く、暫く外景を眺めていたものの、あわあわと大きく欠伸をすると、再びベッドへ仰
2023年9月1日 10:14
月光の差す窓辺で一人、遠景に並ぶ街路灯の明かりを眺めていた。美しい月夜だった。最も、満月には幾分早すぎる、上弦を少し越えたくらいの月であったが。それでも、随分と間近に迫っている事は分かった。平生の一・五倍くらい、大きくなった月が煌々と夜の闇を照らしているのだ。街路の外れは山の嶺に同化し、杉や檜の森が延々と続く。その手前も薄ぼんやりと明かりが見え、小さな集落を形作っていた。その