天の動乱
美しい朝を迎えるはずが、目を覚ました先にあったのは雷雨だった。
平生より幾分暗い寝室。
木製のベッドを軋ませて起き上がると、夜の明けきらない窓辺へ擦り寄った。
白いカーテンの隙間から、ぽつぽつと雨粒の当たるウッドデッキがぼんやりと見える。
耳を澄ませば、ゴロゴロと遠く雷の轟く音が伝導してやって来る。
窓を開ける自信無く、暫く外景を眺めていたものの、あわあわと大きく欠伸をすると、再びベッドへ仰向いた。
その時であった、地を揺るがす特大の雷鳴の轟いたのは。
それは鋭い光芒と共にやって来た。
そして、僕の鼓膜をつんざくように恐ろしい怒号を発して、何事も無かったかのように闇へ消えたのだ。
鼓動は一段と速くなり、全身の震えるのが分かった。
感じていた暑さを恐怖が上回り、僕は端無くも掛布団の中へ潜り込んだ。
そのまま息を殺して外界の音の遠のくのを待つ。
やがて、静かな眠りに落ちていった。
少し遅くなった朝食を頬張り、冷たい水出しのアイスコーヒーを飲み干す。
相変わらずの曇天の下、バックガーデンへ足を向けると、今朝の雷雨で何処もかしこも水浸しであった。
引っ掛けて来たサンダルはあっという間に水を含む。
気に留めずずんずんと、植物たちへ挨拶に回っていると、戻って来た頃には足が草まみれであった。
かぼちゃ、なす、ルッコラ、紫蘇、サトイモ、スイカ、トマト、ピーマン、ししとう、オクラ、みょうがに、ネギ・・・。
彼らはみな、明るく陽気に天へ向かっている、まるで今朝の動乱に感謝する如く。
彼らには、恵みの雨であった。
そして、久方ぶりの柔らかい日光であった。
昨今の炎天は彼らには少々酷であった。
雨粒を纏ったピーマンは『涼しい』と、体をいっぱいに伸ばした。
温く、心地良い風が流れ、バックガーデンを吹き下ろして行った。
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