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IT産業は「サービス業」

「IT業界」と一般に呼称される私たちの業界は、正式には「情報サービス産業」と言って、サービス業の1種として定義されています。もう少し詳しく言うと、私が現在所属している

 B2Bの請負開発中心としたソフトウェア開発会社は、

サービス業です。そうでなくても、第三次産業なのはご存知のことかと思います。まぁ、アンケートなどには存在せず、『情報・通信』『サービス』なんて分けられていると、前者を選択したくなってしまいますけどね。

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上記は「職種」などをコード定義している総務省の提供しているグラフとなりますが、グラフ自体は特に気にせず、グラフ下の費目を見てみてください。最も左端に、『情報サービス』産業が含まれていることがわかるでしょうか。

ただし、この業界を「製造業」と誤解している方もいらっしゃると思いますので予めてお伝えしておくと、業務モデルとして「製造業」的なモデルを採用している部分があるのもこの業界の特殊性に因るものです。しかし、基本はサービス業の1種であるということを忘れないでください。

そもそも製造業ってのは第二次産業です。農業や漁業、林業などをはじめとする第一次産業にて生成された資材を加工する産業に属します。IT産業のどこに第一次産業資材を加工する仕事があるというのでしょう。それに第二次産業にて製造された資材を用いてしか実現できな時点で、私たちの業務は第三次産業にしかなれないことは明白です。

 「モノ(無形物)をつくる」

という業務自体は事実として存在しますが、それはビジネスにおける最終ゴールではありません。あくまでビジネスを完遂する上で必要な手段の1つでしかないのです。少なくともB2Bの受注生産型ソフトウェア開発業において、ビジネス上の目的・目標は

 「顧客の課題を解決する(ニーズを実現する)」

ことであり、そのためにたまたまソフトウェア開発やシステム構築という手段を採っているにすぎません。その証拠に「とにかく言われたものを言われたとおりにただ作るだけで、それ以外は知らん」という姿勢をとってしまったらその時点で、どんなに高度な技術や知識を持っていたとしても、お客さまは発注したいと思わなくなるでしょう。つまり、「モノをつくる」以外にも発注条件があるということなのです。

さらに言うと、ガントチャートをはじめIT系の業務管理のノウハウはけっこう建築業界から引用しているものも多く存在します。大手ゼネコンの『多重下請け構造』も、元はと言えば建築業界の模倣に始まったものですしね。

IT業界(情報サービス業)がやや特殊なのは、「サービス業」色の強い企業と、「製造業」色の強い企業が混在している点です。ちなみに、日本では受託システム開発の売上がほかと比べて高くなっています。

これは、「対象とする顧客」で分類してみるとよく分かります。

「顧客」による分類では一般に、個人顧客を対象とする「BtoC(B2C)」、企業顧客を対象とする「BtoB(B2B)」、個人と企業の両方を対象とする「BtoBtoC(B2B2C)」という3つの軸を使います。インターネットサービスなどは両方と紐づくため「BtoBtoC」ということで中心に位置しています。

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私が属しているのは、このグラフで言う「受託システム開発」と呼ばれるB2Bの領域です。逆にパッケージ製品やサブスクリプションで自社サービスを展開している企業は「ソフトウェア開発」、B2BにもB2Cにもなれる企業です。

この業界特有の問題は「サービス業」というものをよく理解しないまま、開発プロジェクトを始めてしまうことです。ITエンジニアの世界に足を踏み入れる人の多くは、学生時代、「技術(=プログラミング)」をする業界だとなんとなく思っていた人も多いのではないでしょうか。

"技術力"をプログラミング能力だけだと思い込んでいると、システム開発全般のうちの"製造"工程しか完遂できません。これでは総合的な仕事として成立しません。

システム開発全般における"技術"とは、

 1. 顧客のニーズを正しく抽出する技術
 2. 抽出したニーズを実現する方法を整理する技術(知識)
 3. 抽出したニーズを実現する技術
 4. 実現した成果物が正しくニーズを満たしていることを証明する技術
 5. そして、それらの一連の流れが破綻することなく、安心して期日に顧客  へ届けられるようマネジメントする技術

これらを総称して"技術力"と呼びます。どれか1つでも欠けていると、システム開発全般に歪みが生じてしまうことになります。穴が開くと、大抵の場合「顧客満足度」が著しく低下します。さらに、無理を強いてなんとかさせようとすれば、関わるメンバーの「従業員満足度」が低下することになるでしょう。

サービス業の評価基準は、常に「満足度」という価値で表現すると、正しく測ることが可能です。つまり、

 「反復購買行動を引き出すことができるか否か」

が企業存続の命運を握っているということです。これが伴わない顧客対応や開発技術は、その存在価値はゼロにも等しいと言うことです。開発一つひとつが『プロジェクト』と言う期限付き活動である以上、プロジェクトになり得る仕事がいずれなくなれば、会社をたたむしかありません。ですから、次も依頼したくなる満足感が必要になってくるのです。

よって、情報サービス産業における品質も、納品後しばらくしてからの顧客や従業員の「満足度」が高いか低いかを見ればよくわかるようになっています。もしも、この評価が低い場合、それは必ず是正した方がいい部分になります。サービス業における「仕事」の機会損失は大別すると、

 ・機会はあるのに、受けられる要員がいない(量的or質的)
 ・満足度が低く、機会自体を与えられなくなる

のどちらかしかありません。

前者は、その企業の箱の大きさ(規模)にも依存するので、即改善することは困難ですが、後者は携わるマネージャーやリーダー、エンジニア一人ひとりが意識を高く持つことで改善することが可能になります。

満足度評価は、言ってみれば「自分たちの価値がどの程度か?」と言っているのと同義です(提供した製品の…ではなく、製品込みで自分たちの取り組んできた内容が評価されるわけです)。低ければ低いほど「価値がない」「二度と頼まない」と言われており、高ければ高いほど「価値が高い」「次もよろしくね」と評されています。

先にも言ったように、顧客の満足度だけではなく、従業員(含 外注)からの満足度も含めて、常に相手目線を意識しながら満足度を引き出すための技術力を磨き、仕事に取組めるようになる必要があります。当然、顧客とは"取引先"という箱を指すものではなく、取引先となる企業の"利用者"という人を指すものと考えなくてはなりません。

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