売れる味の商品を開発する方法とは。
宇宙一外食産業が好きな須田です。
前回からの続きです。
前回の記事の最後の方で、多くの方が新商品を開発する段階で最も重要なことを御存じないので、なかなかヒット商品が産まれない事実をお伝えしました。
この重要な要素を知らにばかりに、何度開発を行ってもお客さまに感動を提供できなくて、苦労しています。
その大事なこととは何か、それは「売れる味の開発」です。
前回の記事で、構成要素を分解して、それぞれの要素を別々に検証することと、最もベースとなる構成要素を決めてから、次の構成要素を検証することをお伝えしました。
いきなり商品の完成形を作って検証するのではなく、それぞれの構成要素の完成度を高めてから、組み合わせとしての商品を開発するやり方を紹介しました。
この段階で重要なことが、先ほどお伝えした、「売れる味の開発」なんです。
ラーメンを例えとして取り上げていたので、引き続きラーメンを例にして解説します。
前回の記事ではラーメンのスープがなんとなく見えてきたところです。
それに合わせる麺の検証を行っていました。
実際に完成候補のスープに、同じく完成候補の麺を合わせて試食してみます。
こっちの組み合わせの方がいい、この方がよりインパクトがある、先ほどのよりも今回の方がより特徴が引き立つなどと、感想を言いながら検証を進めて行きます。
そして、最終的に参加者の意見をまとめて、ベストな組み合わせを決めていきます。
この決める時の基準が「美味しい」です。
勿論「美味しい」は、「売れる」ことに直結しているから美味しさを追求した商品をベストな一品に決めました。
でも、ここに間違いは潜んでいることに、気が付きません。
勿論「美味しい」は重要な要素です。
でも、フードビジネスを考えるときには、もっと重要なことがあります。
それが、売れる味なのかということです。
不思議なことに、世の中の飲食店には、美味しい料理があふれています。
美味しくない料理に巡り合うことの方が、難しいくらいです。
ハッキリ言って、どこのお店に行っても、美味しいものに出会えます。
必ず出会えるとっても過言でないぐらいに、美味しい料理が日本においては蔓延しています。
ここまでの文章を読んで、頭の中に不思議な疑問がわきませんか?
なぜ、何処に行っても美味しい料理があふれているのに、繁盛している店とそうではないお店があるのか?
美味しい料理を提供すれば、繁盛するはずでしたよね、そのために時間と手間をかけて美味しい料理を作りあげたはずですよね。
自信を持って絶対に美味しい料理を作って来たはずです、ところが売れません。
あれほど真剣に向き合って作った料理が、全然売れません。
一度食べて頂ければ絶対にわかってくれると信じていた商品が、売れません。
いつか売れる時が来るはずと信じて、気が付けば三年過ぎていましたが、それでも売れていません。
それでも商品には絶対の自信があります、どのお店と比べても負ける気はしません。
でも、今日も売れませんでした。
世間には美味しい料理を出すお店があふれていますが、美味しい料理を出せば繁盛するはずだという考えもあふれかえっています。
一度食べて頂ければ絶対に違いを、美味しさをわかってくれると信じている、この考えもあふれかえっています。
でも、何回か来店して商品を体験してくれたあのお客さまが、気づけば数ヶ月間、来店していません。
これは、なぜでしょうか?一度食べて貰えれば美味しさが伝わりリピートしていてくれてたと信じていたにも関わらず、実際は気づけばもう数ヶ月もあのお客さまの顏を見ていません。
そうなんです、同じ考えと同じ現象があふれかえっており、そして同じ結果に満たされています。
何処のお店も集客に苦労している、どのお店も満足する結果を引き寄せることが出来ていないという事実です。
美味しい料理と売れる商品は、違うレールの上を走る電車のごとく、違う駅に到着します。
そもそもレールを乗り換えないと、望んでいる駅には到着しません。
それが、売れる味の開発です。
美味しい味は千差万別です。
でも売れる味は、いくつかのポイントに絞られます。
この違いを理解していないと、リピートする味の開発は出来ません。
繁盛するための売れる味とは、リピートしたくなる味です。
一口食べて美味しい味ではなく、また食べたくなるのか否かが、売れる味の基準です。
語弊を恐れず言いますが、美味しい料理はまた食べたくなるには、美味しすぎるんです。
美味しいは、いつまでも美味しいが舌の記憶に残る傾向があります。
しばらくは、そうですね30分とか下手すると数時間も、美味しい味が残っています。
ゲップをすると、その味が蘇ってきます。
あなたも経験があると思います、「ゲップしたらさっき食べた○○の味がしたわ」なんてことを言ったことが、きっとありますよね。
この「美味しすぎる味」が、売れる味に負けてしまう理由です。
多くの商品は、美味しすぎるんです。
須田は、また馬鹿なことを言ってるなと、訝しく思っている人が絶対にいると思います。
客観的に考えて、私自身もおかしなことを言っていると思いますが、ある事実を知ってしまうと、おかしなことの中に真実がありました。
美味し過ぎる味を体験すると、人は瞬時に飽きてしまいます。
そして、瞬時に飽きてしまうと、リピートするまでの期間が長くなってしまいます。
その結果、そのお店を忘れてしまいます。
その結果、再来店がなくなります。
再来店しない理由のトップが、お店の存在を忘れてしまったです。
そしてこの結果を知っている方がとる行動が、忘れられないために強烈な美味しさを提供しようということです。
そして、美味しすぎる料理を提供して、当然の結果として忘れ去られてしまいます。
本末転倒というやつです。
非常に興味深い傾向です。
売れる味とは、勿論、味のバランスを整えることは大前提で、それがあった上でのことです。
ある一定数必ず上げ足をとる人がいるので、前もってお伝えしてきますが、美味しくない料理を作れとも、バランスが悪くても大丈夫とも言っているわけではありません。
美味しさの“質”を説いているだけです。
結論をお伝えすると、売れる味とは、短時間で消える味です。
美味しかったなぁと回顧することが出来て、す~っと舌の記憶が消えて行って、心地よさだけが残る味のことです。
舌に、口の中に、胃袋に、いつまでも美味しい味が残りすぎる弊害は、満足しすぎること、その結果飽きてしまうことです。
満たされすぎると、リピート率が減るんです。
繁盛は、リピート率の高さが創り出す結果です。
繁盛店には、リピート客が多くいます。
常連もご贔屓客もいて、兎に角、多くの方がまた食べたくなる味を提供しています。
このようなお店に共通していることは、味のある一定の状態で留めていることです。
繁盛させるためには、味を追求しすぎていないことです。
弊社のすぐ近くに、いつも長蛇の列をなしている煮干し系のラーメン店があります。
ラーメンTRY対象では、煮干し系で、東京で1位を獲得したお店です。
同じく、鶏白湯系で1位を獲得したお店もあります。
美味しいラーメンには事欠かないところに弊社ありますが、この煮干し系のラーメン屋さんに初訪問した時に、店主の方と交わした言葉があります。
それが、「よくここで塩味を抑えることが出来ましたね、勇気のいる決断でしたでしょう、もっと強く個性を出したくなりませせんでしたか?それを振り切ってよくここで抑えましたね、素晴らしい完成度ですね。いや、本当においしかった、押し付けてこない旨味がありました」と。
これをお伝えした時の店主さんの、物凄く嬉しそうな表情うぃ今でも忘れられません。
今や人気店となって、簡単にお店に行くことも出来なくなってしまいましたが、想定通り行列店になっています。
連日スープが売り切れて14時まで空いていることは無いぐらいに、繁盛しています。
彼が出店するまで、3軒のラーメン屋さんが営業していましたが、そのどれもが撤退した場所で、彼だけが行列を成しています。
その原因が、美味しいけれども、その旨味が短い時間です~と消えることです。
長くいつまでもとどまることなく、消えてくれて美味しかった記憶だけが残ります。
この記憶こそが、リピートを創り出す一番の重要な要因です。
これまでも何度も美味しいは、食べ慣れた味であること、美味しいは記憶の産物であることをお伝えしてきましたが、記憶にとどめるために一番有効なことは、舌に残る味の痕跡が、短時間で消えることでした。
この事実を多くの方は知りません。
その結果、今日も美味しいの追求に明け暮れています。
お客さまをリピートさせて繁盛するためには、舌に残る味の記憶をいかにして短時間に消えるような味を開発するのかです。
その為には、美味しすぎる味はダメだということです。
ある特定の個性のみを強く打ち出し、それ以外の要素は逆に引き算の効果を発揮するようにしないと、売れる味にはなりません。
売れる味とは、ある特定の個性が際立っており、それを際立たせるために引き算の要素が盛り込まれている、バランスがとれている商品です。
分析して表現することは比較的簡単ですが、このような商品を実際に開発するのは非常に労力が必要です。
ですから、完成された商品をいきなり作るのではなく、構成要素を分解してそれぞれの個性を際立たせてから、完成形にまとめ上げることで、売れる味の商品は創造できますと、お伝えしております。
これまでとてつもない数の商品開発を行って来たからこそ、到達できた領域です。
是非、売れる味を開発する為に、商品コンセプトとメニューコンセプトを策定し、味の設計図をつくり構成要素ごとの集品開発法を導入してください。
実際、この過程をとる方が、短時間で売れる商品を創り上げることが出来ます。
何度かチャレンジをすることで、売れる味とはこういうことなのかと、必ず理解し到達することが出来ます。
是非やってみてください。
売れる味の商品が出来上がったら、次は売るためにメニューブックにどのように表現すると、一番効果を発揮するのかを、次回の記事で解説します。