飲食業はまだまだ儲けられる商売です。「利は元に有り」ただ儲け方を知らない方が多いだけです。
宇宙一外食産業が好きな須田です。
先だって、現在新業態開発をサポートさせて頂いているクライアントに、改めて原価の出し方を聞いてみました。
と言うのも、そのクライアント先に在籍していらっしゃる古参の料理長に、在る商品の原価を問い合わせたところ、想像以上に高い数値をお話しされました。
そこで、「随分と原価を掛けていますね。 だから人気商品なんですね。 でも利益率はすこぶるよろしくないですね。」と、お伝えしたところ、
「原価なんて出したことが無いですよ! 勘で喋っただけで大体ですよ。 この会社にきて30年、原価なんて一回も出したことが無いですよ!」と、驚愕することをおっしゃいました。
程なくして、この料理長が自店に戻られたので、経営者に伺いました。
「原価管理はいかようにやられていますか?」と。
すると、各店舗それぞれですが、会社として統一したやり方は行っていないというものでした。
各店それぞれでも良いので、私が担当しているこの業態の現在の商品の原価リスト、もしくはレシピを拝見したいとお伝えしたところ、この店には原価リストもレシピ集も無いと告げられました。
正直なところ、この話を聞いても私自身は、驚くことはありませんでした。
何故なら、このクライアントに限らず原価を出していない経営者・飲食店は想像以上に多い事を知っているからです。
もっと正直に話すと、原価を出していない飲食店の方が絶対的に多いと思います。
その結果、どの商品を売ると儲けられるのか、どの商品が売上も利益も獲得しているか、どの商品が損をしているのかを理解しないままに、何となく商売を行っているのが実態として多いのが現状です。
この現状を嘆く気も全くありませんし、非難する気もありません。
ただ、実情として把握しているだけです。
在る側面で見るとマイナスに感じられるかもしれませんが、違った側面では、このような現状であったとしても多くの飲食店の経営が成立し、多くのお客様に幸せを提供している実態もあります。
違う観点で表現すれば、伸び代がまだまだ存在していると言えます。
常にマイナスの要素の中には、プラスの要素が隠されています。
一見すると原価を出していないということはマイナスに感じられますが、それでもお客様には喜んで頂いており、会社も利益が残っています。
この状態から、原価をキチンと知ることで、更に効率経営が出来るようになります。
ですから、伸び代があると表現しました。
さて、そんなこんなで、このクライアントのグループLINEに、改めて原価の出し方をご存じかどうか問い合わせたところ、メンバーのどなたも「理解しています」「正しい方法を知っています」と、表明出来る方はいらっしゃいませんでした。
これまで、会議をするたびにそれぞれの商品の原価率のことを何度も聞いてきましたが、この質問に対する答えの全ては、あてずっぽうの勘でしかなかったことが判明しました。
そこで、オンラインで原価計算方法をお伝えすることとしました。
その前に、何故原価計算の計算式を知らないのか?という疑問が湧いてきます。
これまで、サポートさせていただいたクライアント先で、同様に原価の出し方を知らない料理長も経営者もたくさん存在していました。
そもそも原価の出し方を知らない、原価率の計算式を知らない、原価の重要性は頭では理解しているが、それを実行すること導入することは面倒でやって来なかったという方が圧倒的です。
理由は、単純明快です。
経営に関することは、誰も教えてくれなかったからです。
調理人は、調理の方法は教えられますが、その多くは原価の出し方を教えられていません。
それを教える立場の親方が、原価を出す方法を知らない場合がほとんどです。
経営者も、原価を出すのは現場の仕事と思っていますから、調理人が出した原価を鵜呑みにして信用してしまいます。
よもや、調理人が原価を出していないとは夢にも思っていません。
でも、これは本当にあったお話しですが、私がある商品を見てざっと暗算で原価を計算した数値と、料理長が言う数値にあまりにも大きな差異があるので差異の理由を伺ったところ、冒頭の料理長と同様に大体の感覚ですと言われました。
同様の経験は何度もあります。
大体の感覚で原価を出しているその理由を聞いたところ、それぞれの商材の仕入れ値が変動することを理由におっしゃる方が大半です。
だから原価なんて出しても意味がない、変動するから出したとしても机上の空論で全く現実とは連動していないから、出す必要が無いとおっしゃる料理長のなんと多いことか。
変動するからこそ、原価が上がった際にその商品ではなく、より利益が確保できる商品をおすすめすることが大事なのですが、そこまでの考えには至ってくれません。
それを伝えたところで、言葉尻を取って攻撃されたと取られるのが落ちです。
なので、何が正しいか誰が正しいかの無駄な議論をする前に、原価の出し方をお伝えし、全商品の原価額と原価率を明確にすることを優先することにしています。
知らないから出来ないやっていないなら、お伝えして出来る状況を作り出せば良いだけです。
さて、ここから本題です。
この記事を読んでいるあなたは正しく原価を出す方法を知っていますか?
もしご存じないのなら、この記事で覚えてください。
先ず、ある商品で使用する食材をリストアップします。
食材全てです、肉も野菜も調味料も含めてすべてを出してください。
次に、それらの食材の使用料を出してください。
グラム数やml・㏄などの量を出してください。
次に、それらのパッケージの量と仕入れ値を出してください。
1キログラム単位で仕入れ値を決めているのか、2リットルのボトルに入っているのか、それぞれ基準値が違います。
量と仕入れ値が把握出来たら、その金額を㎏やリッター数で割り算をしてください。
例えば、ある商材が1キロで1000円だとすると、1000円÷1000g(1キロ)という計算式に成ります。
この例ですと、1000円÷1000g=1円となります。
この商材は1グラム 1円と把握できます。
この商材を仮に50グラム使用するならば、50グラム×1円=50円となります。
これと同様の計算を、全ての材料で行っていきます。
でもこの例は調味料など、容器に入っている全ての材料を使いこなせる場合の出し方です。
肉や魚、野菜などは皮を剥て使用します。
これらの商材を買う時は、キロ単価幾らと言う価格基準で買います。
牛肉なら、1キロ3800円などという感じです。
この1キロ幾らなのかは、多くの調理人が知っている情報です。
何故なら食材業者さんがキロ幾らですと、口頭でもしくは見積書で伝えてくれるので、基準のようなものは知っています。
問題はここからです。
仮に1キロ3800円の牛肉を仕入れたとしても、その枝肉の全てを使用することは皆無です。
当然商品とするためには掃除をして、使えないところをカットしていきます。
枝肉で5キロあったとして、15%が掃除の結果捨ててしまうこととなったとすると、実際は85%としか商品として使用できなかったということです。
すると、計算方法は、少しややこしくなります。
1キロ3800円のところ、85%しか使えないので、実際は1キロの85%、850グラムの肉を3800円で買っていることになります。
これを歩留まりと表現します。
この場合、歩留まりは85%です。
ですから、計算式は、3800円÷850グラムと成ります。
すると、1グラム4.47円となります。
1キロ3800円ならば、1グラム3.8円だったのが、歩留まりの結果約4.47円となってしまいます。
1グラム当たりの仕入れ値のアップ率は17%になります。
15%捨てただけのはずが、実際の原価額のアップ率は17%となります。
この数値の違いが、原価と利益に大きく影響を及ぼします。
この数値の違いが、1商品で100グラム使用するなら、380円が447円と成ります。
この商品が1日10食出ると、その差額が67円×10食=670円となり、1年では244,550円となります。
店舗の営業における利益率を10%と仮定するならば、244,550÷10%=2,445,500に相当する売上を獲得しなければ獲得できない利益額となります。
歩留まりの計算を間違えると、年間244,550の利益差が発生し、売上に換算すると250万弱の売上額に匹敵することとなってきます。
250万円以上多く売上を獲得しなければ、利益を残せないということです。
この歩留まり原価の違いを知らないと、本来年間で25万程度の利益が残るはずが、実際には全く残っていないということが起きてしまいます。
たった一つの商材で25万の差異が、勘違いによって消えていきます。
この違いを把握出来ていない商材の数だけ、利益はゴミ箱に捨てられています。
ですから、正しく原価を算出することは、非常に重要になってきます。
これが、飲食店が利益を出せない体質になってしまっている根本原因です。
正しい原価の出し方を知らないから、儲かっていない商品を販売してしまっている、残るはずだと思っている利益がゴミ箱に捨てられていることとなります。
掃除した食材はゴミ箱に捨てられます。
それは、現金を捨てているということです。
だから、利益をゴミ箱に捨てているということになります。
今回はここまでにします。
文字数が沢山になってしまいました。
一度に多くの知識を詰め込むことは、得策では無いので続きは次回にお伝えします。
商売の原理原則は、「利は元にあり」です。
誰もが知っていることですが、これを実践している飲食店の方はまだまだ少ないのが現状です。
これらを知ることで、絶対に商売が面白くなってきます。
必ずそうなります。
そうならなかった経営者も現場の担当者も、これまでに一人もいなかったから断言できます。
飲食業はまだまだ儲けられるビジネスです。
現在多くの飲食店は、儲けられるビジネスモデルになっていないだけですから、ビジネスモデルを変革するともっと儲けられるビジネスになります。
是非そうなってください。