ポップコーンを食べながら126分 / 「ミッドナイト・ラン」
ロバート・デ・ニーロは1987年に映画「アンタッチャブル」でアル・カポネを演じた後、次回作はコメディに出演したいと希望したという。ギャングやマフィアの役ばかり演じることに飽きたのだろう。それが1988年のコメディ映画「ミッドナイト・ラン」だ。何も考えずにポップコーンを食べながら楽しむことのできる"ポップコーン映画"の佳作である。
物語は主人公の賞金稼ぎウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ)が、ギャングの会計役デューク(チャールズ・グローディン)を連れてくるように頼まれることから始まる。ウォルシュはデュークをニューヨークであっさり確保し、ロサンゼルスに連行しようとするも、ここからドタバタのトラブルが続く。FBI捜査官から他の賞金稼ぎまで登場し、ウォルシュはデュークを連れて必死にロサンゼルスを目指すものの、やがて2人の間には奇妙な友情が芽生えるーー、というロードムービーでもあり、"バディもの"でもある。こういう筋書きを嫌いな人はほとんどいないだろう。
ロバート・デ・ニーロはこうしたコメディも似合う。演技力のおかげだろう。「アナライズ・ミー」や「世界にひとつのプレイブック」「マイ・インターン」など、コミカルな役を真面目に演じているデ・ニーロの方が僕は好きだ。
しかしロードムービーというジャンルを名付けることに意味があるのだろうかと思うほど、世界中の物語は「ドン・キホーテ」から「勝手にしやがれ」までロードムービーだらけである。そもそも「オデュッセイア」からして旅物語だ。人は移動しながら何か新しいことを感じ、成長していくものだろう。だから旅はいつでも楽しい。
126分と少し長めの作品だが、それを感じさせないほどドタバタしっぱなしである。マーティン・ブレスト監督の手腕もあるだろう。ブレスト監督は本作の4年後に「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」を撮った。
この年は明らかに「許されざる者」ではなく「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」が作品賞に相応しかった。ブレスト監督は1998年に「ジョー・ブラックをよろしく」を監督している。この作品についてはいずれ取り上げようと思っている。