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カリフォルニアで本屋を作る #3 シェア型書店

前回の続き。

本屋をはじめようと思った流れとして、
今日はその②の「シェア型書店への参加」を記します。

① スコシフというブックユニットを友人と作ったこと。

② そのスコシフ名義で「シェア型」の古書店である「猫の本棚」(神保町)で一つの小さな棚をお借りして、小さな本屋さんをはじめてみたこと

③ カリフォルニアで結婚をして、パートナーが一緒にやろうと僕の背中をおしてくれたこと

猫の本棚さんの玄関


東京は神田神保町にある古本屋さん「猫の本棚」は、
空間プランナーの水野久美さんと、映画監督であり映画評論家の樋口尚文さんとで共同経営されている。

猫のロゴがなんとも印象的で、お店玄関の青い扉を開けると、辺りのビル街の景色がふと視界からも記憶からもなくなり、アンティーク調の本棚空間があらわれる。

猫の本棚は「シェア型書店」と呼ばれる古本屋さん。

ユーザーは本棚の棚を一つ借り、
自分のアイデアの詰まった小さな本屋をはじめることが出来る。

棚のサイズは縦35×横30×奥行30cm。
大体10-20冊ほどの本が入るって、棚は4,400円/月(税込)で使用できる。
棚を借りる人・団体は「棚主」と呼ばれる。

前回からの流れもあって
僕ら「スコシフ」で、猫の本棚さんの棚をお借りすることにした。

お借りした棚。本を入れる前

棚主として棚の内容・企画を考えるのは実に楽しい。

スコシフでは、
カリフォルニアと東京で見つけた・読んだ本をテーマや特集で縛って、
おススメしていこう、という話になった。

スコシフには専門分野などないので、雑食本屋を最初から標榜していて、
これまで本棚での特集テーマもフワッとさせている。

「贈りたい本」
「冷やし本」
「食の本」
「タイトルしりとり」などなど

第1回の「贈りたい本」


棚という実際の場所ををもったことで、アヅミさんとの放談が企画会議らしきものにも変わり、楽しみ方の解像度もぐっと上がった気になる。


では、スコシフ的にシェア型書店の何が一体何を面白いと感じているか?

本屋になれること

まずは、やっぱり
「本屋になれる」
という本好きの夢がが叶うところ。

他の棚主さんの棚

こういう場所が成立することに喜びを覚えた。

自分で本棚を借りて企画することも楽しいけれど、
そもそも、僕みたいな人間は、
本棚のある風景が世界に増えていくこと自体が嬉しい。

このシェア型本屋というスタイルはきっと増え続けるだろうとも直感した。

そして「本屋さんになろう」とする人を増やすことにもつながるだろうとも。

僕もまた「本屋さんになろう」という人の一人だ。

いつかスコシフでもやりたい企画、三題噺(さんだいばなし)。
元は閉店してしまった素敵な本屋さん・日比谷コテージさんの企画棚。

おススメ品のセレクトショップ


本読みは本を読む、映画好きは映画を見る、演劇好きは演劇をみる、そうした日常のなかで時に素晴らしい作品に出合う。

あまりに素晴らしい読後感の場合、人というものは不思議なもので、その感動を誰かに伝えたくてムズムズする。

それが「おススメ」というやつだ。

シェア型書店は読まなくなった古本を置くための場所では決してない。

棚主は申し込みの時に企画の内容を前もってお店に伝える。

棚主は自分の棚(店)の性格、コンセプトや企画に沿って本を選んで棚に置くから、いわば棚主ごと独自のジャンルがあるようなもの。
そしてその独自ジャンルの中でそれぞれのおススメの本が選ばれて並んでいる。

僕等はそもそも誰かのおススメを見たり聞いたりするのが好きだ。

ユニークなセレクションの本屋が密集する

そして、
猫の本棚さんの参加者は、映画監督、ライター、漫画家、落語家、高校生、自費出版、音楽レーベルの方などなど多様な方々が並べる本棚はまさに色とりどりで、ジャンルが違う本でも親しみやすくなる。

僕も訪問する度に、今まで知らなかったことを知るような発見があり、やはり楽しい。

スコシフのしりとり本。右からタイトルでしりとりできる。

遠く離れていても

そして、これは個人的な感覚となるけれど、
僕のようなカリフォルニア在住の人にとって、何より日本で訪れる理由が場所が増えることはとても嬉しいし、それが本屋であればなおのことだ。

実際の棚の手入れなどは東京在住のアヅミさんが世話していて、
カリフォルニア在住の僕は年に一度か二度か訪れるだけ。

日本にいる時間も限られているから、参加している他の棚主さんにほとんど実際にはお会いしたことはないけれど、なんとなくゆるいコミュニティに所属している気持ちにもなるのもいい点だ。

またアヅミさんから、たまに伝えきく他の棚主さんの本棚のエピソードを聞くのも楽しい。

猛暑に冷やし本

さて、次回は引き続き、猫の本棚でのお話。
棚主になったことで経験したちょっと不思議なエピソード
「武満徹の本」の話を書きます。



場所について、少し余談。

先日、日本へ行った折に
京都のカフェ「Cafe Kocsi (カフェ コチ)」へ行った。

12-13年振りだった。
京都は15年住んだけれど、コチで良く僕は本を読んでいた。
カフェ店内には本棚と本が並び、座り心地のよい椅子やソファが沢山あった。

カフェコチ内には本棚と本が沢山ある

そこは僕にとって「本を読むことができて快適な場所」だった。

僕は店員さんと必要以上に話さなかったと思う。
それにココア1,2杯かそこらでだらだらと愛想もなく本を読んでる嫌な客だったはずだ。

昔通った場所の多くは無くなっていたり、様変わりしているしている中でコチはまだあった。

僕は当時と違って京都に住んでいるわけでもなく、
なんだったら日本には住所があるわけではない。
僕は日本では親族の家に泊まる以外はホテル暮らしとなる。
そのような条件だと、
だんだんと昔住んでいた場所もよそよそしくも感じたりする。

でも、帰り際にコチの方から
「昔よく来られてましたよね」
と話しかけられた時、

急に昔のように京都の身近さが蘇ってきて、
コチという「場所がある」ことが嬉しく思った。



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