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「Fish in a Tree」by Lynda Mullaly Hunt / レビュー
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Fish in a Tree
by Lynda Mullaly Hunt
【作品情報】
ジャンル:ミドルグレード(10~12歳)以上
#フィクション #成長物語 #リアリスティックフィクション
出版:2015年(Nancy Paulsen Books)
受賞:シュナイダー・ファミリーブック賞、他
ISBN:978-0142426425
キーワード:読み書き、教育、障害、家族愛、教師、ディスクレシア
【あらすじ】
難読症の少女の成長を描く物語。主人公Allyは読み書きが大の苦手で、そのことを誰かに知られることを怖がっている6年生の少女。学校では劣等生扱いされ、先生にも受け入れられず、いじめっ子の目を引いてしまうが、アートの才能は誰よりも長けている。彼女は授業中、文字が読めないことを隠すために突拍子もない行動をとることもあり、周りからは問題児扱いされている。
ある日、今までの先生とはどこか違う寛容なDaniel先生がAllyのクラスの担任として着任してきたことをきっかけに、Allyの学校生活は一変していく。
【感想】
中盤になるまでAlly自身も先生もクラスメイトも、ましてや母親も兄も、彼女が読み書きができないことを知らず、Allyは苦しい学校生活を送っていますが、Daniel先生の力によって少しずつ流れが変わっていきます。Daniel先生の洞察力と対応力が心強く、とても前向きな気持ちにさせてくれました。物語の起伏は穏やかですが1枚ずつ覆われた皮を剥がしていくような、そして最後にピカリとまぶしい一筋の光を照らされているような魅力を感じる作品です。困っている子を取りこぼさないために親や教師が読むべき必読書ともいえるかもしれません。
(以下ネタバレ含みます)
最後まで読んだあと物語の構成について余談的な考察ですが、作者は序盤でAllyが読み書きが苦手な理由を読者にだけ伝えているのがすごいなと思いまsした。ただ「文字が読めない」だけではなく「文字が踊るように動いて見える」とか「紙面のコントラストがまぶしい」のようにAllyの心の声で言わせているので、読めないのは知能ではなくて何かしらの障害のせいかもと序盤で読者は感じます。でも、Ally自身は誰にも言っていないので周りは誰も気づかず、レッテルを貼られた状況が中盤まで続いていくのでAllyの心苦しさもDaniel先生の計らいのありがたみも直に伝わってきて、すごく効果的だと思いました。
【訳書情報】
邦題:「木の中の魚」
著者:リンダ.マラリー・ハント
翻訳:中井 はるの
出版:2017年(講談社)
ISBN:978-4062832441