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「THE DAYS」 - 20110311〜極限の状況があったこと、今も続くことを私達は知っているのか
★★★★★
2011年3月11日。三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震に伴い東京から225キロの位置にある福島第一原発を高さ15メートルの大津波が襲い、波に飲まれた4基の原子炉。冷却機能を失い、暴走を始める発電所… 人類がかつて経験したことのない危機に全てを投げうって立ち向かう東電の職員たちや自衛隊員、協力企業の人々の決死の闘いの日々を入念にリサーチし描いた実話を基にしたドラマです。
内容の詳細は説明するまでもないかもしれませんが、正直なかなか観ようと思えない作品でした。震災のときにテレビを通して見ていた福島の様子は画面越しでも苦しいものでした。現地の人々のことを想像し、自分の部屋で明かりを消して過ごすほかにできることが何もない感覚。これだけ電気を使って生活しているにも関わらず原発をとても遠いものに捉えている自分。そして、自分は安全な場所にいる事実。原発の現場で誰かが文字通り命懸けの作業をしているとは知っていても、どうしてもニュースの中の事象でした。なのでドラマとはいえそのときのリアルを目の当たりにするのは勇気がいると思ったのです。渡辺謙の「Fukushima50」も未見でした。
一度、旅行で仙台からいわきに行った際に、まだ新幹線が再開していなかった関係で避難区域をバスで通過したことがありました。バスの窓を開けることは許されず、本物のゴーストタウンと化した町並みを目の当たりにして少なからず衝撃を受け、知らないことは所詮想像すらできないものなのだと実感した記憶があります。
このところ福島原発の処理水海洋放出のニュースが外国で懸念を持って報じられていながら日本国内ではあまり積極的な情報として上がってこないなと感じたこともあり、やはり自分が進んで知ろうとしなければ分からないものだらけなのだと思い、まずは伝えることを目的に作られているドラマを観てみることにしました。
エンターテインメントとして観ていないので面白いかどうかという感想では必ずしもないのですが、想像の何百倍も厳しい状況だったのだろうと、そして本当に美化でも冗談でもなく命を懸けて国や土地や人を守るために現場の人々が闘っていたことを感じることができました。思いを馳せることもせず与えられた平和の中でぬくぬくと暮らすより、少なくとも得られる情報は自分の頭で知るほうが、平和の価値も分かる気がします。歴史の教科書の出来事ではなく、自分もリアルタイムで経験したはずのことなのでなおさらです。
役所広司、竹野内豊、小日向文世、小林薫… 役者陣の演技は言わずもがな素晴らしいと思いました。本当に贅沢。もちろん役者を介することでデフォルメされる部分、エンタメ色が加わる部分はあるのですが、極限の状況の人々をドキュメンタリーさながらの緊迫感で最後まで見せきっています(官房長官役の井上肇は見ていて当時の枝野さんが多分にチラつきました)。
なるべく英雄譚のようにせず事実を率直に描いている作品のようですが、それでいいのだと思います。それでも心に刺さって痛かった。震災と津波、そして原発の暴走というあまりにも巨大な何かを前にして、小さな人間の利害や駆け引きほど無意味で無力なものはありません。究極的な目的を共有し全員で死力を尽くす様子がひたすら描かれる本作。それがほんの十数年前に実際に起こったことだという事実。事故の後始末は今もまだまだ終わっておらず、現在進行形で問題を生んでもいるわけです。この先も生きていく人間として知らずにいてはいけないものかもしれません。
追記:「Fukushima50」も観ました。映画なのもあってか比較的ドラマチックに仕立てられており、尺が短い分やや説明的な印象。役者陣もより演技的な演技をする人々なので面白さを求めるならこちらが良いかもしれませんが個人的には「THE DAYS」のほうがしっくり来ました。やはりまだ物語として見られるほど時間が経っていないのだと思います。
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