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1100年を誇るたぷたぷグルメ、上海小籠包発祥の地「南翔」
せいろのフタを開けたらモワッと上がる湯気の奥に、ちょこんと座ってつややかに蒸された小ぶりな肉饅頭。薄く半透明の皮に包まれた、たぷたぷのスープが口いっぱいにじゅるんと広がるキングオブ上海グルメ、小籠包。もう今この数行の時点で美味しそうだ。
日本でも人気の高い小籠包だがその歴史はかなり長い。北宋時代(960〜1127年)に誕生し、清代の江南常州府(現在の江蘇省常州市)で現在の形式に変化したとされる。その後、江南地域一带の常州、無錫、蘇州、南京、上海、杭州へ広まり、各都市で独自の発展を遂げ現在の小籠包となった。実に1100年の歴史を誇るたぷたぷグルメなのだ。※諸説あります
今回はその中から、上海小籠包の発祥とされる「上海南翔小籠包」を紹介しようと思う。これから美味しそうな写真が何度か登場するが、空腹状態でご覧になる方は胃の寂しさにブーストがかかるので覚悟しておくがいい。書いている私も空腹なので痛み分けだ。
上海小籠包発祥の地「南翔」
上海中心部から北西の郊外に位置する小さな街「南翔」。 水郷の景色も楽しめる古鎮としても人気の高い観光スポット「南翔老街」だが、多くの観光客のもう一つの目的は、ここで味わえる「南翔小籠包」でもある。
平日昼間は世間話や散歩コースにお昼寝ベンチなど、地元民の憩いの場として愛されており、観光地っぽさはあまり感じられず生活感丸出しである。
自慢の観光スポットでもある水郷で釣りを楽しむぐらい人々の生活はのんびりしている。観光収入より今夜のおかずだ。
とはいっても南翔老街内部はしっかりと商業化されており、軽食や民芸品屋がずらりと軒を連ねる。土日ともなれば雰囲気は一変し、昼間でもしっかりと観光地としてにぎわっている。観光地気分を楽しみたいのであれば土日に、のんびり廻りたいのであれば平日がおすすめだ。
その老街内のお店で上海料理を楽しみながら、南翔小籠包も注文できるお店がいくつかある。
石畳やカンフー椅子などナチュラル素材でまとめ上げられたノスタルジー感あふれるレストラン。従業員のおばちゃんは腰掛けてスマホに熱中しているがサボっているわけではない、待機しているのだ。
田鰻の炒め物、白魚の卵焼き、枝豆の糟鹵漬け、冷製羊肉
豚肉の細切り揚げ、キンキンに冷えた雪花ビール
冷えたビールを片手に上海料理を楽しんでシメは南翔小籠包。スキンケア業界が羨むほどのつややかな皮がたまらなく美しい。しかも安い、料理はどれも日本円にして数百円程度。おばちゃんはこの価格とクオリティーを維持するために、待機してエネルギーを蓄えているのだ。私のようにただスマホでサボっているわけではない。
鎮ぶら pic.twitter.com/pfLVQuAhxB
— すーがー@啥啥啥上海 (@suga_ta1231) July 23, 2020
夜はライトアップやお店の明かりで見応えアップ。
南翔小籠包発祥の店「古猗園餐廳」
発祥の地まで来たのだから、発祥のお店に行ってみたくなるのが人間の探究心というもの。日を改めて上海南翔小籠包発祥のお店とされる「古猗園餐廳」へと足を運んでみた。
先程の「南翔老街」から徒歩15分ほど、南翔小籠包の発祥とされる「古猗園餐廳」がある。南翔小籠包は清代に菓子屋「古猗園」の店主である黄明賢が「古猗園南翔小籠」として売り出したのが始まり、その後は豫園など上海中心部でも「南翔饅頭店」として出店を行い、創業から100年以上の歴史を有するお店となっている。
土日は開店早々に駐車場が埋まるほどの人気だが、やはり平日昼間は空いている。建物の造りが古いためか全体的に薄暗い店内で、ペプシの冷蔵庫が最も輝いていた。クラシックな窓枠から差し込む光が雰囲気を更にかき立てるが、いかんせんペプシがまぶしい。
注文してからすぐ小籠包が出てきた。前回の小籠包に比べてやや小ぶりで、皮は厚くスープも少ない、想像していた小籠包とは差があり、もちろん美味しいのだがやや拍子抜けした。あの「雪見だいふく」だって発売前年には、お餅ではなくマシュマロで包まれていたのだから、きっと元祖とはこういうものなのだ。
価格は豚肉小籠包が15個/30元、蟹身小籠包が10個/30元。日本円で約511円、上海の小籠包の相場としては決して安くはないが、日本で食べるよりはよほど安いのだろうか。
※2021年8月12日時点でのレート 1元=17.03円
店内で食べるものと同じ価格で、自宅で蒸せるお持ち帰りパックも販売している。郊外の立地や行列を気にせず元祖小籠包が食べられるのだから、お土産として大変喜ばれる。
竹籠に乗った状態で販売されているので、そのまま蒸し器に入れてもいいが、ひっつき防止にクッキングシートを敷いた方が楽かもしれない。ちょっとの手間でさらに美味しく、と思ったが味は変わらない。それっぽいことを言ってみたかっただけなのだ。その変わらぬ美味しさが自宅でも楽しめるのだから嬉しい。
以上、上海元祖の小籠包はいかがだっただろうか。上海市中心部から30分ほどで到着するので、もしも上海旅行の際に日程に余裕があれば組み込んでみても面白いかもしれない。上海周辺の「朱家角」や「周荘」など他の水郷古鎮に比べれば、老街の規模では思い切り負けてしまうが、元祖小籠包という唯一無二の武器を持っているのが南翔なのだ。武器を持ったおばちゃんが皆さんのために待機しているので、思う存分食べて楽しんでいただきたい。