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「イノベーション統一理論⑪~「梅澤理論」(未充足ニーズ理論・CAS理論など)と「ジョブ理論」のプロ・コン〜システマティックでダイナミックな梅澤理論

さて、商品価値観点の理論と同様に生活価値観点の理論の比較もしておきます。しかし、前回の記事でもはや明らかなように、梅澤理論に準拠したALIやCASによってジョブ探索をした結果が圧倒的にパフォーマンスが高かったことからこれはやはり梅澤理論に分があることが疑いようもなく実証されているわけです。梅澤の言う「未充足の強いディファレントDOニーズ」とクリステンセンの言う「ジョブ」とは実は同じものであることが解き明かされたわけですが、その上でこのパフォーマンスの違いというのは、リサーチ(ALIなど)や分析フレームワーク(CASなど)などのサブシステムの完成度が違うということに他なりません※。

※例えば「ジョブ理論」の中にはインタビューの実例が収録されているのですが、明らかにアスキングのインタビューです。これでは意識マトリクス理論で説明してきたようにALIとは潜在ニーズの発見確率が大きく違ってくると考えられます。それが上記のパフォーマンスの差の大きな要因の一つだと言えます。

また、梅澤の「ニーズ」の理論とクリステンセンの「ジョブ」の理論を比較してみると梅澤理論の方が遥かに体系化されています。上記のようにサブシステムの完成度が高いということはその体系化の程度の差に他なりません。

それらを比較してみたのが下表です。

その体系化のレベルの違いというのは世界観・時代観にも現れており、油谷NOHL理論がブルー・オーシャン理論に対して広大無辺な世界観・時代観を表現したのと同様に、梅澤のニーズの系統発生理論というのはクリステンセンの言うプロダクト(持続的イノベーション)とプログレス(片付けるべきジョブ)※の違いを時間概念と共に単純明快に表現しているばかりか、やはり「ニーズの無限性」という広大無辺な世界観・時代観を表現しています。

※この「プログレス」や「片付けるべきジョブ」の概念は「持続的イノベーション)(技術改良)に対してクリステンセンの言葉を借りて「破壊的イノベーション」と呼んでも良いと私は思うのですが、クリステンセンの「破壊的イノベーション」とは既存市場では受け入れられないローエンドの技術で下位市場を拓き、その下位市場が上位市場を侵食していくことを示しているので正確には「破壊的イノベーション」とは呼べないのです。

さらに梅澤理論の卓越しているところはCASで創造された「未充足の強いディファレントDOニーズ」に対してそれを実現する「アイデア発想技法」を別に持っており、「商品コンセプト」としてアウトプットできるという後工程を持っているところにあります。これは「キーニーズ法」という「コンセプト開発技法」です※。すなわち、インタビューや行動観察からコンセプト開発を行い、さらにその検証を行うというところまでが一気通貫のシステムになっているのです。

※アイデア発想法というのはいろいろあるのですが、「コンセプト開発技法」というのはキーニーズ法以外にはなく、唯一無二の存在です。

というわけで両者の比較をまとめると以下のようになります。これは商品価値観点の2理論の比較と相似形となっていると言えます。

どちらも生活工学的な観点を持っている。
しかしジョブ理論よりも梅澤理論はリサーチでその確度・精度を裏付ける手法が確立されている。
ジョブ理論は今目の前にある「一歩先」の課題解決までのスタティックな視野しか持っていないが、梅澤理論は市場・生活を変化し続けるダイナミックなものと捉えている。そのため「二歩先、三歩先、さらにその先」の未来予測に応用することができる。
④諸観点を提示しながらも、それらが体系化されていないジョブ理論に対して、梅澤理論ではニーズの諸特性の解明と体系化を基礎に、分析のフレームワークが明確。
⑤④と関連してジョブ理論ではジョブが発見された後工程での商品開発が試行錯誤的であるのに対して、梅澤理論ではシステマティックなコンセプト開発手法が存在する。

ということになります。

こういうと梅澤の前にクリステンセンはいいとこ無しとなってしまうのですが、彼は経営学者なので、開発のみならず、イノベーションに関するマネジメントについても知見を持っています。むしろ参考にするべきはそちらではないかとも思われます。ブルーオーシャン理論のチャン・キムも同様です。

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