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「市場調査など役に立たない」の真意

このお三方が、そろいもそろって「マーケットリサーチ否定論者」であったことは知る人ぞ知る事実です。彼らはこのように言っています。


本田宗一郎
「独創的な新製品をつくるヒントを得ようとしたら、市場調査の効力はゼロ         となる。大衆の知恵は決して創意などはもっていないのである。大衆は作家ではなく、批評家なのである。」


盛田昭夫
「わが社のポリシーは消費者がどんな製品を望んでいるか調査して、それに合わせて製品を作るのではなく、新しい製品を作ることによって彼らをリードすることにあり、だから我々の市場調査などにあまり労力を費やさず、新しい製品とその用途について、あらゆる可能性を検討し、消費者とのコミュニケーションを通じて、そのことを教え、市場を開拓していく。」


スティーブ・ジョブズ
“Some people say, ‘Give the customers what they want.’
But that’s not my approach.
 Our job is to figure out what they’re going to want before they do.I think Henry Ford once said, ‘if I’d asked customers what they wanted, they would have told me, ‘A faster horse!’’ People don’t know what they want until you show it to them. That’s why I never rely on market research. Our task is to read things that are not yet on the page.”

ものの見事に三者共通ですし、ジョブズの言っている通り、ヘンリー・フォードも同様のことを言っています。彼ら、アントレプレナーというか、イノベーターというか、にとっては市場調査など役に立たないものなのです。

このように申しますと、「ホンダやソニーやAppleも市場調査をやっていることを知っている」という業界人が登場します、しかし、この三人がおっしゃっているのは

・独創的な新製品(本田)
・消費者をリードする新しい製品(盛田)
・what they’re going to want before they do(ジョブズ)

について、市場調査が役に立たないと言っているのであって、既存の商品について市場調査をすることには何ら触れていないわけです。つまり、市場調査をやってないわけではない。逆に言うと、これら天才たちは「世にない新商品」すなわち「新事業」をおこすことに関心が向いているのであって、既存の市場など関心の範囲外であるということです。

つまり、彼らのこのような発言の真意は、彼らの知っていた既存の市場調査はというものは、彼らのニーズに、すなわち、画期的なビジネスを生み出すことには、全く応えていなかったということなのです。

それでは彼らは市場調査というものを全く行っていなかったのか?というとこれは明らかにNOであって、本田さんはヨーロッパまで現地事情を調査しに行ったわけですし、盛田さんやジョブズは自分の周囲での出来事にアンテナを張っていたわけです。これらが彼らにとっての「マーケティングリサーチ」であったわけです。その「マーケティングリサーチ」から画期的新商品が生み出されているのですから、彼らの思考形態を写し取ったリサーチを行えば彼らと同じことができるということにもなります。

その根底にあるのが前回述べました「生活工学」の考え方であるわけです。

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