父として初めてのクリスマスに惨敗した話
もはや中国とかあんまり関係ないんですが、自分としてはここ最近で起きた一番大きな出来事なので書かせてください。
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昨日はクリスマスイブ。そう、子どもができて初めてのクリスマスイブです。
これまでクリスマスの習慣が薄い(とはいえ禁止はされていない)中国に暮らしており、毎年のクリスマスにもそれほどクリスマスらしいことをすることはありませんでした。せいぜい嫁にちょっとしたプレゼントをあげて、気が向けばケンタッキーを食べるくらいのものでした。
しかし子どもが生まれたとなれば、こうしたイベントごとは大切にしたほうがいいのではないか。そんなことを考え、ちょっとクリスマスらしいことをしようと思い立ちました。今思えば、これが悲劇の始まりです。
僕が思いついたのは、プレゼントの渡し方でした。形だけでもサンタに扮し、子どもにプレゼントを渡す、ということを体験したかったのです。
というわけで数日前、僕は淘宝で子どもに遊ばせる用の知育おもちゃと、嫁に渡すプレゼントのほか、サンタ帽とサンタ服を買いました。髭は家になぜかモコモコの綿があったので、それを流用しようと考えつきました。
そして迎えた当日なのですが、ここでトラブルが発生します。プレゼントはすべて問題なく届きましたが、サンタ服の配送がトラブルで遅れ、手元に帽子しか届かなかったのです。そもそもなぜセットで買わなかったのか。
今思えばこのあたりで踏みとどまっておけばよかったのですが、臨機応変さがなく愚直に一度決めたことをやり通そうとしてしまう日本人たる僕は、ここで引くという判断ができませんでした。もうこの時には、運命は決まっていたのでしょう。
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当日の夜、息子と嫁と3人で遊んでいるときに、何気なくその輪を抜け出します。そして自室にこもり、サンタ帽をかぶり、白い髭(綿)を両面テープで装着しました。服は普通にパジャマです。
前の日の晩から梱包してあったプレゼントを右手に持ち、さらに左手ではこれもなぜか家にあったタンバリンをシャンシャンシャンと鳴らしながら、嫁と子どもが遊ぶ部屋に戻って行きました。
そしてサプライズ登場のつもりでパッ!と息子の前に飛び出したのですが……息子くんは一瞬ビクッ!と体を震わせたかと思うと、「ピギャァァァ」と聞いたこともないような音量で泣き出してしまいました。どうやら突如目の前に現れた赤帽子に白髭に灰色のパジャマ(タンバリン装備)の変質者に驚き、怖くなってしまったようです。
嫁が慌てて抱きかかえて落ち着かせようとする中、僕はオロオロしながらごめんごめんと声をかけようとするのですが、息子はより激しく泣くばかり。どうやらいったん撤退せざるを得ないようでした。
また自室に戻り、ドア越しに息子の悲鳴を聞きながら、帽子を取り、髭をはがしました。白髭を留めていた両面テープとともに抜けた、何本かの自分の黒い髭の痛みが、現実の痛み以上に心に刺さったような気がしました。
その後、子どもがいったん泣き止んだタイミングを見計らい、扮装を解いた状態でまた息子の前に行ったのですが、今度は僕が視界に入った時点でまた泣き出してしまいました。どうやら僕ごと敵認定されてしまったようです。迷惑そうな顔をした嫁がまた落ち着かせにかかり、僕は再度部屋を出ました。
そして、その日は嫁の寝かしつけが済むまで子どもの前には行かず、自室で仕事をしていました。なんか寒気と頭痛がする気がしたので、慌ててキッチンに行って生姜はちみつ湯を作って飲みました。子ども相手にスベリすぎて、体調までおかしくなってしまったようです。
そんなわけで、父として初めてのクリスマスイブは惨敗に終わってしまいました。
ちなみにサンタ服はまだ家に届いていません。普段、中国では返品が簡単にできすぎることに苦言を呈している僕ですが、こればかりはキャンセルしようかと思っています。
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同様の件についてX(Twitter)で少し書いたところ、「2歳を過ぎないとクリスマスとかわかってもらえないっすよ」という真っ当なご指摘をいただきました。冷静に考えればそりゃそうです。ぐうの音も出ません。
僕はただ単に、「クリスマスなんだからそれっぽいことをやらねば」という謎の義務感に駆られ、子どもの気持ちを顧みず、ただ自分の無謀な計画にこだわって破滅への道を選んだのです。これでは、インパール作戦を強行した牟田口中将のことを笑えません。
子どもの気持ち、目線に立って考えること。計画の無謀さに気付いたのなら恐れずに途中で引くこと。父親として、人間として重要な教訓とともに、イブの夜は更けていきました。失敗はしたけど、これを糧にまた頑張るしかないのです。
ただただ自分のエピソードトーク的なもので本日は失礼しました。ではまた。
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