顧客との絆を深める〜D2C事業における重要な顧客接点となる「物流・ラストワンマイル」の価値創造とは〜【大阪ガス株式会社×STUDIO ZERO対談】
STUDIO ZEROでは、伴走型物流価値創造サービス「.Logi」を提供しており、多角的な視点から、物流の価値をご支援先の企業の皆さんと共に創造しています。
エンドユーザーのお客様に最後にお荷物をお届けするまでの一連の流れをCX（顧客体験）と位置付け、今はまだない価値あるインフラの構築を目指しています。
また、企業の主体性を尊重した上で、時には半歩先をリードしたり、時には後ろから背中を押したりしながら、知見や経験が当事者および社内に蓄積されるような「内製化」を推進しています。
今回「.Logi」を導入いただき、共に物流改善の面からも顧客満足度を上げる取り組みを行っている、大阪ガス株式会社のおふたりと「.Logi」の事業責任者である上田が、対談を行いました。事業立ち上げから、これまでの取り組みを振り返っていただきました。
大阪ガス株式会社の新規事業FitDish(フィットディッシュ)は、個人の好みや食生活に合わせて料理を選んでお届けする、サブスクリプション型の食事宅配サービスです。
FitDishの主な特徴
・「おまかせ診断」に基づいて、70種類以上のメニューから毎月料理をセレクト
・大阪ガスクッキングスクールの管理栄養士が監修した家庭料理
・主菜と副菜のセットで届くため、使いやすい
・冷蔵パウチで届き、レンジで1-2分で温められる
・冷蔵庫で約1ヶ月の長期保存が可能
・合成保存料や合成着色料をできるだけ使用しない安心安全へのこだわり
・フードロス削減に取り組む
2023年9月12日よりサービス提供を開始し、「.Logi」を採用いただいた後、物流の改善においては経費削減や業務効率化のみならず、結果的には顧客体験向上や事業全体への好影響を及ぼしています。
物流の改善プロセスや、具体的な施策がもたらした成果について、お話を伺いました。
食の分野で新規事業を始めた理由
―まずはじめに、大阪ガス株式会社は、なぜ食の分野に踏み出したのでしょうか？
藤田氏「実は大阪ガスは古くから食には関わりがあったんです。ガスの良さを伝えるため、大正時代にクッキングスクールを作り、ちょうど創業100年を迎えたところです。当時、かまどの文化がまだあったのですが、それを炊飯器に変えるといった流れがあり、クッキングスクールは、新しい文化の啓発活動という意味あいもありました。現在も西日本で最大級のクッキングスタジオを運営しているので、食はそんなに遠い分野ではありませんでした」
―新規事業として食を選んだ理由は？
藤田氏「新規事業の軸を作ることが大事だと考え、これからの生活に当たり前のものを作ろうという方針を立てました。私たちはインフラ企業なので、ライフラインとしても当たり前ですから、そんな会社が出すサービスだから、流行り廃りに流されるものじゃなくて、 ここから先10年、20年と、暮らしに必要なものを作れたらいいんじゃないか、という視点は大切にしました。ユーザー起点やマーケット起点から考え、後から現在の事業との接点を見るという順序で検討しました」
事業立ち上げから、これまで
―事業立ち上げから現在までの成長過程はいかがでしたか？
藤田氏「まず事業を開始してからは、オペレーションを回すことが本当に大変でした。商品の発注からお届けまで、それぞれのフェーズでのお問い合わせ対応など、全てが初めてのことばかりで、毎日バタバタしていました。また、お客様をどれだけ増やすかというところも苦労しました。思っていたような反応が得られなかったり、逆に、思いもよらない良い反応があったりと、咀嚼するのに時間がかかりました。ただ、食の分野の新規事業をゼロから立ち上げて、しっかりオペレーションを作り上げ、きっちり回せるようになったことは最大の成果だと思います。特に物流の部分は、2024年の6月から伴走支援をいただいているので、今後の事業戦略とリンクした物流オペレーション構築をお願いしています」
―立ち上げ期、何が一番大変でしたか？
小林氏「私は2024年の1月から、FitDishの物流とお客様対応を担当していますが、それまではずっとガス機器の営業をしていたので、全てのことが初めてでした。特に物流は、想定外のことがたくさん起こることが大変でしたね。例えば、天候が悪くて予定通り商品が届けられない時の対応や、倉庫内での商品準備ミスへの対応などです。また、食品を扱うので温度管理や衛生管理が非常に重要です。作業員の方々に毎日きちんと作業の趣旨を伝え、品質を保つことが課題ですね」
STUDIO ZEROの伴走支援による物流改革
―物流改善のきっかけは何だったのでしょうか？
小林氏「物流業界の商習慣がよくわからず、物流業者とのコミュニケーションがうまく取れませんでした。その際、自分たちで手探りでその商習慣を学ぶより、業界を熟知した伴走者がいると良いのではと判断し、上田さんにお声がけしました。
そこからまず、日頃物流業務を委託している倉庫を第三者のプロの目で数回現場検証をしてもらいました。一つひとつの作業工程の単価根拠や、倉庫内の商品保管状況から今後起こりうるインシデントなどを可視化。特に冷蔵食品のため、温度管理などは重点的な検証を依頼しました。
その後、検証結果をもとに改善活動をスタート。また改善活動を進める中で、根本的に物流作業を委託している業者さんでは将来的な成長戦略に対して、想定している出荷個数の対応が難しいことや、品質保持のリスクなどを考えた結果、物流業界の知見をもとに既存業者で継続するべきか、新倉庫へ移管すべきかなどの選定プロセスも支援いただき、倉庫の移転を決意しました。また、冷蔵しか対応できず、冷凍商品は別の場所で保管する必要があったんです。こういう点も商習慣として同じ場所で作業ができるのかできないのかすらもよくわかりませんでした。今回の移転で以前のように冷凍倉庫から冷蔵倉庫への無駄な輸送もなくなり、結果的に商品の品質保持にも寄与しています。
上田「倉庫の移管は、お客様としては一大決心だったと思います。万が一、物流が止まることがあれば事業として大きなリスクとなります。移管することでのメリット・デメリットの整理など、物流業界の商習慣を理解していないとなかなかどうすべきか判断しにくいと思います」
―新しい倉庫に移転して、どのような改善がありましたか？
小林氏「新しい倉庫に移転したことで、商品の保有量や在庫容量の管理がしやすくなりました。倉庫に入る荷物の量が増え、どれくらいまで商品が入るかをシステム化する取り組みも始めています。また、上田さんのアドバイスで、商品の置き方を工夫することで、さらに収容量を増やすことができました」
上田「倉庫の高さの活用ですね。平方メートルではなくて、立方メートルで考えると収容量がアップし、物流費の約16%を占める重要な固定費を抑えることができます」
物流改革がもたらした、具体的な成果
―物流会社とのコミュニケーションはどのように改善されましたか？
小林氏「物流会社との間に複数の仲介業者が入っていたため、当初はコミュニケーションが難しかったです。しかし、直接物流会社と週2回程度の定期的な打ち合わせを行い、進捗状況を確認しながら進めていくことで、徐々に改善されていきました」
上田「どうしても、物流の領域はブラックボックスと言われていて、委託業者に任せっきりになっていることが多いですが、やはりそれはリスクでもあります。今回の移管においては、各タスクを物流事業会社と何度も打ち合わせを行い移管項目の内容から抜け漏れがないか？リスクは網羅できているか？誰がいつまでに何をやるのか？そして、もしリスクが発生した際の代案はどうするかなど多岐に渡る作業項目を整理し、日々進捗確認を行いました。
.Logiの特徴として、物流事業会社の経験を有し現場を知り尽くしたスタッフで構成されており、実際にこのような移管業務を多数実施している経験からの伴走支援は結果的にクライアントの安心感になっていると思います」
小林氏「物流業者との様々な商談の際、いつも上田さんに伴走してもらっていたので心強かったです。伴走しつつも、時には半歩前に出て、しっかりとおかしい部分はおかしいと指摘することで、物流の最適化が進みやすくなりました」
顧客体験向上に寄与する物流のラストワンマイル
―今後も継続していくべき取り組みは何でしょうか？
小林氏「日々変わる作業員の方々に対して、毎日の作業の趣旨や品質管理の重要性を伝え続けることです。物流会社では作業員としてタイムリーな人材を活用しているため、常に新しい人が入ってくる状況で、いかに品質を保つかが重要になっています。顧客体験としては、商品が届いたところからがスタートですから。そういった意味では、お客様センターに届いた配送に関するクレームは、必ず物流会社にフィードバックするようにしています」
上田「これは、顧客体験向上のための素晴らしいフィードバックですね。実は、配送会社は、お客様から直接クレームをもらうことが少ないと私は考えています。なぜなら、住所・氏名・配送物といった個人情報を全て把握しており、エリア担当制でいつも自宅に来る担当に顔までわかってしまっている…となると、気になることがあっても、仕方がないか…で済まされてしまうことが多かったりするんです。だからこそ、お客様からのご指摘がコールセンターなどに入った際はその内容を正しく、物流事業者・配送事業者に伝え、お互いが真摯にどうすれば同じトラブルを起こさなくなるのかを考えることが重要なんです。特に配達はD2C事業においては唯一の顧客接点であり、また受け取った瞬間から顧客体験が始まるので特に重要視しています」
まさに、物流のラストワンマイルで顧客体験向上に寄与していますね。
―この一連の物流改善の取り組みは、いかがでしたか？
藤田氏「データの可視化や数値化の重要性を認識しました。在庫量や倉庫の収容能力をシステム化することで、より効率的な運営ができるようになってきています。物流において、KPI（管理指標）を用いて作業品質を数値化し、食品の安全担保を目的とした、さらなる品質の向上に繋げていきたいです」
小林氏「物流の専門用語や業界特有の慣習を理解することの重要性を実感しました。そして、それらを理解した上で、いかに現場でコミュニケーションを取るかが重要ですね。誰もがコストダウンしたい物流費ですが、物流会社に値下げしてくれ、という交渉をするんじゃなくて、現場でしっかりコミュニケーションを密に取って、一緒に作業の無駄を省いていきましょう！というスタンスで動くと、想いは伝わります」
上田「よく他のお客様からどこまで物流会社さんに求めて良いのかと相談があります。物流会社は単に高単価な物流・配送の獲得を目指すのではなく、FitDish事業が拡大していくことで結果的に出荷量が増える事こそが物流事業会社にとって最もハッピーだと私は考えています。また、今回の.Logiの支援においては、小林さんに物流業界のノウハウ・専門用語の知見が溜まっているのが最大の成果だと思います。担当に着任されてから、わずか1年足らずで、ここまで物流業界特有の専門用語や商習慣を理解されているのは、本当に凄いことです。物流事業会社の作業において暗黙知となっている部分を鋭く指摘されているのが印象的ですね。これからも事業フェーズに応じた改善を続けていき、より良い顧客体験を提供できるようサポートしていきたいです」
―ありがとうございました。
お客様の声をもとに、日々改善を重ね、大切に育てているサービスであることが伝わってきました。物流会社ともワンチームとなって取り組み、お客様が手に取り箱を開ける瞬間までを想像し、最高の状態で商品をお届けできるよう、進化を続けているFitDishの今後にも注目です。
物流は事業における最後の暗黒大陸（＝ブラックボックス）といっても過言ではありません。専門用語や特有の商慣習があり、わからないことだらけの物流業界。しかし「何がわからないのかもわからない」のであれば、それこそ注意が必要かもしれません。。
物流費を経営アジェンダとして捉え適正化を行うことで、事業へのインパクトに大きく寄与します。下記の「物流わからないことチェックリスト」を、チェックしてみてください。
【D2C事業者必見】物流わからないことチェックリスト☑️
倉庫
＜作業単価の妥当性＞
☑️入庫から出庫まで細かく作業単価が設定されているがその妥当性がわからない
☑️相見積をとっても基準値がないので高いか安いかがわからない
＜ 在庫保管＞
☑️坪単価や期間での保管料金を請求されるがその妥当性がわからない
☑️スペースに対して無駄なく効率的に保管しているか判断がつかない
＜作業効率＞
☑️依頼している作業の生産性から、どれくらい1日に出荷してもらえるのかわからない
＜人材不足＞
☑️急な出荷依頼やスポット的な物量の増加など人材がいなく対応できないといわれるがなぜかわからない
＜災害対策＞
☑️震災などが発生した際の緊急連絡体制など構築したいが相談可能かわからない
＜温度管理＞
☑️温度管理の履歴などどこまで品質を求めて良いのかわからない
＜セキュリティ＞
☑️物流現場の監視カメラなどの設置はどこまで求めて良いのかわからない
＜クレームへの対応＞
☑️クレームが発生して、原因などの可視化を依頼したいがどこまで求めて良いのかわからない
＜コスト削減＞
☑️無駄なコストなど定期的に作業単価の見直しをしたいがどこまで相談していいのかわからない
配送
＜配送単価の妥当性＞
☑️配送の単価を圧縮したいが、どうすればいいのかわからない
☑️自分たちの商品配達に一番適した運び方は何なのかわからない
☑️相見積をとっても基準値がないので高いか安いかがわからない
＜配送遅延＞
☑️配送遅延などが、事後報告が多いが事前に教えてもらえるかわからない
☑️HPに遅延情報が掲載されるが、掲載前に事前に教えてもらえないのかわからない
＜配送料金の高騰＞
☑️値上げ要請が毎年のようにくるが、値上げ額を圧縮できるのか、わからない
＜配送クレーム＞
☑️配送起因でのトラブルから解約が発生しているケースが多いが、配送トラブルについて再発防止してもらう方法が、わからない
3つ以上「わからない」にチェックが入ってしまったあなたは黄色信号。5つ以上だったら、赤信号！「.Logi」では、無料相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
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