旅日記 秩父にて 漆 さらば秩父
僕たちは西武秩父駅にいた。
思い出したようにお土産コーナーで物色をしている二人。僕は兄妹にクッキーを。両親には味噌モツを買った。
冷凍の味噌モツ。当然、保冷剤やら保冷パックなんかに包んでもらえると思ってレジを済ませたが、どうやら何もしてくれないらしい。
無地のレジ袋にキンキンの味噌モツ。後ろにはいつの間にか列が出来ていた。
諦めた僕は、水滴の浮いたレジ袋を持って友人の元へ行く。
先に買い物を済ませていた友人と豆腐味のソフトクリームを買った。出て来たソフトクリームは少しびちゃびちゃだった。二人は外のベンチに座って其奴を食らう。
そのアイスを吸うように食べた。豆腐のアイスなんて初めてだった私は、その味に驚いた。
控えめな甘さ。吸うことで生まれたアイスの喉ゴシ。後から来る豆腐の風味と香り。これは、感動的な出会いだった。
私はコーンに当たる所まで一気に吸う。勢いあまり過ぎて溢れるソフトクリーム。後は慎重にアイスとコーンを交互に食べ進めていった。
気がつくと、私の手はベタベタだった。友人がゆっくり食べている間にお手洗いに行く。
食べ終わった二人はもうすぐ来る電車に乗るために駅のホームへ向かった。
ああ、終わっちゃうんだな。
少し寂しい気分を駅員のアナウンスがかき消す。そして、ゆっくりと電車が近づく。空はオレンジ色に染まっていた。
僕らは向き合いながら座って今日の思い出を話し合っていたが、それも寂しくなってだんだんと会話がなくなり、二人とも過ぎゆく外の景色を眺めるだけだった。
うるさいくらいの山々が恋しくて、其奴を必死に目に焼き付けていく。
それから、遊び疲れた僕らは少し眠った。
さようなら秩父。さようならメリー・ルー。