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あたふた、狼狽する、じゃなくて 花の名は。Vol.14
ロウバイ。早い年には12月から咲き始めます。12月、年の瀬、師走。この花が咲くと、忙しなく、あたふたするから、狼狽でロウバイ、違います。蝋梅です。蝋、ロウのような梅、ウメです。ウメの仲間ではないんですが。
ちょっと見、黄色い梅です。黄梅でもよさそう、ですが。黄梅と書いてオウバイという花木は別にあります。それもウメの仲間ではないんです。黄色い梅の品種はありません。あいや、えっと、あるんですけど、品種名で黄梅。花びらが退化していて、残っている雄しべが目立ち、黄色い花のように見えるという、かなりレアな品種です。
和名オウバイは、早春から長く咲き、主なウメの開花期とほぼ重なっています。香りはしないのに、なぜかジャスミンの仲間です。ジャスミンの仲間もいろいろあって面白いですよ。
対してロウバイは、一番早咲きのウメ、冬至梅と開花期が重なります。早いと年末から。概ねは、お正月が明けた頃から咲きだして、温暖な土地なら1月中が盛りです。お寺に多い花木です。ロウのような花弁の質感は不思議なもので、薄いけどわりと硬くてしっかりしています。基本種は中心部分に赤茶色の斑点があります。斑点がなく黄色1色に咲く品種をソシンロウバイ、素心蝋梅とよびます。マンゲツロウバイ、満月蝋梅という品種もあり、こちらは花の形がより丸い。中心の赤茶色はあります。クレーターかな?
ロウバイは落葉樹です。葉が芽吹く前に、花が咲き、咲き終わります。ウメとその点は同じです。葉は大きくて、黄緑色でひらひらとしてます。秋には黄葉します。その様子も美しいものです。ところが、そのころ、異変が発生します。
初めて秋のロウバイをまじまじと見たのは10年ほど前でした。鎌倉のお寺です。ミノムシがついている? のかと思って、まじで、まじまじと、まじまじまじと見てしまいました。ミノムシみたいな茶色い塊はロウバイの実でした。花の可憐さからはとても想像つかない、遠目にミノムシにしか見えない黒い実です。ウメの仲間ではないことがよくわかります。そもそも花の質感のみならず構造も、ウメなどバラ科とはまるで異なります。
なんの仲間かと思えば、ロウバイ科ロウバイ属。あまり友達がいないのかな? 4月頃、葉が出てきた後に花が咲く、クロバナロウバイという花木がロウバイ科です。この花は黒みを帯びた濃赤色、チョコレート色に近く、日陰だとなお黒く見えます。不思議なことに淡くチョコレートの香りがします。
そうそう、ロウバイの花には、よい香りがあります。爽やか系の香りです。もう少し後に咲くジンチョウゲのような、周囲に漂ってくるほどの強い芳香ではありません。花に近づくと感じます。そのやさしさ、控えめなところ、ウメに似ていますね。狼狽せずに、落ち着いて観賞しましょう。
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