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ととのエッセイ 「運河のほとりで」

東武線の運河駅を降りると、
利根川と江戸川を繋ぐ運河があって、
それに沿って約3kmの遊歩道が、
江戸川まで続いている。

昨日の朝はトレーニングをする代わりに、
その道を往復してみた。

まだ暗い朝5時に運河駅を出発し、
5時半に江戸川に着いた。
そうしたら、
ちょうどその頃日が出てきた。

運河と江戸川が交わるちょうどそのほとりに、
ちょっとしたスペースがあって、
古びた椅子が3脚置いてあった。

そこに腰掛けてしばらく眺めていると、
そこへ釣り人のおじさんがやってきた。
おじさんは一脚空けて、
僕の隣りに座った。
どうやらここは「釣り場」らしい。

「なんだ釣りじゃないの?」
「散歩です」
「あ〜そうなんだ!」

「よく来るんですか?」
「ほとんど毎日。仕事前に1時間。今日はスズキが釣れたよ」
「へ〜スズキが釣れるんですね!」
「釣れるよ!でも前より全然釣れなくなった!」

「そうなんですねぇ」
「昔より水草とか川の中の障害物が少なくなって魚が減っちゃったんだよ」

やりとりを交わすと、
見ず知らずの釣り人のおじさんは
「そんじゃあね。これから仕事だから」
と言いながら颯爽と帰っていった。

なんというか、
釣りをする人って、
壁が無く達観している気がする。
街で隣に座った人とはまずこんな話にならない。

自然の中と街、何が違うのだろう?

しばらく川を眺めていると、
川の上を小枝が流されていたり、
鴨の親子がゆっくり逆流していたり、
水中から魚がジャンプして、
一瞬の波紋を残して消えていったりした。

自然の中にいると、
時には人生という大河の激流に流されることも、
その流れを使って様々な想いを載せて届けるのも、
たまにはその流れの中に潜ってみて意外な障害にぶち当たるのも、

どれも悪くないんじゃないかなあと思えてくる。

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