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人がキラキラしてみえるのは

仕事終わり、
夜ごはんを食べようと入ったお店で、テーブル席に男女ふたりが座っていた。




オレンジの照明にジャズが流れる、純がつく感じの喫茶店で、おそらく友人同士のごはん。

半分、デートの雰囲気をまとってるやつ。


私はひとり席で、窓の外をみながら耳で観察していたけど、

それはもういかにも
「お互い関係性の発展をねらって自分を良く見せようとするがゆえに会話がどうしても面白くならない大学生のごはん」
だった。


喉の浅いところから出すような女の子の声も、
一部棒読みに聞こえるリアクションも、

男の子が出すあたりさわりのなさすぎる話題も、
次の話にうつるときの絶妙なちぐはぐ感も、


なんだかこっちが恥ずかしくなっちゃって鳥肌。



私なら、相手の答えをきいて「そうなんだ〜!(テンプレのほほえみ)」で終わらせるような浅い会話は続けたくないし、

なんならもっと、知り合って長い人と、ひねりを効かせた言い合いで笑えるようなごはんが好き。






でも、

そうなはずなのに、



彼らのことを「うらやましい」って、
思ってしまうのはなぜか。



棒読みぽくてもいいから、彼女みたいに可愛さを装ったリアクションをしてみたい。

ちぐはぐでもいいから、彼みたいに相手の気を引くために必死に話題を絞り出してみたい。



会話の中身ペラペラだな〜って冷めて見てる一方で、彼らに憧れのような念を抱いてしまう。

こんな矛盾した気持ちになるのはなにゆえか。






たぶん、それは私が彼らに、私のイメージを投影しているから。



彼らの会話や雰囲気そのものじゃなくて、

私が想像するデートの高揚感とか、
言葉に混じるアピールのくすぐったさとか、
それをお互いにわかってるあの感じとか、

そんなキラキラ要素を勝手に上乗せしてできた像を「彼ら」としてみてる。


もはや、事実ではなく少女マンガ。
私はあのふたりに、役とシナリオを投影してる。


だって現に、ふたりが席を立ったとき「あれ?」って拍子抜けしたけど、

それは彼らが思ってたより美男美女じゃなかったから。





ちょうど我が心の醜い部分が露呈したところでやめますけども、とにかく私は彼らの姿に自分の理想を重ねていて、その理想に憧れてたんだなと思ったわけです。


人のことをみるときって、わりと常に色メガネかかってるよね。




と、まあいろいろ言ったけど、
うらやましく思えることに変わりはない。


一軒目は喫茶店だった。
二軒目はいくのだろうか。


あの会話のテンポはむずがゆくて耐えられないけど、お店のドアが閉まるまで、私はあのふたりの気配を追ってしまう。




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