モノガタリのガッコウ

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宮崎駿の遺言状!? ~眞人の旅の"分かりにくさ"を解き明かす~

金銭、名誉、名声、地位…… 実力、伴侶、仲間、趣味…… この世のすべてを手にした人間であっても、 老いて最後に求めるものは「これか」と思わされる、何とも感慨深い映画だった。 巷の評判とは異なり、自分はこの映画を「難解だ」「分からない」とは思わない。 一方で「(表現として)分かりにく過ぎるし、分からせるつもりもない」とも感じた。 答え合わせのしようがない映画ではあるが、私個人の妄想として解釈を語っていきたい。 ■この映画、分かりにく過ぎないか…!? 物語は大きく2パート

    • [5000字] "歌舞伎"になった仮面ライダー。庵野秀明『シン・仮面ライダー』について③

      ≪前回≫ ③"歌舞伎"になった仮面ライダー 組織の物語やディティール描写に逃げずに個人の物語だけを中心にして描いても、それが「人間」の物語にはならない。こんな奇妙な離れ業をやってのけるのは庵野秀明監督くらいだろう。『シン・仮面ライダー』に関する感想は、もうこの一言に尽きる。 先にも述べたように『シン・仮面ライダー』に形式上の「人間」の物語が無いわけではない。 優しい青年本郷猛がマスクに宿る生存本能に衝き動かされて戦い、父とは異なる優しいままでも戦える強さを獲得するまでの

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      • [5000字] "歌舞伎"になった仮面ライダー。庵野秀明『シン・仮面ライダー』について②

        ≪前回≫ ②「人間」の物語をどうするのか? 「シン」シリーズ特撮映画のコアとなる構成要素を「特撮映画を"現実"的な描写で肉付けすること」として把握すると、その肉付けの対象がある種の偏りを持っていることに気付く。 『シン・ゴジラ』では政府および自衛隊の意思決定フローや作戦行動の描写が大半のシーンを占め、『シン・ウルトラマン』でも政府交渉や公安および禍特対の描写が当のウルトラマン自身の物語を圧迫するほどの分量におよぶ。人と人との対話やそこから生まれる心情変化、いわゆる「人間」

        • [5000字] "歌舞伎"になった仮面ライダー。庵野秀明『シン・仮面ライダー』について①

          作品の中にちりばめられたオマージュやパロディをひたすら「元ネタ解説」するオタク的な感想を、読解や批評と呼ぶべきなのかどうか考えることがある。 基本的には「ノー」だと言いたいが、この作品に限ってはむしろそれこそが"正しい"鑑賞スタイルなのかもしれない。『シン・仮面ライダー』はそういう映画だった。 ①「シン」シリーズの意義 2016年公開の『シン・ゴジラ』から始まる庵野秀明監督の「シン」シリーズ特撮映画が何を達成したのか、一言でまとめると「特撮映画を"現実世界"のように肉付け

          [5000字] "手加減"された東日本大震災。新海誠『すずめの戸締まり』について

          はじめに 「『すずめの戸締まり』クライマックス凄く良かった、感動した! でも、映画全体を振り返ると引っかかったところが色々あって、全部最高!!って言うと嘘になる感じがする……何だったんだろう?」 これの答えをまとめる記事になります。 結論から言うと、 「恋愛作家が死別の物語を描くにあたって、恋人以外の人間の喪失でもってそれを描くのはどこまで行っても"逃げ"である」という内容です。 ※ このnoteは『モノガタリのガッコウ』というwebラジオの運営が書いたものです。興味

          [5000字] "手加減"された東日本大震災。新海誠『すずめの戸締まり』について

          ごあいさつ

          このnoteは、毎週金曜日に公開しているpodcast「モノガタリのガッコウ」の文字バージョンを記録・公開するための場所です。 番組では様々な作品を扱いますが、小項目「ロンテン」の区切りで話をまとめており、こちらのnoteでも各ロンテンごとに一記事を立てて整理していく予定です。 更新スケジュールに合わせて順次更新してまいりますが、番組のスタンス紹介がてら、下記に初回の「ごあいさつ」の文字起こしを載せておきます。 一読して興味を持った方は、ぜひpodcast上の番組をご覧い