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【ワークライフバランス指数 #3/5】世界のワーク・ライフ・バランス先進国に学ぶ
前回までの記事で、日本のワーク・ライフバランスの現状と、その歴史的・文化的背景について見てきました。今回は視点を変えて、ワーク・ライフバランスが優れている国々の事例を見ていきましょう。彼らの取り組みから、日本が学べることは何でしょうか?
※参考
OECD Better Life Index
ワーク・ライフバランス先進国とは?
まず、「ワーク・ライフバランス先進国」とは何を指すのでしょうか。OECDのベター・ライフ・インデックスによると、ワーク・ライフバランスの評価が高い国々には、オランダ、デンマーク、フランスなどが挙げられます。これらの国々は、労働時間の短さ、余暇時間の多さ、そして仕事と家庭の両立のしやすさなどで高い評価を得ています。
それでは、具体的に各国の取り組みを見ていきましょう。
1. オランダ:パートタイム大国の秘密
オランダは、OECDのデータによると、超長時間労働者(週50時間以上働く人)の割合がわずか0.3%と、OECD加盟国の中で最も低い国です。この背景には、オランダ独自の労働文化があります。
パートタイム労働の普及
オランダでは、パートタイム労働が一般的で、労働者の約50%がパートタイムで働いています。これは他のOECD諸国と比べて突出して高い割合です。
「ワークシェアリング」の概念
1982年のワッセナー合意以降、オランダでは「ワークシェアリング」の概念が浸透しました。これは、労働時間を短縮し、より多くの人に仕事を分配するという考え方です。
柔軟な労働時間
2000年に施行された「労働時間調整法」により、従業員は労働時間の増減を雇用主に要求する権利を持ちました。これにより、個人のライフスタイルに合わせた働き方が可能になりました。
2. デンマーク:「フレキシキュリティ」モデル
デンマークは、労働市場の柔軟性と社会保障の充実を両立させた「フレキシキュリティ」モデルで知られています。
柔軟な雇用・解雇制度
デンマークでは、企業が比較的容易に従業員を解雇できる一方で、失業した場合の社会保障が充実しています。これにより、労働者は安心してキャリアチェンジに挑戦できます。
充実した職業訓練制度
失業者向けの職業訓練が充実しており、新しいスキルを身につけて再就職することが容易です。これが、労働市場の流動性を高めています。
育児支援の充実
公的な保育サービスが充実しており、3歳未満児の約65%が保育施設を利用しています。これにより、子育て世代の労働参加率が高くなっています。
3. フランス:法制度による労働時間管理
フランスは、法律によって労働時間を厳格に管理している国として知られています。
35時間労働制
2000年に導入された35時間労働制は、法定労働時間を週35時間に設定しました。これにより、残業時間の削減と雇用の創出が図られました。
「つながらない権利」の法制化
2017年、フランスでは「つながらない権利(Le droit à la déconnexion)」が法制化されました。これにより、従業員は勤務時間外にメールやメッセージに応答する義務から解放されました。
長期有給休暇の保障
フランスでは、年間5週間の有給休暇が法律で保障されています。多くのフランス人が夏季に2〜3週間の長期休暇を取得する習慣があります。
4. ドイツ:労働時間規制と「残業禁止」の取り組み
ドイツも、法律によって労働時間を厳格に管理している国の一つです。
労働時間法による規制
ドイツの労働時間法では、1日の労働時間は原則8時間以内、例外的に最長10時間までと定められています。また、勤務終了後11時間以上の休息時間を設けることが義務付けられています。
一部企業での「残業禁止」の取り組み
フォルクスワーゲンやダイムラーなどの大手企業では、勤務時間外のメール送信を制限するシステムを導入しています。これは、事実上の「残業禁止」として機能しています。
「クルツァルバイト(短時間労働)」制度
経済危機時に企業が従業員の雇用を維持しやすくするための制度です。労働時間を短縮した従業員の賃金減少分を政府が補填することで、大量解雇を防ぎます。
日本が学べること
これらの国々の取り組みから、日本が学べることは多くあります。
多様な働き方の容認 オランダのようなパートタイム労働の普及や、柔軟な労働時間の設定は、日本でも検討の余地があります。
社会保障と労働市場の柔軟性の両立 デンマークの「フレキシキュリティ」モデルは、日本の終身雇用制度に代わる新しい雇用システムのヒントになるかもしれません。
法制度による労働時間管理の徹底 フランスやドイツのような、法律による厳格な労働時間管理は、日本の長時間労働是正に効果があるかもしれません。
「つながらない権利」の尊重 テクノロジーの発達により、常に仕事とつながっている状態が当たり前になりつつある日本でも、「つながらない権利」の概念は重要です。
長期休暇の取得促進 フランスのような長期休暇の取得は、労働者のリフレッシュと生産性向上につながる可能性があります。
結論:日本型ワーク・ライフバランスの構築に向けて
これらの先進事例は非常に参考になりますが、そのまま日本に適用できるわけではありません。日本独自の文化や社会システムを考慮しつつ、これらの事例から学び、日本型のワーク・ライフバランスを構築していく必要があります。
例えば、以下のような取り組みが考えられるでしょう:
「プレミアムフライデー」を発展させた、週4日勤務制の試験的導入
育児・介護休業法のさらなる拡充と、男性の育休取得促進
AI技術を活用した業務効率化と、それによって生まれた時間の有効活用
「つながらない時間」を設定する企業の取り組みへの税制優遇
重要なのは、これらの取り組みを単なる「制度」として導入するだけでなく、働く人々の意識改革と併せて進めていくことです。「働き方改革」は、法律や企業の制度だけでなく、私たち一人一人の意識と行動の変革が伴って初めて実現するものだからです。
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