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短編小説 「ちょいとそこの涙腺さん」


ぽとっ、一粒の水滴がフローリング落ちた。

「へい、へい、おい!」

「だれ?」とまぶたの上の涙腺が言った。

「俺じゃ俺じゃ」

ぽとっ、また一粒の水滴がフローリング落ちた。フローリングには小さな水たまりができはじめた。

「ぐすっ、だからだれ?」と涙腺は訪ねた。

「だから俺じゃ、フローリングじゃ」とフローリングは目をギョロギョロさせた。

「まあ、そこでなにしてるの?」と涙腺は細長いまつ毛で顔の水滴を拭き取った。

「こっちが聞きたいわ!水滴がポタポタ落ちてきて冷たいんじゃ!いま冬やぞ」とフローリングは言い、セラミックヒーターに向かって腕を伸ばしてパチパチと指を鳴らした。「起きんかい!床を温めろ」とヒータに向かって言った。

「ごめんなさい……」とまた一粒の水滴がフローリングの目に向かって落ちた。

「なに謝っとんじゃ!なんか悪いことしたんか?」とフローリングは言い、ヒーターに向かって再度指を鳴らした。「起きんかい!」

「わたし水滴を落としてばかりだからフローリングさんが冷えてしまったわ」と涙腺さんゆっくりと頭を下げた。

「もとから冷えとるわ!あんたのせいじゃないわ!冬は冷たいんや!」とフローリング言い、再再度指を鳴らした。「起きんかい!」

「起きれるかぁ!!」とセラミックヒーターは叫んだ。「スイッチ入れてもらんと温めることできんのじゃけ!!正気かわれ!」

ピッ!

セラミックヒーターの電源が入った。

「ついたやないか!」とフローリングはヒーターにゲンコツをくらわした。

「主がいれたんじゃけ!!」とセラミックヒーターは熱い風を送った。

「ごめんなさい!!」と涙腺はまたまた今度は大きな一粒の水滴を落とした。

「だからなに謝っとんじゃ!水滴ぐらい流れる時は流れるやろ!謝んな!!」とフローリングは涙腺に向かってゲンコツを伸ばした。

ゴツっ!

「うわぁぁぁぁ!!!」と涙腺は水滴を流しながら叫んだ。

「うわ、うっわ、殴ったじゃけ。酷い暴力とパワハラじゃけ。フローリングのくせに偉そうじゃけ。主の足の臭いでも嗅いでろじゃけ」とセラミックヒーターはフローリングを見下ろした。

「こやつが謝ってばかりだからやろが!!水滴ばかり落としてその理由も喋らんのじゃ!!しばいて当然だろが!!」とフローリングは腕を組んだ。

「ゴォメンなさぁい!なんだか水滴が出てきちゃうの。とまらないのぉぉ」と涙腺はさらにさらに大粒な水滴を落とした。「わたしっていつもこうなのぉぉ」

「主人にメシ食えと言わんかボケ!!主人の一部やらが!!そいう時は腹を膨らませるんじゃボケ!!体も暖めろ!!ユニクロの極暖ヒートテックとウルトラライトダウンを着ろぉぉぉ!!!」とフローリングはメリメリっと身を起こして叫んだ。「そして、いくらでも水滴落とせぇぇぇ!!!!そして最後は『テヘペロ』って言えぇぇぇぇ!!!!!」

「うわぁぁぁぁ!!!」涙腺の眼下には大きな大きな水たまりができていた。

「テヘペロがすべてを解決するじゃあぁぁぁぁ!!!!ボケェ!!」




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テヘペロ。

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