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短編小説 「目覚ましよりも早く起きる朝」


午前7時00分

アパートのワンルームの部屋にスマホの目覚ましが鳴り響いた。

5秒も経たないうちに目覚ましを止めた。

私、カナ27歳会社員の朝は目覚ましより少し早い。目覚ましを使い始めた中学1年から目覚ましより後に起きたことはない。

どうしても、目覚ましよりも少し早く起きてしまう。どんなに疲れていても、どんなに遅く寝ても、午前6時58分に目が覚めてしまう。

目覚ましの時間を変えても、大体目覚ましの2分前には目が覚めていて、目覚ましを素早く止めることに神経を使っている。


午前7時03分

毛布を蹴飛ばして、ふぅ〜と少しため息を吐いた。すぐに、サッと体を起こしてベッドから洗面所へ移った。

洗面所の鏡に、まるで静電気でも溜めてるかのようなボサボサ髪が映っている。毎日、ボサボサの髪を梳かしながら、ひたすらどうやったら、目覚ましで起きられるか考えて、思いついたことを試していく。

だけど、効果はない。


午前7時08分

身だしなみを整えたら、今度は朝食を作る。

この時も考えてる。どうやったら目覚ましで起きられるかを。そして、よく包丁で指を切ってしまう。

だから大概、手の指のどこかに絆創膏を貼っている。職場ではいつも同僚や上司に絆創膏を貼っていない日があってもいいと言われてしまう。

私もそう思う。


午前7時28分

朝食を食べ終えたら、出社の時間まで少し休憩。

出社の時間は午前8時00分。それまで休憩だけど、目覚ましのことで頭はいっぱい。

同僚の話だと目覚ましよりも先に起きちゃうのは、部屋が明るくなってしまうからだと言っていた。

だけど、部屋のカーテンは遮光カーテンを2枚使っているから、昼間でも暗くなるほどの物。

だけど、それも効果はない。


午前7時48分

必死に考えても思いつかない。

目覚ましの前に起きてしまうのは病気なのかなと、疑ってしまうほど不思議でしょうがない。

どしたらいいの?


午前8時20分

同僚のみんなと上司に頭を下げて謝った。

目覚ましよりも先に起きるけど、出社時間より先に会社に着いたことはない。

どうしたら、出社時間より先に会社に着くのだろう?






時間を割いてくれて、ありがとうございました。