見出し画像

【詩】ワーズワースの丘

八月の太陽がまだお人好しだった頃の

風の口笛は気難しい印象派画家の手先を纏う

可愛く包まる雲と緑 すると心安き彼の唇

同じ日、大きく開いた枠の中を覗く

窓際の華奢なイスが乾いた床をくすぐって
互いに小さな声で戯れる、楽しそう

括られた髪 小川の煌めき 流れる首筋を見る

紙とインクがあれば
他に何も要らない

出来事淡々と踊らせて
伝える彼女と受け取る彼女

その間に景色
挟むことができたらといつかを夢見る
それはそれは絹を巡る愛らしい

必要のないものばかりが溢れる今だけど
必要のあるものばかりで生きた人々の日常

親指で押さえるは来し方
便箋向かう先は知らない
言葉だけで見るそこは、光で満ち溢れている

娯楽が娯楽だった日の、
シアターに集まる労働者たち
豊かな笑い声の中 私は息を天に向かわせたい

そしてすべての発見と発明家たちに
純粋と皮肉の狭間で感謝したい

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集