Webセミナーまとめ #1 元Ring事務局長と考える、リモート環境での新規事業創出の進め方
こんにちは!ストックマークでマーケティングマネージャーをしている柴田です。
先日6/10(水)に開催したWebセミナーのポイントと、セミナー内で回答しきれなかった質問の回答をまとめました。
セミナーに参加いただいた方には振り返りを兼ねて、またご参加いただけなかった方にはどんな内容だったのか知っていただき、新規事業開発の一助にしていただければなと思っています。
リクルートの新規事業開発制度 Ring その全貌
今回のセミナーでは、リクルートでRing事務局長を担っていた岩本 亜弓さん(実は弊社のCCOも務めています)に、ストックマークでAnewsのプロダクトオーナーを担っている髙木から、根掘り葉掘り質問し、なぜリクルートでは次々と新規事業を生み出せるのか、そしてコロナウイルス禍のいま、どんなチャンスがあり、どう対応していくのが良いかについて聞き出しました。
制度概要
Ringとは、リクルートの全従業員を対象にした新規事業提案制度のことで、内定者でも参加できるほどの平等感と審査に通過した担当者をヒーローに仕立て上げる特別感(アイデアが通過すると人事異動!)を大切にしているそうです。
そしてこのコンテストの最大の特長は、毎年約1,000件!もの多種多様なアイデアの応募があり、最終審査をパスするのは約5件と狭き門。
ただし最終審査を通過すると、既存ビジネスと、ヒト、モノ、カネを完全に分離し、その事業をスケールさせることに注力でき、かつ社内の支援も受けられる。もちろんトップのお墨付き!
だからリクルートからは新しい事業が次々と生まれているんだなと納得してしまいますね。
審査について
1,000件ものアイデアをどうやって審査しているんだろうって気になりますよね。既存事業とのしがらみとかないのかなとかも。
審査基準はこの4つ。
・提供価値
・市場性
・事業性
・優位性
応募されたアイデアはフィルタリングなどせず、全件目を通すとのこと。
そして1つのアイデアに対して、3~5名で審査し、必ずフィードバックを行うことで偏りをなくすようにしているそうです。
面白いなと思ったのは、『新規事業は誰も正解がわからない、今の事業とのコンフリクトがあったとしても、こういうアイデアならできるのではという判断のできる審査員を選んでいる』とのこと。懐の深さを感じますね。
応募される新規事業のアイデア
そもそもRingに応募されるアイデアって、全くの新規なアイデアばかりなのでしょうか。
実は7割が既存事業の改善案なんだとか。
ただ特長として、自分の関わる事業というよりは、関わっていない隣の事業(ナナメの提案 と呼んでいるそうです)への改善案が大半を占めるそうです。
Ringという場を利用して、誰でも既存事業の改善案を出すことができる、そんな心理的安全性も担保しているからこそ年間1,000件にものぼる応募につながっているんですね。
アイデア出しのためのサポート体制
次に事務局では新規事業のアイデア出しのためにどのようなサポートを行なっているのでしょうか。
そもそもリクルートには、ビジネスを創る3つのプロセス(見立てる、仕立てる、動かす)があるそうです。
また、リクルートでは、世の中の「不」に着目し、その「不」を解決することで新たな価値を生み出し、ビジネスにつなげていくそうです。
事務局では、エントリーの締め切りが近くなるほどよりアイデアが具体的になるように、この3つのプロセスを意識したイベントを開催していくとのこと。
イベントに参加しているうちに、「不」を見立て、価値を見出し、儲けを探す(仕立てる)仮説検証を何度も繰り返すことでより筋の良いアイデアにブラッシュアップされていく。だからこそみんながイベントに参加するようになるし、自然とそのアイデアが良いものに研ぎ澄まされていくんですね。
ここまで仕組み化されていることに驚きを隠せません!
さらにさらに、事務局では偶然の掛け合わせを起こすために、テーマだけを決めて、人を集め、自分の考えのアウトプットのみ行い発散させる場を設けたり、最近転職したひと、入社2、3年目、子育てしているひと、など共通する課題を持っていそうなグループでのイベントを企画したりと様々な施策を実施しているそうです。
その数なんと年間 70~100 件!
新規事業開発に関するそれだけの数のイベントを企画するだけでも事業として成り立つレベルですね。
実際Ringの仕組みを事業化されている方もいるそうです。
withコロナ環境下での新規事業創出のヒント
緊急事態宣言は解除され、日常に戻りつつはあるものの、コロナ以前に全てが戻ることはないこの状況下では、どう対応していくのが良いのでしょうか
岩本さんは『事務局が実施することは本質的には変わらない』とおっしゃっていました。逆に自分に関係する「不」を見つけやすい環境で、新しいビジネスのタネはそこかしこにあると。
確かにそれは感じますよね。
急に在宅勤務をせざるを得ない状況に追いやられ、しかもただリモートで仕事だけするのではなく、家族も同じ時間帯に家にいる。
特に小さなお子さんがいらっしゃる方はまともに仕事することもできなかったのではないでしょうか。
一人暮らしの方も最初は思ったより捗ったかもしれませんが、次第にオフィスを行われていた何気ない雑談もなくコミュニケーションが極端に減ってしまい、人恋しくなったり。。。
ハンコを押すために感染のリスクをとって出社するマネジメント層。
などなどあげるとキリがありませんね。
このような「不」の中で自社のビジネスや技術と相性の良いものを考える、もしくは全く関係ないけれど、会社のリソースをうまく活用すれば一気に市場を獲れる!というアイデアもあるかもしれませんね。
セミナーの中でも、飲み会やオフィスでのちょっとした雑談から生まれるアイデアがビジネスにつながることが多いと言われていました。皆さんもぜひ難しく考えすぎずに話してみてはいかがでしょうか。
そこでのポイントは、自分の会社でアウトプットしやすい環境を作ることだそうです。
同僚同士で、同じ言葉、同じ意識で話せるポイントが必ずあるはず。
それはその会社が大切にしていることにもつながり、自分たちの企業の良いところに目を向けることでよりポジティブにアイデアを出すことができるそうです。
Q&Aのまとめ
では最後に、これまで書いてきたポイント以外に上がった質問にまとめてお答えして終わりにしたいと思います。
Ringの応募に関する質問
Q. 応募する際に人数の規定はありますか。また社外のメンバーが入っても良いのでしょうか。
A. 1名でも複数名でも可能です。またリーダーが社員であれば、社外のメンバーが入っていても問題ありません。
Q. 課題感が同じだった場合はチームを統合する等、事務局でアレンジするのでしょうか?
A. しません。課題感が同じでも、原体験、想いの強さ、アプローチの仕方、アウトプットの違いがあるため、そういった面を審査でみています。ただし、ディスカッションやお互いに持っている情報をシェアするために紹介するなどは積極的に事務局が介入して行いますし、その中で自然にチームが統合することはNGとしていません。
Q. アイデアを考えるうえで過去ボツになったアイデアを参照することはできますか。
A. できます。ただし、過去のアイデアについては、データが統一されていないため、それを確認するためのイベントを開催する工夫などをしています。Ringは40年の歴史の中で様々な工夫によって形を変えており、整備が行き届いていない部分もあるため、過去分も含めて従業員が自由に閲覧可能な状態を構築したいと考えています。
既存の業務との兼ね合い、時間管理など
Q. Ringに参加する際の「時間管理」はどのような仕組みになっているのでしょうか?残業扱い?自由時間?
A. エントリー締め切りまでの一切の活動は業務外での取り組みとなるため、残業扱いではありません。
Q. 審査に通過し、人事異動となった際に、既存事業部から反対を受けた場合はどうするのでしょうか?
A. 経営陣やマネジメント陣もRingを推進し、その活動を応援しているため、反対とはならず、むしろリクルートの未来のための投資と覚悟を決めています。イベントなどからも沢山の学びがあるので、Ringのイベントへの参加も直属の上長や先輩同僚と一緒に参加をする人も多いです。
通過後のプロセス、支援体制など
Q. 審査に通過した事業には予算はどのように割り振られるのでしょうか。
A. あらかじめ決められた予算枠が設定されています。起案者は、その範囲内でどのように予算を使うのかを考えるところから責任を負い、プロトタイプの作成に使うのか、リサーチに費やすのかなど予算マネジメントを学びつつ実践を積んでいきます。
Q. 専門組織からの支援とは具体的にどのようなものでしょうか。
A. 例えば、上記の予算マネジメント等も含め新規事業は最初はわからないことだらけですので、事業開発経験者を社内アドバイザ的に設置をしてそれぞれのプロダクトに伴走者を付けています。他にもプロダクト開発を行うためのエンジニアのリソースやデザイナーのサポート、業界に詳しい社内外メンターなどのアサインを行っています。
Q. 撤退基準はありますか。
A. あります。ステージゲート方式を採用しており、半年に一回必ずプロジェクトごとに決められたKPIを満たしているかの審査があります。
いかがでしたでしょうか。
リクルートだからこその部分もあれば、自社に適用できるヒントも多かったのではないでしょうか。ぜひこのまとめを読んだことをきっかけに、3密には気をつけて、雑談してみてはいかがでしょうか。
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