【コラム】黒板絵はこうやって描いています
私が黒板絵を描くときの手順は、普通に絵を描くときとはちょっと違うと思います。この手順で描くと、不思議なことが起こるんです。描いているというより、呼び込んでくるという感じでしょうか。
描き始めたころは、どんな絵を描くか考えて紙に描き、だいたいのアタリをつけて大きな黒板に写していました。しばらくして、京田辺シュタイナー学校の先生に教わったのが、今回紹介する手順です。もしかしたら、数年間のうちに我流が混ざっているかもしれませんが、ご容赦を!
①空気を描きます
うすーく色を広げていきます。この写真は、ヤマタノオロチを倒す場面なので、薄気味悪くて生臭い感じを思い描きながら。
(一度描いた後に消したので、ちょっと残ってますが・・・)
②しばらく眺めます
この時間が結構大事です。眺めていると、ちょっとしたシミや塗りムラが、何かに見えてきます。子どもの頃、おじいちゃんの家の天井がお化けに見えて眠れなかった私にとっては、そんなに難しくない時間。
それでも、全然浮かんでこないときがあります。疲れているときとか、忙しいときとか。そんなときは諦めて、検索していろんな画像を観ることにしています。それからまた、ぼーっと黒板を眺めていると、さっき観た画像に似たものが浮かび上がってきます。数枚が組み合わさっていたり、細部がちょっと違ったり・・・。画像を見て写すのではなくて、いったん自分の中に入れたものを取り出すのです。
③見えたものを手掛かりに、主人公と同じ手順で描きます
杭を立てて、板を渡して、ヤマタノオロチを誘い込む罠を建てます。
描きながら、地面に杭を木づちで打ち込んでいくのを想像します。ちょっと出過ぎたものがあれば、トントン音を立てて打ち込んでいきます。
いきなり板を横に渡して描くようなことはしません。想像してみてください。いきなり板が空中に浮いていたら、変でしょ。
罠が出来たら、スサノオに待ち構えていてもらいます。
しゃがんで様子を伺う姿のつもりで描き始めても、シミやムラが立ち姿に見えるなら、それに逆らわないで色を乗せていきます。
④登場人物を描きます
いよいよヤマタノオロチの登場です。
杭を立てたときには首を6本しか描けないなと思っていても、よく観察してみるとシミが!なぞってみると、オロチの首でした。そうか、ここにもあったんだ・・・ちゃんと8本描けました。
裏話いろいろ
この手順で描いていると、思ってもみない絵ができることがあります。
●例えばこれ ↓
浮かびあがってきたとおりに描いたら、左手と左足が一緒に出ていました。この動きはもしかしてナンバ歩き?日本古来の歩き方だという、あの歩き方?スサノオって、ナンバ歩きだったのか・・・
自分の意図だけで描いていたら、こんな動きを描くことはなかったでしょう。
●もう一つ、これも不思議でした ↓
島を旅した主人公が、島から出発してまた新たな冒険に出たシーン。竜にのって空を飛んでいる姿を描いたのに、会場に着いて布をめくったら、主人公と竜が消えていました。
どうやらどこか遠くへ冒険に出てしまったようです。って、言葉で言うのは簡単だけど、昨日の苦労を返してくれ!と思わなくもなかったです・・・本当に・・・涙
●始めは不本意だったけど、最終的には覆されたのがこれ ↓
横を向いている羊を描こうと思っていたのに、人懐っこい感じでこちらを見ている羊になりました。塗りムラから脚をたどっていったらこの角度で、脚を3本しか描けず・・・
でも、そのおかげで、
「羊の脚って4本じゃないの?」
と誰かが言い出し、外形描写の話への道が拓けました。子どもの呟きから話が始まると、一方方向ではなく相互のやり取りができて、内容がさらに深まります。私はこういう瞬間が好きなので、結果オーライ!
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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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