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【子ども】動物学③明石のタコと一緒に学びますねん

前回(→動物学②)は動物園にいた動物について振り返ってみたので、今回は動物園にいなかった動物から。ダメ元で「明石のタコを用意して欲しい」と声に出してみると、二つ返事で受けてくださる保護者さん・・・。人も含めて、本当に恵まれた環境に感謝しつつ、タコの授業を考えることに。


イカ?タコ?

タコ_黒板画

(↑ 最初の黒板画。産卵の話をしてから、この絵にタマゴを書き足した)

先輩方に相談したときも、シュタイナーの著作でも、扱われているのはタコではなくイカ。でも、イカについて調べているうちに、神経感覚系の代表的な動物は、タコでもいけるんじゃないかなと思いついてしまった。

「いもたこなんきん」という言葉があるくらい、日本人はタコが好き。中でも大阪のたこ焼きは有名だし、私自身、お祭りの屋台でも淡路島に行くときにも、必ずたこ焼きを食べる。玉子焼き(明石焼き)を食べるだけのために明石へ行ったこともあるくらいだ。そう。私に限って言えば、イカよりもずっとタコの方が馴染みが深い。
対して、シュタイナーはドイツの人。西洋では、タコは気味の悪い生物として認識されていたようだし、船を沈める悪魔としての話も残っているらしい。そういうことなら、子どもたちに示す題材としてタコが候補に挙がらないことにも、うなずける。

シュタイナーが枕元に現れて、
「なんでイカちゃうねん!」
と叱られたとしても、私はタコについて熱弁できる。そう思って、タコを題材に選んだ。数日後、シュタイナー学校の作品を観に行ったら、タコの水彩画が展示されているのを見つけた。同じことを考える先生もいるんだなと思い、ちょっと嬉しくなった。


資料探し

図書館でタコについての本を探すと、あるわあるわ・・・。タコの生態の本から、捕まえ方、育て方まで。バラエティーに富んだタコの資料が集まった。中でも参考になったのは、この3冊。

タコについて、いろんな角度から教えてくれる本 ↓


タコ愛にあふれているのは、この本 ↓


美しいのはこの本 ↓


あと、参考になったのがタコの動画。動画を見ながら文字に起こしていくと、環境をしっかり伝えられて良かった。↓


この記事を書くにあたって検索してみると、新しく出版された本もたくさんあった。
ほら、やっぱり。日本人はタコが好きじゃないか。

余談ではあるが、イカについて調べるならこの本が良いとすすめられた。タコであってもイカであっても、同じ著者。↓


タコを手に入れろ

シンクの中で逃げ回るタコ_Moment_Moment

(↑ 我が家のシンク内で動き回るタコ)

いくら本を読んで動画を見たところで、本物を見たこともないのに子どもたちの前で生き生きと語ることができるだろうか。いや、できない!どうにかして、タコを手に入れたいところだ。

7月は、ちょうどタコが旬の時期。半夏生にタコを食べると良い、という話もあるくらいだ。しかし、下調べは5~6月。タコの季節というには少し早い気もする。スーパーにならぶのは、まだモーリタニア産ばかり。それに、茹でられたタコでは、「タコを見たことがある」とは言えない。そういえば、近くに産直の魚屋さんがあったような・・・と、ふと思い出して行ってみると、明石産のタコの足が売られていた。
それならば、丸ごと手に入らないかしら?と、事情を話してお願いしてみる。自ら船に乗るという店主によれば、まだ大きいタコは入ってこないが、小さなタコなら手に入るという。本来なら、新鮮さを失わないよう活〆にして持ち帰るが、生きたまま譲ってもらう約束を取り付けた。

魚屋さんは、子どもたちのために!と言って、発砲スチロールの箱とエアーポンプを用意してくれていた。「まだ下調べなんです」なんて口が割けても言えない・・・。子どもたちの分までしっかり観察することを心に誓った。

そうして、家でタコをしばらく観察した後、教わった通りに〆たつもりだけど、全然ダメ。活きが良すぎて逃げられてばかり。なんだかかわいくなってきてしまい、一息でしめられなくてごめんねと涙して、お礼を言って、最後には美味しくいただいた。

(我が家のシンクで撮影したタコ。怒って、体の色がチカチカしている。この動画を撮り終えた後、さあ〆るぞ!と思ったところで墨を吐かれた。↓)

後日お礼をしに行ったときに子どもたちの様子を話すと、魚屋さんはえらく感激してくださって、
「またいつでも言ってよ!」
とおっしゃっていたけれど、ここ数年は見かけない。神戸シュタイナーハウスに関してはよく不思議なことが起こるので、あの素敵な魚屋さんとの出会いも用意されていたのかと思いたくなってしまう。


タコを飼いたい

タコ_クレヨン画(2)

(↑ 子どもたちの描いたタコ。「賢いタコにしたい」とメガネをかけさせ、携帯電話を持たせている子も。)

さて、授業本番は、タコ嫌いの子がお母さんと一緒に明石の市場で買ってきてくれたタコを使った。
「電車の中で逃げ出すと困るので、その場で〆てもらった」
と聞いていたのに、授業中もまだ動き回るタコ。さすが、本場の旬のタコ。しかも、ケースの色に擬態して真っ白なタコ。
予想以上に盛り上がり、
「気持ち悪い」
「やだー触りたくないー」
の声は次第に消えていった。床の色に合わせて茶色くなったタコを平気でつかめるし、吸盤を指に吸い付かせてみては楽しそうだ。

タコを見ずに、頭に思い浮かべながら描きたかったので、初回は環境を描くだけにとどめ、次の月にタコの話を思い出してから描いた。黒板絵のときと同じく、描かれた環境の中からタコの足を探して浮かび上がらせていく。(描き方はこちら→黒板絵はこうやって描いています

タコ_クレヨン画

(↑ 子どもたちの描いた岩場と海。来月、ここにタコがやってくるはず!ということで、環境だけ描いた)

子育ての話や触手の話、毒の話、どの話にも子どもたちは興味津々。ただ、今振り返ってみると、本の影響もあって、つい子育ての話に熱が入ってしまったように思う。神経感覚系の動物としてタコを取り上げたはずなのに、タコの愛情深さを強調すると、ちょっとブレてしまう。今改めて話すとすれば、瓶を開けられるとか、海底に町を作っているタコがいるとか、頭脳明晰な感じを強調して語るだろう。

それでも、タコ嫌いだった子は「飼いたい」と言い出し、手仕事ではウツボ(タコの天敵)が作られた。タコへの愛情は充分に伝わったようなので、この、タコの学びは大成功だったと自画自賛したい。


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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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