【大人】電車愛って伝染るんですね|22年3月2回目|鉄道設計士さん
でんしゃはかせさんが、中学生や素人にもわかりやすく電車の設計のことをお話くださったその後は、大人の時間。素朴すぎる疑問からそんなこと答えてもらっていいんですか?というようなことまで、意外と大人も電車好き!!
デザインが気になる!
まずは、デザインの話から。
Q 電車ってどのくらいまで自由にデザインできるんですか?
A 通勤電車は車両メーカーに任せてもらえますが、新幹線のような看板列車の場合は専門のデザイナーがいる事が多いです。
→どんなにデザインが恰好良くても、配管配線の兼ね合いやトイレ後の下水処理の場所など、技術的・運用的な問題がクリアできなければ走れない。車両メーカーはいくつものチームに分かれて、現実との折り合いの中でなんとかステキなデザインの電車を走らせる努力をしているそうです。
Q ラッピング電車ってどうやって絵を描いてるの?
A ラッピングは樹脂の接着フィルムのついた大きなシールをいくつも重ね貼りして作っています。
→無邪気に「全面に絵を描いてる」と思っていた自分がハズカシイ…(^^;)。そりゃそうですよね。正解は「シールを貼る」でした。
Q いろんな電車がある中で、一番好きな電車は?
A 一番は難しいけど、最近設計させてもらった仕事の中で自慢できるのは、東北新幹線の「はやぶさ」かな。
電車のエコも進化してるんですか?
続いて設計や技術的な話に。
Q 新幹線の設計期間はどのくらい?
A 新幹線の新型車両の場合、通常の設計期間1年の前に2~3年基礎研究機関があります。JRと共同で「ファステック」という試作車両を作って、それでいろんなテストをしてから本番設計、制作、という流れです。実際今も、はやぶさの最高速度を今より40km早く走れる車両を作ろうと試行錯誤しています。
Q 電車にもエコ的な進化はありますか?
A 加速時は電気とモーターを使い、ブレーキは逆回しして自分のバッテリーに貯めるなど、車みたいなハイブリッド化も進んでいます。車と違うのは、架線を通して近くを走る電車がその電気を使えるようにできること。水素燃料電池とバッテリーのハイブリッドとかもありますよ。
→電車自体がエコなイメージですが、電車なのに電気じゃなくて水素燃料? 「汽車」から「電車」になったように、今後「電車」から新しいエネルギーに変わっていくかもしれない。ちなみに、夏の弱冷車なども、車両ごとに温度設定をしておけば、込み具合などに関わらず自動的にその温度をキープしてくれるそうです。
電車って1本いくらするの?
そして、でんしゃはかせさんのお話を聞いているうち、大人たちもだんだん子どもに戻っていきます。
Q 電車って、1本いくらくらいするんですか?
A 車両メーカーだけじゃなくて電気メーカーなどいろんな会社が関わってるからはっきりはわかりませんが、ざっくり言うと、電車1両1億円、新幹線1両3~4億くらいでしょうか。
→うわっ、そんな大根みたいな聞き方(^^;)。でも真摯に何でもお答えくださるんです。でんしゃはかせさんだから。「ケタの感覚で言うとそんな感じです」ってニコニコと。自身も電車好きだという質問者さんはなおも「新幹線が16両編成として、1本50億くらいか~」なんて。
Q 「これは乗っておいた方がいいよ」っていう電車は?
A やっぱり新幹線。あと趣味的に言うと、廃止されそうなローカル線は今しか乗れないし、高松にある琴電とか、第3セクターの北条鉄道とかも頑張ってるし。中小私鉄とかJRローカル線とか、旅情を味わっていただけたらいいな~とか…。
→「オススメの電車」が溢れ出して止まりません。ご自身の乗りたい気持ちがムンムン伝わってきます。実家近くで見た「乗って残そう〇〇鉄道」という色あせたローカル線のポスターを思い出しました。久しぶりに乗ってみようかな。
仕事への誇りと愛が伝染る
他に、仕事の醍醐味や失敗なんかも聞いているうちに、だんだん私たちまで日本の鉄道に誇りや愛を感じてきました。
Q 乗車位置を示すホームの△や〇。ドアがその前にピシッと止まるのは自動制御?
A ポートライナーなんかはプログラムされてますが、それ以外はね、完全に運転手さんの技術、ウデです。すごいですよね! 時には通り過ぎちゃってバックするようなこともあるんですよ。ちなみに電車がバックするのは、後ろが見えないから大変で、車掌が後ろを確認しながら運転手がレバーを操作する、というような連携を取って安全を確保します。
Q 古くなった電車はどうなりますか?
A 国内で年間、数百両単位の電車を作る能力があるので、その分だけ古くなるものも出てきます。廃車になれば鉄くずの値段にしかならないんですよ。
ああ、はかせの電車愛が移ってしまう。電車の最後を想像すると心が痛む。でも朗報も。古い電車はスクラップになるだけじゃなくて海外に譲渡されることもあるのだとか。しかも「譲渡した後には、JRがメンテや指導に行ってます」。ホッ、良かった。ちゃんと現地でも幸せに役立っている。
気付けば子どもに戻っており
聞きたいことがいくらでも溢れて来るものの、時間が来てしまいました。
でんしゃはかせさんを子どもクラスにお返ししてから、ふと我に返る。「あれ? 大人的には、好きなことを仕事にしておられるやりがいや大変さを深堀りするつもりだったのに?」。
今回のように、専門家の方から電車愛がにじみ出ていると、聞いているこちらまで、「子どもっぽいかな」と普段封印していた好奇心がむくむくと頭を持ち上げて来ます。他の方も「いろいろ聞きたいことが出てきちゃって。自分が中学生に戻ったような感覚でした」と語っておられました。
聞けば、でんしゃはかせさん、海外出張もあり、かなりのハードワークだとか。そんな中、ゲストに来てお話していただき、本当にありがとうございました。