【子ども】植物学②人間の成長にたとえて
念願の植物学なので、できるだけいろんな感覚を使ってその植物と出会いたい。観て、触れて、嗅いで、味わって・・・。料理が得意ではないはずの私が、毎月、何かしら食べる物を用意することになるとは。授業って、子どもの力って、すごいなと思う。大人を簡単に動かして変えてしまうんだから。
サクラ
ちょうどお花見にぴったりの時期に、植物学はスタートした。活動場所のすぐ横には川が流れていて、川沿いには桜の木が植えられている。建物の裏は公園になっていて、フィールドワークには持ってこいだ。導入は、切り取ってきたものではなく、生きたままの植物を丸ごと観たいけれど、公園に出ればサクラが真っ先に目に入るだろう。ならば、初回のテーマはサクラがいい。
サクラについて調べると、同時に和歌がいくつか見つかった。現代でもサクラは出会いと別れを連想させるんじゃないだろうか。
そういえば子どものころ、神社近くの河川敷にサクラがずらーっと並ぶ場所が好きだった。堤防の斜面に寝そべって、青空を背景に、サクラの花が全部こちらを向いているのを、ただ見る。この感覚に共感して欲しくて、当時好きだった人を誘ってお花見に行ってみたものの、うまくいかなかったな~なんてことも思い出す。
室内でサクラについて一通り話した後、外でサクラを観察する時間を設定すると、子どもたちは
「この木はお年寄り!」
「こっちは若者!」
とか言いながら、眺めたり幹を触ったりしたかと思うと、そのうちに違う遊びを始めていた。一通り遊んだ後は、金柑シロップにサクラの塩漬け(保護者の方からの贈り物!)を落としていただく。
お話を聞いて、実物を観察し、食べて、絵を描いて、和歌に触れて。いろいろやってみたけれど、子どもたちの一番の感想は、「おいしい」だった。なるほど。それなら、毎回何か食べる時間を設定してみよう。
毎年、同じ時期に同じ花を観るけれど、その感じ方は毎年違う。サクラという植物の概念が、どんどん更新されていくような感じだ。それを味わって欲しいと思う。
菌類(キノコ)
次の月は菌類。現在は菌類は植物とされていないが、「お母さんである別の生物から栄養をもらって育つ、人間の一生でいえば赤ちゃんのような存在」という位置づけで、菌類を取り上げた。菌類の中でも植物っぽいもの、ということで、キノコに焦点を絞った。
キノコにはあまり詳しくないので詳しい人に来てもらえないかなと思い、ダメ元で知人に連絡してみるが、やはり玉砕。ただ、キノコ見分けるアプリがあるらしい。写真検索という手もある。子どもたちの前でスマホを開いて一緒に調べるかどうか迷ったが、「はっきりとはわからないけど、〇〇に似てる」で通すことにして、文明の機器は封印した。
今となっては、それで良かったと思う。何という種類かわからないということは答えが無いも同然なので、そんなことより匂いはどうなんだろう?とか、触るとどうなるかな?とか、別の物差しが子どもたちの中からすぐに出てくる。名前に縛られないので、ウロコみたいとかレースみたいとか、それぞれが自由に例えることもできて、結果オーライ。
キノコ嫌いの子が一緒にしめじのソテーを食べたり、後日、椎茸を植え付けた原木を子どもから贈られたり、私もこれまで以上にキノコを好きになった。どのくらい好きかって、おいしい椎茸を買うためだけに、遠くの村へ出かけることもあるくらいだ。
ソウ類(海藻)
(↑ 木の左側に海を作り、海藻を描いた。海底に近いものは赤っぽく、水面に近いものは緑っぽい)
6月は山を散策したので、7月にソウ類に取り組んだ。お母さんから全ての栄養をもらっていたキノコよりは、もうちょっと成長した植物。自分で栄養を作れるようになったけれど、まだまだお母さんに抱っこされている赤ちゃんのような存在だ。
さすがに、海に観察しに行く日は設定していなかったので、海藻の観察はあきらめていた。海面からの深さによって色が違うとか、岩にくっついているものもあれば水面に漂っているものもあるとか、観察できたら面白かっただろうと思う。今振り返ってみると、神戸は海へのアクセスも良いので、実際に海へ行って観察する日を設定しても良かったのかもしれない。
しかし、学びに必要なものは何でも用意されているのが、神戸シュタイナーハウスの不思議なところ。
サクラの木を観察しようと外へ出てみると、水場に藻がたくさん発生していた。1カ月前はそんなことはなかったのに。
「あれ?これって、海藻?」
と子どもたち。
海じゃないから海藻とは言わないけれど、れっきとしたソウ類だ。急遽、予定を変更して観察タイム。木の枝でつついては、
「気持ちわるぅ~」
と言いながら、楽しそうだ。
サクラと一緒に、自分の内側に菌類とソウ類が同居している、私の大好きな地衣類も少し観察した。この、どっちつかずなところが私と共通していて、とても良い。シュタイナー学校でもなく公立学校でもない、神戸シュタイナーハウスという在り方。「良いとこ取りで本質に近づけない」という人もいるだろうけれど、「新しい道を進んでいる」とも言える。地衣類も、間を取ることで独自の進化を遂げてきたに違いない。
ちなみに、この日のおやつは茎わかめ。
「茎っていうけど、茎じゃない!」
と言いながらいただいた。
コケ植物
(↑ 木の左側に、コケのじゅうたんを描き入れた)
コケ。1人では立てないけれど、支えがあれば立つことができる赤ちゃんのような存在だ。妹や弟がいる子は、つかまり立ちやつたい歩きをしているところを実際に見ているので、想像しやすかった様子。
コケの観察をしたいけれど、活動場所の公園はとても日当たりの良いところだった。今回こそ観察は諦めないといけないかなと思っていたら、ちょっと視点を変えてみるだけで、建物の陰、木の幹、石の隙間・・・意外とそこらじゅうにコケが生えている。水辺に生えているコケの一部は水中に潜っており、葉の間から水泡が出てくるところが観察できた。暑い時期だったこともあり、陸上のコケたちは仮死状態。茶色っぽい色になって、乾いている。これがラッキーだった。
なぜかというと、水分を得たとたんに開き、緑色に変化するから。
子どもたちは霧吹きで水を吹きかけ、こっちはどう?そっちは?と、興味津々。かなり固くなるまでカラカラに乾いたコケはたっぷりの水に浸しておき、終了後に確認しに行くくらいの大ヒット。さすがにそこまで乾いたものは復活しなかったものの、その違いも見られてよかったと思う。
もしも時間がたっぷり取れるならコケ玉を作って、しばらく育ててみるのも楽しそうだ(というわけで、私自身はコケ玉とコケがたっぷり生えた盆栽を育てて、今でも観察中)。この日のおやつは何だったか忘れてしまった。今考えてみても、コケ植物で食べられるものが思い浮かばないので、知っている方がいれば教えて欲しいと思う。
次回は、シダ植物、裸子植物・・・と続きます!
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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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