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Gutsヒロのスイーツストーリー:最高に幸せだった今年を振り返る。
Gutsヒロです。Gutsヒロのスイーツ・ストーリーへようこそ!今年もあと二日となりました。わたしごとですが、今年作ったお菓子たちを振り返りたいと思います。このnoteを見ても食べることはできませんが美味しくて幸せな共有をできれば幸いです。それではスタート!
noteをはじめてあれこれ、2月に開業を控えている間はそわそわするように、じっとすることはできませんでした。
開業するなら当然、美味しい商品を用意してお客様にお届けしたい!と言う、必然的な思いがいっぱいありました。
でも、何を作ればいいかなぁ?生菓子?それとも焼き菓子?販売は直接か、それともネット販売か。
私は、コーヒーを飲みながら、これまでの料理人生を振り返りました。
あれは、10年以上前にお世話になったカフェの会長さん。会社を色々持っていながらも、カフェで私に料理の基本をたくさん教えてくれた恩人。
でも、会長さんは、とても現実的な方でした。
「お前が本気で料理をやるにはもう遅すぎる!」
そう言う、会長さんは私に必死に料理のあらゆることを教えていただきました。魚の捌き方、フランス料理のソースの作り方、包丁研ぎ、時間を取ってくれて河童橋で包丁をプレゼントまでしてくれました。
でも、私は会長さんの教えてくれる料理のレベルの先を目指したかったのです。良い環境を用意してくれて、技術を教えていただき、料理は本当に好きでしたが、
でも、やっぱりパティシエになりたい。
みんなは応援してくれました。でも、会長さんは私にめちゃくちゃ怒っていました。確かに、恩知らずの勝手な人間だったかもしれません。
それから、1度も口をきいてくれず、でも最終日、会長さんは私に最後の言葉を言いました。
「パティシエはなぁ、マドレーヌが美味しく焼けるかだぞ。」
マドレーヌは、お菓子作りの基本中の基本のお菓子。初級のお菓子です。でも、シンプルな材料がゆえ、誤魔化しのできない究極の焼き菓子です。
私は心に決めました。
2月になって開業したら、マドレーヌを焼こう。それも究極のマドレーヌを。
そして、完成したマドレーヌがこちらです。
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このマドレーヌは、左から「チョコレート」「アーモンド」「ゆず」のマドレーヌです。
チョコレートは、ココアと溶かしたチョコレートを練り込み、隠し味にオレンジピールと胡桃を入れています。トッピングには、チョコレートを塗り、チョコレート味のクラクラン(アーモンドダイスを調理したもの)をまぶしました。
アーモンドは、焦がしバターにオリジナルのアーモンドクリームを練り込み深い味わいにしました。トッピングにはお花のクッキーとクラクランを付けてキュートな感じに。
柚子は、生地に柚子のペーストを練り込み、中心部分には柚子のジャムを入れた、季節に合わせた爽やかなマドレーヌです。
私は、知り合いから会長さんの連絡先を聞いて、10年以上ぶりに会長さんとお話しすることができました。障害を持つ私が専門学校を主席で卒業し、パティシエとなり、自分のお店を持つことを心から祝っていただきました。
そして、念願だった会長さんにマドレーヌを送ることができました。
そして、メールが届き・・・。
「美味しいですよ。腕あげたね。これからも研究して美味しいものを作ってください。期待しています。 頑張れ!!」
メールを見て、不思議と涙が出ました。スタートしたばかりですが、嘘やお世辞を絶対に言わない、あの会長さんが私のお菓子を初めて褒めてくれました。
話は変わり、2月といえばバレンタイン。思い出あるお菓子が2つあります。
1つは、
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ミロを使った、スノーボールです。この作品は、noteの「今日の注目記事」になったお菓子です。
それから、マドレーヌに続き、次の商品を何にしようか。バレンタインだから、チョコレートをやろう!それも最高のボンボンショコラを!
専門学校を卒業して、私は大手の会社に就職しました。まだ2〜3ヶ月の新米の頃、事件が起きます。
それは、チーフの緊急メール。
「誰か、ボンボンショコラを作れる人はいませんか?大至急です。」
それは、チーフよりも上の上司による指示でした。「こんなボンボンショコラを作って」と言う写真を見ると、ピストレ(チョコレートの霧吹き)のかかった宝石のようなボンボンショコラでした。
私は、学校のイベントで偶然にもボンボンショコラの担当になり作った経験はありました。でも、写真のようなボンボンショコラは、機材もなければ道具もないので無理でした。
そして、1時間が経ち、2時間が経ち、誰もチーフに返事することはなく既読だけが増えました。先輩は十人ぐらいいましたが、誰も作れそうにないようでした。
私は、最悪の事態を予測し、近くのスーパーでチョコ板を大量に買いました。
そして、学生の頃に使った、カカオバターと着色料を用意して、テンパリングして、型に流して、すぐ型から外せるよう冷凍庫に入れて無理やり固めて。。。
作業の途中、チーフから、
「誰も返事しないなんてあり得ません。あなた達は本当に職員の意識があるのですか?」
と、メッセージが届き、ぽつりぽつりと、「私はできません」との返事が流れていきます。
私は、テンパリングが成功した甲斐もあって、ただ色のついたチョコレートを写真を撮って送りました。
「この程度のレベルならできそうですが、どうでしょうか?」
チーフから、すぐに返事が来ました。「明日に打ち合わせしましょう」と。
しかし、その打ち合わせは、上司とチーフと私の地獄の打ち合わせでした。求めるものは「こんなボンボンショコラを作って」と言う写真のレベルのもの。私の咄嗟に作ったものでは採用できないとのことでした。
しかし、私はあえて言いました。
「ピストレと言う技術の機器は最低でも10万円ぐらいします。いきなりそれを購入してしまう前に、まずはあるものでスタートしたらどうでしょうか。」
この話をして、ピストレという技術を上司とチーフは知らなかったようで、私ができそうな範囲でやることが決まりました。
そして、専門書を自腹で何冊も買って、会社でも家でも練習しました。(でも、家での試作は仕事とみなされず自腹で材料を買いました。)
出来上がったボンボンショコラを上司とチーフに食べてもらいました。
しかし・・・。
「もっと美味しくて特別な感じに作れないの?」
とダメ出しが。
私は、一流のショコラティエのボンボンショコラがどんな味わいで作っているのか、自腹でネット注文してチョコレートを食べまくりました。
そして、見えてきた答え。改めて作ったボンボンショコラがようやく採用されました。
このストーリーは、私が入社して半年も経たない頃の話ですが、完成したボンボンショコラは完成度の高い本当に美味しいものでした。レシピは1から自分で構築したものです。
話は戻り、2月のバレンタインで販売する、もう1つのお菓子がまさしくこのボンボンショコラでした。
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結局、私は会社で買うことのできないピストレの機械は自腹で買いました。なぜなら、一流のショコラティエのボンボンショコラを見てしまったら、食べていただくお客様にお粗末なものを提供することになってしまうことを知ってしまったからです。
私は、新米社員としても一人のパティシエとしての覚悟は持っていました。ただピストレの機械があれば作れるわけではなく、使い方の技術と知識は当然必要で使いこなすのにとても時間がかかりました。
でも、ボンボンショコラを完成することができて、自分の納得するものができて、それが何よりのことでした。
そして、その技術から生み出した、2月のショコラがこちらの4種類です。
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超有名シェフからヒントを頂いた作品です。
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食感が、とろりとしていて、更に2層の味わいの手間のかかった作品です。
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エスプレッソよりも濃いコーヒーを作ってチョコと合わせた作品です。
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ピスタチオペーストは高級だったため、手作りでピスタチオペーストを作りました。
私のモットーは、どんなに些細なことでも真剣にやって、誰もやりたくないことを率先して行い、いつも「チャンスはそこにある!」「天は見てる!」と言う思いで日々を過ごしています。
それが、5年後になって報われるわけですから、真摯に真面目に向き合うことの大切さを改めて感じることができました。
そして、嬉しいことに、このボンボンショコラの商品は、限定品にも関わらずたくさんの方々に購入していただきました。
さて、お店が開業して、冬が終わり春を迎える頃になりました。
春といえば「桜」ですよね。まだ咲く頃には早いですが、修行時代のヒントをもとに、桜のケーキを作りました。
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詳しいレシピは言えませんが、食べた方々には春を感じさせる初めて食べる味わいだったと、好評のお言葉をいただきました。
お客様の中には、このケーキがあまりに美味しくて何度も注文してくれたこともありました。
しかし、このラウンドのケーキを配送するなんて、私にとって未知の世界でした。今では、「冷凍ケーキの配送セット」が売っていますが、東京に住む兄に頼んで実験を何度もしました。だって、注文したケーキがぐちゃぐちゃだったら最悪ですものね。
その甲斐もあって、桜のケーキは多くの注文をいただいて成功しました。私は嬉しくてnoteの綴らせていただきました。
minneのネット販売は順調にいきました。ゼロから始まったスタートが、多くのお客様の手に渡り、嬉しい感想のメッセージを沢山いただくことができました。
様々なお菓子にチャレンジして、自信作を提供していきました。
しかし、夏になり、焼き菓子の需要が減って、配送もクール便となり料金が倍増に。
私は、夏の期間はminneでは売り時ではないなと思いました。だって、私の作るお菓子が高級街の洋菓子と同じぐらいの値段になってしまうのですから。
私のファンの方々には申し訳なかったのですが、私は路線変更の大きなチャレンジをすることを決意します。
それは、
店頭販売です!
私のお店は厨房の他に、客室もあるお店です。でも、資金が足りずケーキを並べるショーケースはまだありませんでした。でも、料理人として、パティシエとして、お客様と直でケーキをお渡しするという体験を味わってみたかったのです。
それは、調理師専門学校時代のクラスメイトのSさんが、20代にも関わらず独立してお店を持ち、多くのお客様と対面して幸せに料理を提供している姿が幸せそうに見えて、それが私は「いいなぁ。。」と、羨ましかったのです。
ショーケースのない洋菓子店なんて、どこにもありません。いわば致命的でしょう。でも、私は考えに考えて、ある作戦を思いつきました。
それは、ケーキを1個ずつ並べて展示品として販売する形式です。
でも、そんな売り方がお客様にどう見えてしまうだろうか。不安でした。でも、私の決めた「店頭販売」と言う列車が止まることはありませんでした。
チラシ作りと折り込みの契約、旗や看板の作成、お店を整えるあらゆることをやりました。
資金の都合もあって100%ではありませんが、お客様を迎える状態にすることができました。
チラシはお店中心の地域に5000枚配りましたが、集客率と言うものは存在せず、当日になるまでお客様がいらっしゃるかどうかは運次第でした。
そんな状態でも、厨房の冷蔵庫をフルに稼働して、作れるだけ作って数は確保しました。
だって、猛暑の中、私のお店に来ていただいて仮にお菓子がなかったとしたら、それは私にとって不本意であるからでした。
しかし、初の店頭販売の日、奇跡が起こりました。
オープンの11:00には、10組のお客様が並んでいて、閉店の頃には、100個以上あった生菓子が完売という結果になりました。
無名のお店で、経歴もない私のケーキを求めて、多くのお客様がいらっしゃったことは本当に驚きでした。
でも、これは初の販売だからだろう。と思いました。
しかし、その後の月1回の店頭販売には50組、100名ぐらいのお客様がご来店するという、奇跡の続きがありました。
お客様の中には、
「美味しかったからまた来ました。」
「お店の雰囲気が良かったからまた来ました。」
「さっき食べたお菓子、まだありますか?」
と、嬉しいお言葉をいただき感無量でした。それは偶然ではなく、私のお店「お菓子工房たびこ」を認めていただいた瞬間でもありました。
それでは、順番に店頭販売したケーキをご紹介したいと思います!
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マンゴークリームと、ココナッツクリーム。ココナッツのジェノワーズのトルテ。
間には、マリネしたマンゴーの果肉と、コンポートしたパイナップル。
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旬の小夏を贅沢に使い、自家製ヘーゼルナッツのペーストを使ったトルテ。
生地は、ヘーゼルナッツをたっぷり使った自信作。
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さて、次にご紹介するのは9月の店頭販売のケーキです。
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マリネしたプルーンを刻みクリームと合わせました。生地はたっぷりの胡桃が入っています。
間には、白ワインのみでコンポートした究極の美味しい桃が入っています。
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バナナのクリームと、マカダニアナッツの生地の美味しい組み合わせ。
間には、バナナタタンのゼリーを挟みました。
続いては10月の店頭販売で出した、トルテです!
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店頭販売するたびに、レシピを作り、試作して、母と味を見て、「これならいけるね!」と、繰り返して今日まで来ることができました。
でも、私がここまで来れたのは偶然だったかもしれませんし、必然だったのかもしれません。運命が導いてくれてここまで来れたような気がします。
何度も挫折して、でも何度も立ち上がり、精神疾患と難病も抱えながらも、立ち向かうことができたのは、私の力だけではなく、多くの方々の応援があったからでした。
それは、
過酷な環境や状態だったから、強く大きく成長できたこと。
障害があったから普通の人には見えない世界が見えたり。
暗闇の中にいたけども、だからこそ一縷の希望の光が強く輝けたこと。
私は、どん底に何度も落ちても諦めない気持ちを持って、自分を信じ続けて来ました。
その情熱や想いは、必ず不可能を可能にする力があることを信じたからこそでした。
「当たり前を積み重ねると特別になる」
巨匠・杉野英実さんのお言葉です。
私はこの言葉が大好きです。
私は、価値がないことでも、小さなことでも、コツコツ過ごしてまいりました。これは、些細なことでも常に「チャンスがそこにある」と思っていたからです。それが、3年後、5年後、10年後となって、ここまで成長できたことがあったから、信じ続けてきて本当に良かったと思います。
将来のことはどうなるかは誰もわかりません。
でも、人が持つ夢や希望は、信じ続けていれば必ず実現することができます。
お菓子作りをはじめてから、30年。初めて作ったお菓子作りはクリスマスケーキでした。まだ小学2年生で作れたのはぐちゃぐちゃの不細工なケーキだったけども、今ではお客様の依頼を受けてケーキが作れるまで成長することができました。
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私にとって、お菓子作りは人生そのものです。作ったお菓子で笑顔をもらうと本当に幸せでいっぱいです。
まだまだ未熟な部分もあるし、学ぶことは多いですが、今年は自分のために、自分のお客様のために尽くしてまいりました。それが実り、多くの出会いがあり、たくさんの嬉しい出来事がありました。
感謝の気持ちで来年も頑張っていきたいと思います。
来年の4月から、お菓子工房たびこは、本格的に始動します。最高のお菓子を世の中に発信できることを心から楽しみでわくわくしています。
今年は、多くの人に興味を持っていただき嬉しかったです。また、たくさんの応援をありがとうございました。
来年もぜひ、Gutsヒロのスイーツの美味しい世界の旅にお付き合いいただければ幸いです。
また次のnoteでお会いしましょう!良いお年を!
Gutsヒロ
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