
書籍『資本主義の次に来る世界』
ジェイソン・ヒッケル (著) 野中 香方子 (翻訳)
出版社 東洋経済新報社
発売日 2023/4/21
単行本 326ページ
内容紹介
「少ないほうが豊か」である!
「アニミズム対二元論」というかつてない視点で文明を読み解き、成長を必要としない次なる社会を描く希望の書!
ケイト・ラワース(『ドーナツ経済学が世界を救う』著者)、ダニー・ドーリング(『Slowdown 減速する素晴らしき世界』著者)ほか、世界の知識人が大絶賛!
デカルトの二元論は「人間」と「自然」を分離した。
そして資本主義により、自然や身体は「外部化」され、「ニーズ」や「欲求」が人為的に創出されるようになった。
資本主義の成長志向のシステムは、人間のニーズを満たすのではなく、「満たさないようにすること」が目的なのだ。
それでは、人類や地球に不幸と破滅をもたらさない、
「成長に依存しない次なるシステム」とは何か?
経済人類学者が描く、かつてない文明論と未来論。
本書が語るのは破滅ではない。語りたいのは希望だ。
どうすれば、支配と採取を軸とする経済から生物界との互恵に根差した経済へ移行できるかを語ろう。
目次
※目次を全て記載しているのは、今のところネット上で本記事のみかも
はじめに 人新世と資本主義
・大量絶滅の時代に生きる
・エコファクトの裏側
・永遠に続く経済成長という資本主義の幻想
・世界中で高まる資本主義への反感
・脱成長によってもたらされるもの
・アニミズムから二元論、そして再びアニミズムへ
・素晴らしい未来を垣間見る
第1部 多いほうが貧しい
●第1章 資本主義――その血塗られた創造の物語
・封建社会を覆した忘れられない革命
・上流階級によって叩き潰された平等主義の社会
・植民地化による「成長」
・人為的稀少性というパラドックス
・二元論による人間と自然の分断
・身体という「資源」
・経済の「外」に存在する「安い自然」
・自然を打ち負かし、征服せよ
●第2章 ジャガノート(圧倒的破壊力)の台頭
・資本の鉄則
・投資家は成長を追い求める
・資本は次の「解決策」を求める
・私的な成長要求から公的な執着へ
・成長という拘束衣
・むさぼり食われる世界
・植民地主義 2.0
・21世紀に「限界」をどう考えるか
●第3章 テクノロジーはわたしたちを救うか?
・パリ協定の危険な賭け
・BECCSが救世主とならない理由
(注:「BECCS」とは「Bioenergy with Carbon Capture and Storage(CO2回収貯留付きバイオマス発電)」の略)
・1.5℃をめぐる戦い
・グリーン成長は解決策となり得るか?
・つくり変えられる惑星
・グリーン成長という夢物語
・技術革新はエネルギーや資源の消費を減らさない
・リサイクルについては?
・グリーン成長というディストピア
・「成長し続けねばならない」という絶対的な思い込み
第2部 少ないほうが豊か
●第4章 良い人生に必要なものは何か
・成長は進歩をもたらすか?
・GDPは人を幸福に出来ない
・成長のない繁栄
・サウスのための公平さ
・イデオロギーからの脱却
・イノベーションは成長を必要とするか
・新しい進歩の指標が世界を正しい方向へと導くーただし、それだけでは十分ではない
●第5章 ポスト資本主義への道
・大量消費を止める5つの非常ブレーキ
ステップ1ー計画的に陳腐化を終わらせる
ステップ2ー広告を減らす
ステップ3ー所有権から使用権へ移行する
ステップ4ー食品廃棄を終わらせる
ステップ5ー生態系を破壊する産業を縮小する
・仕事はどうなる?
・不平等を減らす
・公共財を脱商品化し、コモンズを拡大する
・「豊かさ」が成長の解毒剤となる
・債務を帳消しにする
・新たな経済のための新たな資金
・ポスト資本主義のイメージ
・民主主義の力
●第6章 すべてはつながっている
・祖先の知恵
・アニミズムのエコロジカルな暮らし
・デカルトの敗北とスピノザの勝利
・第二の科学革命が明らかにする人間と他の生物との関係
・ポスト資本主義の倫理
・少ないほうが豊か
謝辞
原注
レビュー
何故「貧富の差」が無くならないのか。その理由が分かり易く、明確に纏められています。至言に溢れ、他の有益な書籍へとアクセスするための情報も満載。
「大衆」必読の良書であり、個人的に今、最もおすすめしたい一冊。
また本書の白眉は、解決への道筋がしっかりと提示されていること。
原因を知り、解決方法を学び、そして実行する一人となることは、全体の幸せへと繋がり、当然のように自身とその家族の幸せにも繋がります。
貧富の差が無くなるどころか更に広がり続けるのも、理不尽な過労死がや低賃金労働が無くならないのも、自然破壊が恐ろしいスピードで進んでいるのも、地球温暖化を止められないのも、沢山の子ども達が未来を悲観して自殺してしまうのも、根本の原因は「資本主義社会」にあるということを、今、多くの人が気づき始めています。
本書のような素晴らしい書籍の存在が、より多くの人々に認知されるよう、心より願っております。
※「大人になったらフルタイムで働くのが当たり前(しかも労働に見合わない低賃金で)」という洗脳から目を覚ましましょう
人生は本来もっと豊かなものです
※引用したい箇所は多岐にわたるため、割愛
その他
ちなみに先日記した、書籍『女性たちの声は、ヒットチャートの外に ~音楽と生きる女性30名の“今”と“姿勢”を探るインタビュー集』のレビューにぺタリンコした、春ねむりのインタビュー動画(こちら⇩)
(3:45秒辺り)にて、春ねむりが「資本主義〇ねって気持ちかもしれない」と話しているのは、本書に記されているような内容をきちんと把握しているからであると見て間違いありません。
「(中略) その悲しいこととか、そのしんどいこととかの原因が私だけににあるわけじゃなくて、例えば、社会の構造とかにあるんだなっていう風に勉強していくうちに思って、個々の事象として分け隔てられているのではなくて全部繋がって、そういう風に悪い循環が起こってるんだ(以下略)」とも話しておりますゆえ。
また、春ねむりの歌詞をいくつか聴けば「あぁ、この人は見えている人だ」ということもわかります。
しかしながら、上記した春ねむりの発言の意図を察することは「一般的にはなかなかに難しい側面もあるかもしれない」と思い、老婆心ながらこの度、書籍『資本主義の次に来る世界』のレビューを記そうと思った次第です。
映画でも絵画でも写真でも小説でも、なんでもそうだとは思うのですけれども、作品のバックボーンとなっている情報を持っているか否かによって、その作品の価値というものは全く違ってくるように思いますゆえ。
春ねむりの曲が、日本でももっと×2聴かれるようになりますように。