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偶発性と遊び心が誘発するワクワクするコンセプト

新たなアイデアを発想する際に偶発性を活用することは時々行われます。この記事では、2023年8月29日(火)、代官山 蔦屋書店のシェアラウンジにおいて行われた、『アート思考サロン in 代官山 第1回 久門剛史氏と語る「未来の不確実性」』で実施された、偶発性と遊び心を活用してワクワクするコンセプトを創出するワークショップを紹介します。


ビジネスパーソンとアーティストの対話の場

この「アート思考」サロンは、書籍『イノベーションを創出する「アート思考」の技術』の出版を記念して開催されました。アート思考は、現代アートのアーティストが作品を制作する際に発揮する思考プロセスと共通しています。しかしながら、多くのビジネスパーソンにとって、アーティストとの接点は限られています。このイベントでは、ビジネスパーソンがアーティストと直接対話する機会を提供し、「アート思考」を実践することを目指しました。

アーティスト久門剛史さんの思考プロセス

登壇したアーティストの久門剛史さんの作品には、かなり作品に近づいて目を凝らさないと、本来の姿が見えてこないようなものがあります。このような作品は、久門さんが興味をもっている「知覚」に焦点を当てています。


久門剛史さんのトーク

久門さんは、作品制作の際の思考について次のように語っています。

経験したことや本で読んだことなどを、『焼く前のパン』の状態にして、いっぱい頭の中にしまっている。作品を創るときは、その中からいくつかを取り出し合わせることで、新しいパンを焼くことができるのです。

不確実な未来を想像するワークショップ

久門剛史さんが作品構想の際に取り入れる「偶発性」をテーマに、ジョン・ケージの偶発的手法(チャンス・オペレーション)を題材として取り上げ、「不確実な未来」を参加者全員で考えるワークショップを行いました。
まず、「不確実な未来」という言葉から思い浮かべる名詞を全員で挙げました。続いて、自分の好きな形容詞を挙げます。

次に、画面上に挙げた名詞と形容詞をそれぞれ一つ以上選んで組み合わせ、未来に起こるであろうことを想像します。このとき、普通はつなげない言葉の組み合わせを考えるのが重要になります。新たな言葉の組み合わせによって、発想を飛躍させることができます。

ワークショップで挙げられた名詞と形容詞

ある方は、「もこもこな資本主義」ということを考えました。雲のようにもこもこなお金が増えたり、あるときは減ってしまったり、ほかの人のところに飛んで行ってしまったり、こんな社会になったら今とは価値観の変わる未来になりそうです。そして、その未来が実現する時期を設定します。

アイデアを作品に昇華

最後に、参加者は組み合わせた言葉から想像した未来の姿を作品にして表現しました。白い紙や色画用紙以外に、久門さんが、五線紙、方眼紙、宅配便用の厚紙、さらには履歴書まで用意してくれました。書く道具も、色鉛筆やクレヨンが並んでいて、これを見ているだけでも創造性が解放されそうです。

作品制作のための紙と色鉛筆

30分というわずかな時間でしたが、皆さん、あっと驚かされるような作品を創ってくださいました。

皆さんが制作した作品

偶発性と遊び心が誘発する斬新なコンセプト

「不確実な未来」をテーマに、参加者が自由に名詞と形容詞を組み合わせ、意外なコンビネーションを考える機会が提供されました。このプロセスを通じて、偶発性と遊び心が、分析的思考では導くことのできない、斬新でワクワクしたコンセプトを生み出すカギとなりました。

経営学者の井上達彦氏は、次のように語っています。

自由な発想に基づく新結合を促すためには、脳みそを萎縮させてはならない。真剣であってもいいが、どこかに「遊び心」も必要なのだ。なぜ遊び心が必要かというと、視野を広げる必要があるからだ。

井上達彦「イノベーションに不可欠な「意図的な偶然」」

今回のワークショップは、斬新なコンセプトを創出する手法の一例です。偶発性と遊び心はクリエイティブなアプローチの可能性を示しました。このようなワクワクするアプローチがもっと価値創造に活用されることで、不確実な未来がより豊かなものに変貌することでしょう。


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