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研究と創造 - 好奇心と探究心が拓く人生
2023年、私たちE&K Associatesは、アーティスト志村信裕氏に《Living as a scholar》という映像作品の制作を依頼しました。本プロジェクトの発端は、私の著書『イノベーション創出を実現する「アート思考」の技術』を読んだ東京工業大学(現・東京科学大学)の理事の先生が、「アーティストと研究者は似ているのではないか」とコメントをくださったことでした。
この言葉をきっかけに、アーティストの視点から研究者像を映像化するプロジェクトが始動。志村氏は、二人の研究者に取材し、ビジネスパーソンにとっても示唆に富む作品が誕生しました。
志村氏が、自身の作品制作についての記事を書いていますが、このプロジェクトから得た気づきを共有します。
研究者の内面に迫る
本プロジェクトに登場したのは、数学者・正井秀俊先生と生物学者・立花和則先生です。多くのドキュメンタリー作品は事前にシナリオを組み立て、計画的に撮影されます。しかし、志村氏は異なりました。彼はアーティストならではの好奇心と観察眼で、研究者たちの内面に迫り、今まで話したことのないエピソードまで引き出しました。
正井先生の数学との出会い
正井先生が数学に惹かれたきっかけは、「位相幾何学入門」という授業で「一文字も理解できなかったこと」でした。多くの人は理解できないものを避けがちですが、正井先生は「何も分からない世界があることが面白い」と感じ、数学の道を極めることを決意したのです。
未知の世界へ飛び込むことは、自分の概念を拡張し、世界を広げることに他なりません。しかし、多くの人は新たな世界の入り口に立ちながらも、「難しい」と思い込み前へ進めません。正井先生や志村氏の姿勢を見ていると、好奇心をもって未知の領域に飛び込むことがその後の人生を豊かにするのだと感じます。
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クラゲの睡眠を研究する立花先生
もう一人の研究者、立花和則先生は、幼少期から自然に対する興味を持ち続け、生物学者の道を歩みました。少年時代、石ころや木の実を集めることが好きだった立花先生は、現在も365日大学に通い、クラゲの飼育と研究に没頭しています。
科学は役に立つ側面もあるが、まずは自分の好奇心を満たすことが基本にある
この言葉には、研究の本質が凝縮されています。彼の研究への姿勢は、まさに探究心そのものです。
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研究者とアーティストの共通点
志村氏が二人の研究者との対話を通じて気づいたのは、彼らが「研究者になろう」としてこの道を選んだわけではないということでした。自分の興味や価値観に忠実に行動した結果、「研究者として生きる」人生になったのです。
これは、志村氏自身にも通じる点です。彼もまた「アーティストになりたい」と思ったのではなく、自分の価値観に合った生き方として作品制作を続けた結果、現在の立場を得ました。彼が本プロジェクトを通じて見出した研究者とアーティストの共通点は、「誰かに頼まれたわけでもなく、自ら探究し続ける」という姿勢でした。
偶然の出会いが人生を変える
私たちの人生もまた、計画通りに進むことよりも、偶然の出会いや気づきが重要な転機となります。好奇心を刺激する出来事に出会ったとき、それをどう捉えるかが、人生という作品の質を決めるのです。
ビジネスの世界でも同様に、「会社から与えられた仕事をこなすこと」に集中するのではなく、研究者やアーティストのように「自ら探究し続ける」姿勢を持つことで、新たなチャンスを見出すことができるのではないでしょうか。
岡本太郎の言葉を借りれば、
自分自身が思いこんでいる自分の価値というものを捨てさって、自分の真の姿をはっきりさせ、ますます自分自身になりきること、それがまた、おのれの限界をのり越えて、より高く、より大きく自分を生かし、前進させてゆくことなのです
この言葉が示すように、私たちもまた、自らの限界を超え、自分を生かし前進していくべきなのかもしれません。
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なお、《Living as a scholar》は、東京工業大学のYouTubeチャネルでご覧いただけます。